桜才学園での生活   作:猫林13世

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またネタに困っている新聞部……


夢占い

 桜才新聞の読者層は殆ど津田先生のエッセイ目当てだ。いや、この言い方は正しくないかもしれない。殆どではなくほぼ全員と言っても過言ではないだろう。実際アンケートを取ってみた結果、先生のエッセイ以外のイメージなど皆無だったのだから……

 

「――というわけでして、今回は夢占い特集をすることになりました。生徒会の皆様にも是非ご協力をお願いしたいのですが」

 

「夢占い? 何故そんなものを特集しようと思ったんだ?」

 

「占いは女子受けが良いですから、そこから桜才新聞自体に興味を持ってもらおうという作戦です」

 

「でも、桜才学園の女子の殆どが読者なのに、今更占い程度で興味を持ってもらえるのかしら?」

 

 

 七条さんの質問に、天草会長や萩村さんも同じような疑問を抱いているようだ。

 

「先ほども言ったように、読者のほぼ全員が津田先生の――おや? ところで津田先生はどちらに?」

 

「タカトシなら横島先生とコトミの件で職員室だ」

 

「そうでしたか」

 

 

 あの二人を同時に相手にできる猛者は津田先生のみ。先生の夢にも興味があったのですが、ここは三人の夢で我慢しておきましょう。

 

「本当は男子受けを狙ってS〇X占いをしようと思ったのですが、部員たちに『これ以上生徒会(副会長)から睨まれる企画は止めてくれ!』と止められまして」

 

「新聞部にも真面目な部員はいるんだな」

 

 

 しみじみと呟く天草会長。それでは私が不真面目みたいに言っているように聞こえるのですが……と文句を言いたかったが、確かに私は真面目とは程遠いことをしてましたね。

 

「というわけで会長、昨日どのような夢を見ましたか?」

 

「なかなかタイムリーな話題だな。実は昨日、金縛りにあう夢を見てな」

 

「それってストレスが原因らしいですね」

 

「ストレスか……また何かして発散しないとな」

 

「なる程、会長は金縛りの夢を見たんですね」

 

 

 私がメモをしていると七条さんが覗き込んできた。

 

「畑さん、それじゃあ意味が変わってきちゃうんじゃない?」

 

「誰がたま金縛りの夢を見たなんて言った!?」

 

「改行をミスっただけですよ」

 

 

 私はたまたま金縛りの夢を見たと書いたのだが、改行でそう見えてしまうだけだと弁明。天草会長と七条さんは納得してくれたけども、萩村さんだけは冷めた視線を向けてきている。

 

「それでは気を取り直しまして……七条さんはどのような夢を見ましたか?」

 

「私はちょっと怖い夢だったんだ~」

 

「こ、怖い夢ですか?」

 

 

 七条さんの前置きに萩村さんが身構える。そう言えば彼女は怖いものが苦手でしたね。今度萩村さんをターゲットにしたドッキリ企画でも考えてみましょうか。

 

「蛇が出てきたんだ~。あれは怖かったよ」

 

「蛇の夢は縁起が良いんですよ」

 

「そうなの? 良かった~」

 

 

 私のコメントで七条さんがホッと胸を撫で下ろす。ついでに上下に揺れる胸に、天草会長と萩村さんがまるで親の仇を見るような視線を向けている。

 

「でもお尻から蛇が出てくる夢だったから、ちょっと不安だったんだ~」

 

「その話詳しく!」

 

「喰いつくな!」

 

 

 七条さんの夢の話を掘り下げようとしたら萩村さんに怒られてしまった。だって普通に蛇の夢を見たと書くより、お尻から蛇を生んだ夢を見たと書いた方が男子の興味を惹きつけられると思ったのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珍しくまともに取材していると思っていたのに、七条先輩の夢の話の所為で畑さんの興味は脱線していく。タカトシがいない以上、私がストッパーとして何とかしなければ。

 

「ちょっと残念ですが仕方ありませんね。では萩村さんはどのような夢を?」

 

「昨日の夢ですか?」

 

 

 私は畑さんに言われて夢の内容を思い出そうと記憶を探る。

 

「(確か昨日は、タカトシとボアの散歩をする夢を見たんだっけ)」

 

 

 散歩デートとか冷やかされそうな気がして、私は犬の散歩をする夢はどのような意味があるのか調べることに。

 

「(なになに……犬の散歩をする夢は、気になる異性と仲良くなりたいという願望!?)」

 

 

 こ、こんなことを馬鹿正直に話したら絶対にからかわれる。ついでに会長や七条先輩からも何か言われるだろう。

 

「見てません」

 

「はい?」

 

「ですから、夢なんて見てません」

 

「では今何を検索してたんですか?」

 

「他愛のないことですので」

 

 

 何とかして誤魔化そうとしていると、報告書を持ってきた五十嵐先輩が現れた。

 

「ついでに風紀委員長にも取材して良いですか?」

 

「何ですかいきなり……」

 

 

 畑さんから事情を聞き、五十嵐先輩は恥ずかしそうに話しだす。

 

「見た夢って覚えてないんですよね」

 

「それでも占いは可能」

 

「そうなんですか?」

 

 

 自信満々に言い放った畑さんに、私たちも興味を惹かれた。

 

「寝起きは身体の感度が良くなっているらしく、つまり覚えていない人はエッチな気分に思考を支配されており――」

 

「ちょっと待って! 今思い出すから!」

 

 

 会長と七条先輩のニヤついた視線を受け、五十嵐先輩が必死に見た夢を思い出そうとしている。

 

「あっ! 確かトイレの夢を見ました」

 

「トイレの夢は出すものによって意味が違います。大だと金運、小だと健康運アップ」

 

「そうなんですね」

 

「白いものだと欲求不満」

 

「その情報は要らないです」

 

 

 女子である私たちがそんなものを出す夢を見ると思っているのだろうか……というか、タカトシはどんな夢を見たのか興味あるわね。




原作ではタカトシがトイレの夢でしたけどね

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