桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミは自分でやらないからな……


晩御飯の希望

 スイカを食べてたら、コトミがふと昔のことを思い出したようだ。

 

「そういえば昔、庭の土にスイカの種を蒔いたっけ」

 

「あれは蒔いたというより種飛ばしをしてただけだろ?」

 

「いや~、あれでスイカが成れば食べ放題だな~って思ってたけど」

 

「植えたわけじゃないんだから成るわけないだろ」

 

 

 そもそも水やりとかもしていないのだ。成長するわけがない。そしてたとえ成長したとしても、母さんが面倒だと言って根こそぎ引っこ抜きそうだし。

 

「って、何故アリア先輩はスズの耳を塞いでるんですか?」

 

「だって膣に種まきって」

 

「そんな話はしていませんが?」

 

「というか離せ! 子供っぽいだろうが!」

 

 

 耳を塞がれていたスズがアリア先輩の手を払うと、何処からか何かが切れる音がした。

 

「もうスズちゃん! スズちゃんの所為でスイカップの紐が切れちゃったじゃない!」

 

「ということは今アリア先輩の制服を剥けば生乳が――あがっ!?」

 

 

 くだらないことを言いだした愚妹をゲンコツで黙らせ、俺は残っている書類に目を通す。この調子ではシノ会長たちは今日の生徒会業務のことは忘れているだろうし、下手に水を差して盛り下がられるのも面倒だから。

 

「そうそう。スイカを食べた後脂っこいものはNGなんだってな」

 

「どうしてですか?」

 

「消化不良を起こすからよ」

 

「脂っこいものか~。天ぷらとか揚げ物系ですかね」

 

「後はウナギとかもね」

 

「オーラルプレイもダメだな!」

 

「人の脂はOKなのでは? というか、タカ兄が睨んでるのでこの話題は止めましょう」

 

 

 いち早くコトミが気付いたので、シノさんが話題に上げかけたものは流されたようだ。

 

「よーす生徒会役員共――ってスイカじゃん! 私にも食わせろ!」

 

「まだ残ってるのでどうぞ~」

 

「それで、横島先生は何の御用で?」

 

「相変わらず棘があるな……まぁいいや。今度の総会に外部のお偉いさんが来るみたいでな。桜才ブログについてやマスコットについて聞きたいと言われていてな。時間を作っておいてくれ」

 

「発案者の会長が対応すればいいので?」

 

「実際にマスコットを見たいとも言っていたので、津田も付き合ってくれ」

 

 

 ちょっと面倒な話だが、それだけ話題になっているということだということで納得しておこう。

 

「塩は無いのか?」

 

「生徒会室に何を求めてるんですか、ありませんよそんなの」

 

「あるよ~」

 

「あるのかよ!?」

 

「スズ先輩、ノリノリですね~」

 

 

 盛り上がる女性陣をよそに、俺は生徒会作業を終わらせて先に生徒会室を辞す。あのままいてもすることは無いし、たまにはのんびりしたいしな……スズ、後は任せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にか生徒会室からタカ兄の姿が消えていて、私たちは相変わらずの凄さに驚きを隠せずにいる。

 

「気配遮断もさることながら、処理能力も相変わらずだな……」

 

「仕事のこと、すっかり忘れてましたね……」

 

「またタカトシ君に借りができちゃったね……」

 

 

 この程度でタカ兄が貸しだなんて思わないだろうけども、三人はタカ兄に申し訳ない気持ちがあるようだ。

 

「三人は意外と抜けてるんですね~」

 

「常に抜けてるお前に言われたくはない!」

 

「あ痛っ! でも気持ちいい」

 

 

 スズ先輩に脛を蹴られたけど、この痛気持ちいのがやめられない……私はMじゃないのに、この気持ちは何なんだろう。

 

「それじゃあ先輩たち、私もそろそろ帰りますね~」

 

「あっそうだ。津田妹」

 

「何ですかー?」

 

 

 帰ろうとしたら横島先生に呼び止められたので、私は顔だけ振り返って先生に続きを促す。

 

「テストの点は兎も角授業態度に問題ありってことで、このままだと生活指導に呼び出される可能性があるそうだぞ」

 

「さ、最近は大人しくしてるのに……」

 

 

 そりゃ偶に寝ちゃったり宿題を忘れたり、提出課題でふざけたりはするけど、それ以外はまともになってきていると思ってたのに……

 

「これ以上兄に迷惑かけないよう気を付けるんだな。ただでさえこの学園には問題児が多いから」

 

「その内の一人が、偉そうなこと言わないでください」

 

 

 スズ先輩にツッコまれ、横島先生は視線を逸らす。自分がタカ兄から問題ありと思われていると自覚しているようだ。

 

「はぁ……せっかく勉強とか頑張ってるのに、どうして問題児扱いされちゃうんだろう……」

 

 

 一人で帰路につきながら、私は自分の生活態度を思い返す。確かに寝不足とか宿題面倒くさいとかでテキトーにやったりすることもあるけど、最近はタカ兄とお義姉ちゃんのお陰で真面目になってきているはずなのに……

 

「この間のCGアートがいけなかったのか? でも先生は褒めてくれたし」

 

 

 ちょっとタカ兄をゴリゴリにしてカーニバル衣装を着せたけど、あれは芸術だと今でも思っている。まぁ、本人に見られたら怒られるだけで済むかどうか分からないけど……

 

「ん? お義姉ちゃんからメッセージだ」

 

 

 とぼとぼと歩るいていたら携帯が震えたので確認すると、お義姉ちゃんから夕飯の質問だった。

 

『親戚からウナギとお素麺もらったけど、晩御飯どっちがいい?』

 

 

 そう言えばスイカを食べた後ウナギって消化不良を起こすとかスズ先輩が言っていたような……でもこんな気分の時はガツンとしたものを食べたいし。

 

『ウナギで』

 

 

 私はそう返信してから思考をリセットする。確かに今までのままでは問題あり判定のままだろうから、明日からはもう少し真面目に生活しよう。

 

「でも、私一人じゃ無理そうだから、やっぱりタカ兄頼りなんだけどね」

 

 

 何故一歳違いの兄妹なのにここまで違うのだろうか……私は残りの帰路を歩みながら考えたが、結局答えにはたどり着けなかった。




コトミが独り立ちする日は来るのだろうか……

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