桜才学園での生活   作:猫林13世

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思春期思想が多い世界だ……


勘違い多数

 偶々タカトシの携帯が目に入り、送られてきたメッセージに慌てる。

 

「タカトシ、何時の間に英稜の一年とそんな関係に!?」

 

「はい?」

 

 

 面倒見のいいタカトシが広瀬の連絡先を知っていることには驚かなかったが、まさかあんな積極的なメッセージが送られてくるなんて……しかも、タカトシも驚いた様子も無いなんて……

 

「タカトシは年下がいいのか? それとも割れ目を見せてくれるなら誰でもいいのか!? 私だって見せるぞ!」

 

「何の話をしてるですか、貴女は……」

 

「だって広瀬が割れ目を見てくれって……」

 

「鍛えた腹筋を見て欲しいってことですが、それが何か?」

 

「腹筋……?」

 

 

 てっきり別の割れ目かと思ったのだが、広瀬と筋肉談義をしていただけの様で、私は自分の勘違いを恥じる。まぁ、タカトシがそんなことで喰いつくわけないと分かっていたのだが、やはり割れ目と言われたらそっちを想像してしまうだろう……

 

「シノちゃんは何と勘違いしたのかなー?」

 

「具体的にお願いします」

 

「な、何でもないからな!」

 

 

 アリアと、桜才ブログの件で取材に来ていた畑に追及されそうになり、私は咄嗟に別の話題を探す。

 

「そういえば萩村は何処に行った?」

 

「スズちゃんなら、風紀委員会に報告書を提出しに行ってるよ~」

 

「そうか」

 

 

 体調不良で休みとかではないなら安心だな。って、普通にプールに入ってたんだし、あの日というわけでもないか。

 

「それで、会長は何を勘違いしたんですかねー?」

 

「しつこいぞ!? そもそも畑」

 

「何ですか?」

 

「取材が終わったのならさっさと出ていったらどうだ? 生徒会室は関係者以外立ち入り禁止が原則なんだからな」

 

「そういえばそんなルールもありましたね。来客が多い場所ランキング上位ですから、すっかり忘れてました」

 

 

 確かに生徒会に関係ない人間もちょくちょく訪れているので、この原則は忘れられがちだ。だが無くなったわけではないので、私は畑を生徒会室から追い出した。

 

「まぁ、あの文面なら私も焦っちゃうかもね~」

 

「だろ?」

 

「でもタカトシ君があんな誘いに乗るわけないんだし、焦らなくても良いんじゃない?」

 

「そうなんだが、新顔が意外と人気になるのはよくあるだろ?」

 

 

 私は森の顔を思い浮かべてそう言ったのだが、アリアは誰のことを指しているのか分かっていない様子。

 

「(森なんて、私たちより大分後にタカトシと出会っているのに、一番仲が良い感じに発展しているだろ? だから、運動キャラだが油断できないと思っただけだ)」

 

「(確かにサクラちゃんとタカトシ君は仲が良いよね。羨ましいって思うことも多いし)」

 

「だろっ!」

 

「会長、うるさいです」

 

「す、すまない」

 

 

 思わず大声を出してしまいタカトシに怒られてしまった……本当に、どっちがこの部屋の主か分からなくなってきたな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活を終えて帰り支度をしていると、主将とトッキーが何か真剣に話しているのが聞こえてきた。

 

『だから……君にお願いした……もどう?』

 

『私は……してないですね』

 

「(ク〇ニっ!? 主将も遂に性に目覚めたの!?)」

 

 

 真相を確かめたい衝動を抑えられず、私は主将に話しかける。

 

「何の話をしてるんですか?」

 

「そろそろ大会で減量しなきゃだから、タカトシ君にお願いしたって話だよ。ついでに、トッキーもタカトシ君にお願いしたらって」

 

「私はそこまで減量に苦労してないから別に良いって答えただけだよ」

 

「なーんだ」

 

 

 てっきり主将と思春期トークできるようになったのかと期待したのに……

 

「それで、どうしてタカ兄なんですか?」

 

「だってタカトシ君ってしっかりとした体形してるでしょ? 体重もそれ程増えてる様子も無いし」

 

「まぁ、タカ兄はいろいろとやってますからね。むしろエネルギー足りてるのだろうかって思うくらいですけど」

 

「そのいろいろの原因筆頭が言うことじゃなくね?」

 

「それは言わないお約束だよ」

 

 

 タカ兄の苦労の大半は私だ。トッキーに言われなくても自覚してるし、少しは減らそうと努力もしている。だが、結果が伴わないのでタカ兄の苦労も減らないのだが……

 

「というか、体重管理とかはマネージャーの仕事じゃないのか? 兄貴じゃなくてお前がやれよ」

 

「トッキーは私とタカ兄、どっちが立派に――」

 

「兄貴」

 

「せめて最後まで聞いて……」

 

 

 質問を最後まで言わずに答えられたので、私は一応のツッコミを入れる。

 

「まぁ、私もタカ兄の方が立派に体調管理すると思ってたけど」

 

「お前が無事に生活出来てる時点で、兄貴の体調管理がしっかりしているって分かるしな」

 

「だよね。私一人だったらとっくに栄養失調になってただろうし」

 

 

 私は基本的に食べたいものを食べる主義の人間なので、タカ兄が用意してくれていなかったらサラダとかは食べずに肉だけを食べていただろう。サプリなんて使わないだろうし、確実に成長できていなかっただろう。

 

「そういうわけで、タカトシ君によろしくって言っておいてね」

 

「分かりました」

 

 

 ムツミ主将に言われて、私は敬礼を返す。タカ兄には私が改めて言わなくてもしっかりと用意してくれるだろうけども、主将に言われたのでしっかりと伝えておかないと。

 

「――というわけで、ムツミ主将からの伝言でした」

 

「開き直ってるが、お前もできるようになれよな」

 

「分かってます……」

 

 

 最後にタカ兄に怒られ、私は反省して努力しようと心に決めた。




影のマネージャーと言われるだけはある

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