桜才学園での生活   作:猫林13世

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影が目立ち過ぎてる……


目立つ理由

 ムツミ主将が滝に打たれている姿は、実に絵になる。これを私たちだけが見るのはもったいないと思い、私は携帯で動画を撮ることにした。

 

「せっかくだしタカ兄たちに送ってあげよう」

 

「何で津田君に?」

 

「主将が頑張ってるってところを報告するんですよ」

 

 

 ついでに私もしっかりマネージャー業しているとアピールできればなんて考えてのことだ。

 

「(タカトシ君に見られる?)」

 

「あっ、ちょっと可愛いアピールしてるぞアイツ」

 

「手を組み替えましたね」

 

 

 いくら強いと言っても主将も恋する女の子。気になる異性に送る動画は少しでも可愛いと思ってもらいたいのだろう。

 

「それじゃあ撮りますよ~」

 

 

 主将が滝に打たれてる姿を動画に撮り、タカ兄に送信する。まぁタカ兄ならこの動画を見ても興奮することは無いだろうし。

 

「あっ」

 

 

 動画を撮り終えてトッキーの側に戻ろうとしたら、トッキーの首筋に蚊が近づいているのに気付き、私はトッキーに教えることにした。

 

「トッキー、首筋に蚊が!」

 

「?」

 

 

 滝の音が大きいので、上手く伝わっていない様子だ。私はもう一度大きな声で忠告したが、やっぱり聞こえていない。側まで移動して忠告したら、私も刺されそうだしな……

 

「あっそうだ」

 

 

 私はスケッチブックを手に取りトッキーに報告する方法を選んだ。

 

『トッキーの首筋に蚊がいるよ』

 

 

 私がその文字を見せると、トッキーが慌てて首筋に手をやった。だが手遅れだったらしく、トッキーは首筋を掻きむしっている。

 

「かゆみ止め、いる?」

 

「貸して!」

 

 

 私がかゆみ止めを見せると、凄い勢いでトッキーにひったくられた。そんなことをしている間に、主将が滝行を終了させていた。

 

「やっぱりムツミが一番長い時間打たれてたな」

 

「もう少しやってたかったけど、そろそろ日が暮れそうだったしね」

 

「意外と長い時間ここにいたな」

 

「ところで、トッキーはどうしたの?」

 

「虫に刺されちゃったんですよ」

 

 

 痒そうに首筋を気にしているトッキーに質問する主将に、私が代わりに答える。トッキーの意識はまだ首筋に向いていたから、これはフォローになっただろうな。

 

「てかコトミ、良くかゆみ止めなんて持ってたな」

 

「タカ兄が持たせてくれたんです。必要になるかもしれないからって」

 

「そっか。さすが津田君だな」

 

「影のマネージャーって言われてるだけあるよね」

 

「マネージャーは私ですってば!」

 

 

 ただでさえタカ兄にマネージャーとしての立場を奪われているって感じているのに、まさかこの場にいないのにタカ兄にその座を脅かされるとは……

 

「(我が兄ながら、その信頼度は半端ないからな……)」

 

 

 私がダメすぎるから、タカ兄の凄さが際立つのか、タカ兄が凄すぎるから私がダメに見えるのか……恐らく両方なんだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトちゃんが柔道部の合宿に同行しているということで、家にはタカ君と私の二人きり。コトちゃんがいないから私が来る必要はあんまりないのだが、少しでもタカ君のお手伝いがしたいという気持ちでやってきたのだ。

 

「タカ君、こっちは終わったよ」

 

「ありがとうございます、義姉さん。こっちも終わりましたので休憩にしましょう」

 

 

 コトちゃんがいないということで、余計な仕事が増えることは無い。そんな理由から今日は普段掃除できない場所を掃除することになったのだ。せっかくゆっくりできるのに、タカ君は真面目なんだから。

 

「コトミからメッセージ?」

 

「コトちゃんから?」

 

 

 今の時間はまだ練習時間じゃないのかと思い、私も気になってそのメッセージを覗き見る。

 

「動画ですね」

 

「三葉さんが滝に打たれてるシーンだね。あっ、手を組み替えた」

 

 

 三葉さんがタカ君に恋慕の情を懐いていることは、本人以外が知っていること。だから少しでも可愛く見せたいって感情が働いたんだなと、私は微笑ましい気持ちになった。

 

「コトミも打たれてくれば良いのに」

 

「コトちゃんじゃすぐにギブアップしちゃうと思うけど」

 

「そうですね」

 

 

 それに、コトちゃんの煩悩はこの程度ではどうにもならないと思うし……

 

「さて、そろそろ夕飯の買い出しに行きますか。義姉さんは何が食べたいですか?」

 

「タカ君が作ってくれるものは何でもおいしいから迷っちゃうな」

 

 

 タカ君の料理は私では太刀打ちできないレベルの美味しさなので、本当に何でもいいって言える。だがその答えは作り手には迷惑極まりないので、私は一生懸命何が食べたいかを考える。

 

「スーパーに行って考えましょう」

 

「そうですね」

 

 

 今ここで考えるより、スーパーで何が安いかを考えてから食べたい物を考えた方がお財布に優しい。タカ君は家計のやりくりもしているので、そこに協力するのは義姉の役目。

 

「今日は野菜が安いですね」

 

「そうだね。あっ、だったら野菜カレーにしましょうか」

 

「カレーですか? 確かに今日は少し暑いですし、カレーなら食が進むでしょうね」

 

「タカ君の作ってくれたご飯なら、幾らでも食べられそうだけどね」

 

 

 さすがに食べ過ぎると太ってしまいますが、タカ君のご飯はそんな考えを凌駕するくらいの美味しさがある。それにタカ君はしっかりと体調管理してくれるので、食べ過ぎても太ってしまうことはあまりないのです。

 

「それじゃあ必要な物を買って帰りましょうか」

 

「そうだね」

 

 

 何だか新婚夫婦みたいな会話ですが、私とタカ君の間にそんな甘い空気は流れていない。あくまでも義姉弟の関係なのである。

 

「(今はこの空気は私だけのものですが、いずれ誰かに取られちゃうんでしょうね)」

 

 

 タカ君はモテるので、作ろうと思えばすぐに彼女ができるでしょう。そうすればお義姉ちゃんと一緒にいる時間は減ってしまうんでしょうね……ちょっと悲しですが、タカ君には幸せになってもらいたいですしね。




原作終わっちゃうの残念です

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