桜才学園での生活   作:猫林13世

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敵うわけがない


さらに上にマネージャー

 授業が終わり放課後、私たちは朝に続き道場で練習をしている。最近強豪校の仲間入り間近と畑先輩に言われて張りきっているのだが、他の部員たちは結構ヘロヘロのようだ。

 

「マネージャー、スポーツマッサージできる?」

 

「一応タカ兄に習っているので出来なくはないですけど……」

 

 

 自信なさげなコトミちゃんだけども、タカトシ君に教わっているならある程度はできるんだろうな。だってタカトシ君なら問題なくできるだろうし、教え方も上手だろうし。

 

「そろそろ部活を切り上げて――って何やってるんだ?」

 

「あっタカ兄! お願い、皆にマッサージしてあげて」

 

「マッサージ?」

 

 

 見回りに来たタカトシ君にコトミちゃんが事情を説明している。

 

「本来はコトミに仕事だろうが……まぁ、自信がないということなら仕方が無い。隣で実践してやるから真似してみるんだな」

 

「お、お願いします……」

 

 

 どうやらタカトシ君が実践指導してくれるらしいので、コトミちゃんもマッサージをすることに。

 

「えっと、タカ兄にマッサージされたい人はいますか?」

 

 

 いくらタカトシ君がマッサージ上手だと言っても男の子。女子部員たちが進んでマッサージされたいとは思わないんだけどな……だったら主将である私が実験台になるしかない。

 

「私が受けるよ!」

 

「おいムツミ、そんなに津田君に身体を触ってもらいたかったのか?」

 

「ち、違っ! 男の子にマッサージされたい人がいないと思って……だったら主将の私がその役を引き受けるしかないかなって思っただけだから」

 

「いや、私以前お兄さんにマッサージしてもらったことあるんですけど」

 

「というか津田君に頼んだ方が効きそうだし」

 

「あ、あれ?」

 

 

 どうやらタカトシ君にマッサージしてもらいたい人の方が多いようで、私がしていた心配は無用なものだったようだ。

 

「まぁ、ムツミ主将がタカ兄にマッサージしてもらいたいのは分かりました。それじゃあ私は中里先輩にマッサージしますので」

 

「変な所触るなよー? なんてな」

 

「分かってますよ。変なところを触ると変な気持ちになっちゃうから――ってタカ兄? その拳は何?」

 

「バカなこと言ってないでさっさと用意しろ。それくらいはマネージャーのお前の役目だろ」

 

「た、ただいま!」

 

 

 タカトシ君に怒られてコトミちゃんは寝技用の布団を用意して私とチリをそこに案内する。

 

「というか、こういうのはちゃんとした場所でした方が良いと思うんだが」

 

「そんな予算は無いし、お小遣いで行くには厳しいからね」

 

「そんなものか」

 

 

 タカトシ君にマッサージしてもらっていると、何だか気持ちよくて眠くなってくる……一方のチリは、コトミちゃんのマッサージに怯えている様子。

 

「そんなに怯えなくても大丈夫ですって。タカ兄に教わってるんですから」

 

「コトミが施術するとなると勝手に身体が強張るんだよ。だがまぁ、なかなか気持ちが良いな。力加減も絶妙だ」

 

 

 どうやらコトミちゃんのマッサージも気持ちがいいらしい。

 

「マッサージ師って指立て伏せができるらしいね」

 

「それだけ強い親指が必要ってことですかね」

 

 

 タカトシ君ならそれくらい鍛えていそうだけども、コトミちゃんはどうしてそれだけの力を持っているんだろう。

 

「私は指弾の特訓による副産物です」

 

「厨二が役に立ったな……」

 

「中二? コトミちゃんは高一だよね?」

 

「お前は知らなくて良いんだよ」

 

「?」

 

 

 横でマッサージを受けているチリにそう言われたけども、トッキーは何を言っていたのか気になる……後でタカトシ君に教えてもらおうかな。

 

『おい、ムツミ?』

 

 

 あれ? 何だかチリの声が遠くなってきたような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三葉にマッサージをしていたら寝てしまった。余程疲れていたのかは分からないが、ここで寝られても困るんだがな……

 

「さっすがタカ兄。マッサージと称して女の子を寝かせて襲うんだね!」

 

「お前はここで永眠したいらしいな?」

 

「じょ、冗談だから! 冗談に決まってるじゃない! タカ兄が女の子を襲うなんて誰も思ってないから」

 

 

 こちらも冗談だったのだが、コトミが想像以上に怯えたので放っておこう。これで大人しくなるなら楽だしな。

 

「やり方は分かったな? 残りはコトミがやってやれ」

 

「これだけの人数は無理だって! それに、タカ兄にやってもらいたい人もいるだろうし」

 

「そんな人がいるわけ――」

 

 

 ないだろと言おうとしたが、部員たちの目がこちらを向いているのに気付き言葉を呑み込む。どうやらコトミに任せるのが怖いというより、三葉が寝てしまう程気持ちがいいと思っているようだ。

 

「とりあえず今日は手伝うが、今後はお前が一人でやるんだからな」

 

「分かってるよ。というか、このままだとマネージャーの座がタカ兄に取られちゃいそうだし……」

 

「いや、殆ど津田君がマネージャーみたいなものだろ? 遠征の際のお弁当の用意だって、津田君がしてくれてるんだし」

 

「そういえば、道場の掃除もお兄さんがやり直してるお陰で綺麗に保たれてるんすよね?」

 

「わ、私だって頑張ってるもん! というか、タカ兄レベルを期待されても無理だからね!?」

 

 

 俺としてはコトミの尻拭いをしていただけなのだが、どうやらマネージャーの仕事を俺がしていると思われてしまっているようだ。

 

「今後は手伝わない方がよさそうだな」

 

「いやいや、津田君に手を引かれたらウチの部は駄目になるから……勉強面でも」

 

「あ、あぁ……そういえばそうだったな」

 

 

 そっちもマネージメントしていたのを思い出し、俺は思わずため息を零したのだった。




勉強面はマネージャーというより先生だな

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