桜才学園での生活   作:猫林13世

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とても魅力的な出し物が……


浴衣デーの実施

 会長の思い付きで全校生徒が浴衣で過ごす浴衣デーなるものが開催されることになったのだが、意外とノリノリで参加している生徒も多い。やっぱりこの学園はこれくらい盛り上がってないとらしくないのだろう。

 

「みんな楽しそうだよね」

 

「ムツミも楽しそうじゃない」

 

「だってお祭りみたいじゃん。みんなが浴衣着てるってさ」

 

「スズ、屋台は無いの?」

 

「いや、ほんとにお祭りじゃないんだから……」

 

 

 浴衣を着てテンションが上がっているパリィちゃんが、スズちゃんに屋台の場所を尋ねる。確かにこの格好なら屋台があればもっと楽しめただろうに……

 

「皆さん知らないのですか?」

 

「は、畑さん……相変わらずいきなり現れるんですね」

 

「それで畑先輩。何を知らないのでしょうか?」

 

 

 いきなり現れた畑先輩にスズちゃんが驚いていたので、私が尋ねることに。

 

「津田副会長と出島さんが協力して、中庭でかき氷を配っているんですよ」

 

「か、かき氷ですって!」

 

 

 この暑い時期にピッタリのものを、タカトシ君と出島さんが作ってくれているなんて……これはすぐにでも手に入れなければ。

 

「あっ! こらムツミ! 廊下は走らない!」

 

「そうだった……」

 

 

 思わず気持ちが先走ってしまい、本当に廊下を走ってしまった私をスズちゃんが注意する。

 

「気持ちは分かるけど落ち着きなさいよ。ちゃんと全員分用意してるだろうし」

 

「でも、早く食べたいじゃん」

 

「かき氷のシロップの味って全部一緒なんだから、それ程急ぐ必要は無いと思うけど」

 

「そうなのっ!?」

 

 

 スズちゃんから衝撃の一言を聞き、私は思わず絶句してしまう。

 

「まぁ、タカトシと出島さんのことだから、シロップを使わずに味付けしてるのかもしれないけど」

 

「スズ? 涎が出てるよ」

 

「スズちゃん、甘いもの好きだもんね」

 

 

 既に意識がかき氷に向いているのか、スズちゃんは無言で中庭までの道のりを進んでいく。

 

「凄い人気みたいだね……」

 

「でも、先生たちも手伝っているからそれ程待たなくても良さそうだね」

 

 

 中庭には大量の生徒が押し寄せていたけども、手際がいいのかすぐに用意されている。

 

「おっ、スズ先輩たちじゃないですか」

 

「あっ、コトミちゃん」

 

 

 かき氷を食べながら近づいてきたコトミちゃんに話を聞くと、結構な味が用意されているようだ。

 

「ちゃんと果物から味を抽出しているので、同じ味ってことは無いと思いますよ」

 

「そうなんだ」

 

「そこはほら、七条グループの技術力とタカ兄の家事力の賜物です」

 

「ある意味最強のタッグよね……」

 

 

 スズちゃんが感心していると、すぐに私たちの番がやってきた。

 

「私抹茶で」

 

「私イチゴー」

 

「三葉は?」

 

「そうだな……」

 

 

 タカトシ君に聞かれて、私はどの味にしようか少し考えてから注文する。

 

「白玉小豆抹茶練乳イチゴ添えで」

 

「……お腹大丈夫なの?」

 

「平気だよ!」

 

「お待たせしました。白くてドロドロしたものを掛けたかき氷です」

 

「? ありがとうございます」

 

 

 何故かタカトシ君が出島さんを睨んでたけど、私は普通に受け取ってかき氷を食べることに。

 

「美味しいー」

 

「相変わらずのピュアさ……」

 

 

 スズちゃんも呆れた様子だったけども、私は気にせずかき氷を食べ進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見回りも兼ねて校内を散策してると、床に縮れ毛が目立つ気がしてきた。

 

「やはり浴衣だから落ちやすいのか?」

 

「どうなんだろうね~。私は全部剃ってきたから分からないけど」

 

「私もだ」

 

 

 とりあえず目についてしまったので掃除をすることに。すると反対側から五十嵐がやってきた。

 

「掃除ですか?」

 

「あぁ。かくかくしかじかで縮れ毛が目立ってな」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

「カエデちゃんも剃ってきたの?」

 

 

 アリアの質問に、五十嵐が顔を真っ赤にして反論する。

 

「ショーツ穿いてるに決まってるでしょうが!」

 

「本当ですかー?」

 

「覗こうとするな」

 

 

 いきなり現れた畑の腕を掴み、五十嵐の浴衣の中を覗こうとするのを阻止する。タカトシがいればもっと簡単に阻止できたのだろうが、私たちではこれが精一杯だ。

 

「先程裾を上げたままの横島先生が男子生徒を襲おうとしていましたが、津田副会長に身柄を差し出されていました」

 

「いっそのこと馘にした方がタカトシの精神的安寧を保てるんじゃないのか?」

 

「人事権は私たちにはありませんので」

 

 

 畑に真っ当なことを言われてしまったが、確かに私たちでは横島先生をどうにかすることはできない。

 

「とりあえず浴衣デーは成功ということで記事にしておきますね」

 

「あぁ。今度ブログでも紹介するさ」

 

「最後に集合写真でも撮っておかなきゃね」

 

「だがアリア、浴衣姿のタカトシを不特定多数の目があるブログに載せるのはどうなんだ? ただでさえファンが多いというのに」

 

「ですが成功の半分くらいは津田副会長が目を光らせていたからですよ? 本日、何人かの男子生徒が女子生徒を性的な目で見ていたと注意されていますから」

 

「やはり浴衣には普段着には無い魅力があるのか……」

 

「でも、どうしてタカトシ君が男子生徒が性的な目で見てたって分かったんですかね?」

 

「女子生徒から津田副会長に相談されたそうです。決して津田副会長が女子生徒を性的な目で見てたから気付いた、とかではありませんのでご安心を」

 

 

 畑の説明に私たちは納得する。初めからタカトシが性的な目で見ていたなどと思っていなかったが、ならどうしてという疑問があったからだ。

 

「とりあえず、来年も計画してみようか」

 

「シノちゃん、気が早すぎるよ」

 

「そうかもな」

 

 

 アリアに指摘され、私は笑いながら来年の計画はまた今度にしようと決めたのだった。




出島さんとムツミの相性は最悪だな……

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