桜才学園での生活   作:猫林13世

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勘違いさせようとする人が数人


割れ目談義

 今日の体育はプールということで、普段だらけている男子もはしゃいでいる。だがその内容は低俗で、プールサイドでタカトシに怒られているという、ある意味いつも通りの光景が見て取れる。

 

「タカトシは相変わらずね……」

 

「スズちゃん、泳がないの?」

 

「ムツミは元気ね……」

 

 

 既に十分泳いだので休憩していたのだが、未だに泳ぎ続けているムツミに手を振られ、私はプールの中に戻る。とはいっても足が付く範囲でだ。

 

「ムツミは体育の時間だけは元気よね」

 

「唯一の得意分野だからね~。こればっかりはスズちゃんにも負けないし」

 

「ムツミちゃんは津田君と争ってたんじゃなかった?」

 

「そうだったんだけど、タカトシ君があっちに行っちゃったから、今は自由に泳いでるんだ」

 

 

 ネネも合流し、私たちは水の中でお喋りすることに。プールサイド側で話しているのは、決して私が小さいからではない。

 

「津田君は男子を怒ってるけど、女子も大概だとは思うけどね」

 

「どういうこと?」

 

「スズちゃんは見慣れてるかもしれないけど、津田君の身体ってかなり引き締まってるじゃない? だから魅力的に見えるんだよ。もちろん、津田君は顔も良いから余計に、なんだろうけども」

 

「確かにタカトシ君の身体は羨ましいよね」

 

 

 ついにムツミも色気づいたのかと思ったが、この子は純粋に引き締まった身体を見て羨ましがっているようだ。

 

「私も大会に向けて減量しなきゃいけないし、タカトシ君くらい身体ができていれば楽ができるのに」

 

「ムツミの場合は食べる量を減らせば痩せるんじゃないの? 普段からあれだけ食べててその体型なんだから」

 

 

 一部女子から殺意の篭った視線を向けられ始めたので、私は話題を変える為に知恵を絞る。

 

「そういえばネネ、さっき何か探してるようだったけど見つかったの?」

 

「探してた? あぁ、形の良いお尻がないかなーって思って」

 

「何してるんだよ!?」

 

 

 ネネもだんだんと出島さんみたいな感じになってきてしまい、そろそろ私では処理でき無さそうになってきたわね……

 

「あっ、タカトシ君! こっちこっち!」

 

「津田君、お疲れ様」

 

 

 男子たちへの説教を終えたタカトシがこちらに来る。普段は服の上からしか見ていないから分からないけど、かなり筋肉質なのよね、タカトシの身体って……

 

「何の話をしてたんだ?」

 

「ムツミちゃんが津田君の身体が欲しいって」

 

「身体が? 別に三葉だって十分鍛えられてると思うんだが」

 

「でもタカトシ君みたいにしっかりしていれば、減量で苦しまなくて済むのに」

 

「(ネネのヤツ、絶対勘違いさせようとして言ったわね、今の……)」

 

 

 ネネの意図が分かってしまう自分が恥ずかしいが、タカトシもムツミも特に気にした様子も無く会話を続けている。

 

「食べる量を減らすと途中で疲れちゃうんだよね……何か良い減量方法ないかな?」

 

「減量と言われてもな……今度調べてみる」

 

「ありがとう、タカトシ君」

 

「津田君が柔道部のマネージャーみたいな会話だね」

 

 

 本来柔道部のマネージャーはコトミなのだが、タカトシがだいたいの管理をしているのは周知の事実。だがタカトシがムツミの食事管理をするのではないかということが、女子たちの気持ちをざわつかせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、部活をしてから生徒会室にやってきた広瀬さんは、何時も通りだらしない恰好をしている。

 

「広瀬さん、せめてお腹は隠して」

 

「部活中はこれくらい普通ですって」

 

「その恰好でも怒られないの?」

 

「そうっす」

 

 

 私は広瀬さんに注意しているのに、会長と青葉さんは広瀬さんの格好を受け容れている。これって私が間違っているのかしら……

 

「それにしてもユウちゃんの腹筋、たくましく割れてるね」

 

「鍛えてるっすからね」

 

「女子でもここまでなるんですね」

 

 

 青葉さんが広瀬さんの腹筋を撫でていると、何故か広瀬さんが嬉しそうにしている。恐らく鍛え抜いた身体を褒められて悦に浸っているのだろうけども、会長が違うことを考えている顔をしている。

 

「ユウちゃんはお腹が性感帯なんだね」

 

「違うと思いますよ……普通に褒められて嬉しいんだと思います」

 

 

 やっぱり違うことを考えていたようで、私は会長に事務的なツッコミを入れる。

 

「それにしても、ユウちゃんの腹筋ならタカ君といい勝負ができるんじゃないかな?」

 

「会長、津田先輩の腹筋を見たことあるんですか?」

 

「そりゃプールとか海で見たことあるよ? サクラっちだってあるし、青葉っちも見たことあるよね?」

 

「はい。確かに津田先輩もかなり鍛えてる感じでしたよね」

 

 

 まじまじとは見たことないけど、確かにタカトシ君もかなり鍛えている感じだったけども、タカトシ君の場合は運動部じゃないし、広瀬さんと競わせる必要は無いと思うんだけどな……

 

「それじゃあ津田先輩の割れ目も見せてもらわないと」

 

 

 そう言って広瀬さんはスマホを取り出し、タカトシ君にメッセージを送る。

 

「『今度私の割れ目を見てください』っと」

 

「何だか卑猥に聞こえるね、そのメッセージ」

 

「それは会長の心が汚れてるからですよ」

 

 

 すぐにタカトシ君からの返信があり、やはり彼は腹筋の話だと理解していた。

 

「それにしても、津田先輩って何で部活やってないんすかね? もったいない」

 

「タカ君はいろいろと忙しいからね」

 

「半分以上はタカトシ君が背負わなくても良い苦労なんだけどね」

 

 

 会長と私の説明である程度納得したのか、広瀬さんはそれ以上聞いてくることは無かった。それにしても、本当にタカトシ君はしなくても良い苦労してるんだな……




最低限鍛えてればいいと思う

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