桜才学園での生活   作:猫林13世

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相変わらずの愚妹っぷり


コトミの出来

 放課後、トッキーと二人で廊下を歩いていると桜才新聞が視界に入ってきた。

 

「何々、夢占い特集?」

 

「今回は兄貴にエッセイがメインじゃないんだな」

 

「タカ兄のエッセイばっかり注目されてるからってこの間畑先輩が悩んでたからじゃない?」

 

 

 我が兄ながら多彩で羨ましい限りだが、タカ兄のエッセイは我が校のみならず他校にもファンがいるくらい人気なのだ。どうしてもエッセイがメインになってしまうのは仕方が無いだろう。

 

「夢か……」

 

「コトミは昨日、どんな夢を見たんだ?」

 

「私?」

 

 

 トッキーに聞かれて、私は昨日見た夢を思い出そうと首を捻る。

 

「確かタカ兄とお義姉ちゃんに勉強を叩き込まれていたタイミングで力が解放され、何故か異世界に飛ばされて、そこでは私は伝説の勇者扱いで――」

 

「妄想の話じゃねぇよ」

 

「少しくらい付き合ってくれてもいいじゃんか!」

 

 

 現実逃避していなければやっていけないくらい厳しい勉強タイムだったのだ。トッキーだってあの二人に付きっ切りで勉強を教え込まれればこれくらいの現実逃避はするだろう。

 

「(コトミ氏、トッキー氏に交際を申し込むも断られるっと)」

 

「あっ、畑先輩」

 

「何故バレた……」

 

 

 廊下の陰で何かをメモしている畑先輩に声を掛けると、驚いたように私を見てくる。

 

「そりゃタカ兄の妹ですから!」

 

「気配察知はお手の物ということですか……」

 

「というか、あれだけ目立ってれば誰だって気付くと思いますけど?」

 

 

 トッキーがあっさりネタ晴らしをしてしまったので、私が実はタカ兄に次ぐ実力者だという嘘は広まることなく終了した。

 

「畑さん! また女子更衣室にカメラを仕掛けましたね!」

 

「おっと。風紀委員長が来たので私はこれで」

 

「あっ、私は百合属性じゃないですからね」

 

 

 畑先輩のメモを覗いたので、それだけは否定しておこう。私は実兄で興奮する変態ではあるが、百合ではない。お義姉ちゃんとそう言うのも悪くないかなーって思ったりしたこともあるが、決して百合ではないのだ。

 

「津田さんも!」

 

「私も?」

 

「スカートが短いです! ちゃんと元の丈に戻しなさい!」

 

 

 通りすがりにカエデ先輩に怒られてしまったので、私は形だけの謝罪をしてその場を流す。

 

「また怒られて……兄貴に伝わったらマズいんじゃなかったのか?」

 

「この程度今時の女子高生なら普通だって」

 

「そんなもんかね……」

 

「ところで、トッキーはどんな夢見たの?」

 

「あっ? 覚えてねぇよ、そんなの」

 

「じゃあトッキーはエッチな夢を見たんだね?」

 

「あ?」

 

 

 私は人間の生体について説明すると、トッキーは慌てて昨日の夢を思い出そうとし始める。そんなにイヤラシイって思われたくないのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日はタカ君もお休みで津田家に行く必要は無かったのだけども、習慣で足が津田家へと向いてしまった。

 

「――というわけで、来ちゃった」

 

「はぁ……」

 

「何かお手伝いすることはある?」

 

「義姉さんに頼むことは今のところ……あっ、コトミが部屋の掃除してるはずですから、その監視をお願いします」

 

「分かった」

 

 

 タカ君に言われて私はコトちゃんの部屋へ向かう。以前コトちゃんが掃除をしてたら以前より散らかったという前科があるので、タカ君は全くコトちゃんのことを信じていないようだ。

 

「コトちゃん、入っても大丈夫?」

 

『お義姉ちゃんっ!? ちょ、ちょっと待ってください!』

 

「待った無し。入るね」

 

 

 コトちゃんの制止を振り切って中に入ると、昨日見た部屋よりも散らかってる部屋がそこにあった。

 

「コトちゃん、掃除してたんじゃなかったの?」

 

「いやー……掃除してたはずなんですけどね……」

 

「タカ君に見られる前にさっさと片付けちゃおう」

 

「て、手伝ってください……私一人じゃこの部屋を綺麗にできる気がしないです」

 

「仕方ないな」

 

 

 手のかかる義妹のコトちゃんだが、これはこれで姉妹っぽくて私は楽しい。タカ君が何でも自分でしてしまうので、あまり姉弟っぽいことができないしね。

 

「それにしても、何処にこれだけのゴミを隠してたの?」

 

「ベッドの下とか、机の下とか……?」

 

「お菓子を食べたらちゃんとゴミは捨てるんだよ?」

 

「まとめて捨てた方が良いかなって思ってたらつい……」

 

「またGが出てきてもタカ君が助けてくれるとは限らないんだよ?」

 

「うっ……」

 

 

 コトちゃんも普通の女の子なので、あの虫は苦手なのだ。タカ君だって頻繁に見たいとは思わないって言ってたいけど、問題なく退治できるからお願いするのだが、あまり良い顔はされない。

 

「兎に角コトちゃんはさっさと自分の部屋を一人で綺麗にできるようにならないと、何時タカ君がいなくなるか分からないんだよ?」

 

「どういうことですか?」

 

「例えばタカ君に彼女ができたら、コトちゃんの相手をする時間を彼女の為に使うでしょ? そうなったらコトちゃんは全て自分でしなきゃいけなくなるんだよ?」

 

「タカ兄は私が手のかかる妹の内は彼女なんて作らないので大丈夫です」

 

「自覚してるならもうちょっと成長して。お義姉ちゃんだって、タカ君には幸せになってもらいたいんだから」

 

「反省します……」

 

 

 コトちゃんに軽くお説教してから部屋の掃除を再開する。それにしても同じ血が流れているはずなのに、タカ君とコトちゃんでここまで出来が違うのはどうしてなんだろう……




何度目の反省なのだか……

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