桜才学園での生活   作:猫林13世

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してるんでしょうが目立たない……


成長しない理由

 柔道部のマネージャーとして日々努力しているのだが、一向に家事スキルが成長しない……

 

「――というわけなんだけど、マキはどう思う?」

 

 

 これは何者かの陰謀かもしれないので、私は友人の中で最も頭の良いマキに相談する事にした。だってマキに聞けば何かしらの答えは得られるだろうから。

 

「それは単純にコトミの努力量が足りないんじゃないの? トッキーから聞いてるけど、遠征の際のお弁当とか、津田先輩にお願いしてるんでしょう?」

 

「だって私が作ったお弁当じゃ、皆さん腹痛で棄権するしかなくなっちゃうし」

 

「ほつれた道着を直したのだって津田先輩で、道場を綺麗に掃除したのも津田先輩。これじゃあコトミの家事スキルは成長するわけないって」

 

「私だってやってるけど、タカ兄がその数段も上を行ってるから私がサボってるように見えるだけだから」

 

 

 実際私だって道着を繕ってみたり、道場の掃除を頑張ったりしているのだが、どうしてもタカ兄のように上手く行かない。長年の経験がたった数ヶ月で稼げるとは私だって思っていなかったが、あそこまでレベルの違いを見せつけられるとどうしてもタカ兄頼りになってしまうのだ。

 

「以前から津田先輩が言ってるように、一人暮らしでもしてみれば?」

 

「そんなことしたら一週間でゴミ屋敷と化すよ……」

 

 

 それ以前に人間らしい生活が送れるかどうかすら怪しい……仕送りだってすぐに使い果たしそうだし……それ以前に家計のやりくりなんて私にはできないだろう。なにせお小遣いのやりくりすら出来ていないのだから。

 

「さっきから何の話してるんだ?」

 

「コトミがマネージャーとして成長してないって話」

 

「あぁ……この前も部室の掃除を兄貴に頼んでたしな」

 

「ちょっと手伝ってもらっただけだって!」

 

 

 実際はちょっとどころではなかったのだが、それでも私だって掃除をしていたのだ。タカ兄だけにさせたわけではない。

 

「お前がそんなんだから、兄貴が彼女作れないんだろ? 少しは自分が兄貴の枷になってるって自覚したらどうだ?」

 

「そんなことトッキーに言われなくても分かってるって……でも、タカ兄に彼女ができたらマキが困るんじゃない? ただでさえ二歩も三歩も遅れてるのに」

 

「な、何の話よ……」

 

「タカ兄のことを想ってる歴で言えば、間違いなくマキが一番なのに」

 

 

 なにせ中学時代からタカ兄のことが好きなのだから、一年ちょっとの付き合いしかない他の人よりも明らかに長い。なのにここ最近はタカ兄と絡めていないので圧倒的不利な状況に陥ってしまっているのだ。

 

「わ、私のことは関係ないでしょうが!」

 

「あーあ……また逃げちゃった」

 

「逃げるって分かってて話振っただろ、お前」

 

「私は純粋にマキの恋路を応援してるだけなんだけどな」

 

「その恋路を最前線で邪魔してるんだろ、お前は」

 

 

 トッキーに軽くチョップされて、私はチロリと舌を出す。確かに私がいる所為で誰の恋路も順調に進んでいない。それでもタカ兄との仲を進展させている人は十分いるのだ。マキとタカ兄との関係が何の進展も無いのは、必ずしも私が原因というわけではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活中に部長との組手で擦りむいてしまったので、コトミに手当てを頼んだのだが出来ず、結局保健室に向かわなければならなくなった。

 

「応急セットくらい用意しとけよな」

 

「おっかしいな……この前掃除した時にはあったんだけど」

 

 

 どうやら何処にしまったのか分からなくなってしまったようだが、恐らく兄貴が片付けたからコイツは分からないんだろうな……

 

「ん? コトミに時さん……今は部活の時間じゃないのか?」

 

「あっタカ兄」

 

「ども」

 

 

 ちょうど見回り中だったのか、保健室に向かう途中で兄貴に遭遇した。

 

「ちょっとトッキーが擦りむいちゃって。その治療で保健室に行くんだよ」

 

「治療なら道場でもできるだろ? 何でわざわざ保健室に」

 

「応急セットがどっか行っちゃってさ……だから保健室に」

 

「部室の一番端のロッカーに入ってなかったか?」

 

「そんなとこ見てないけど……というか、そこにしまってあったの?」

 

「最初からそこだろうが……」

 

 

 どうやらコトミは初めから応急セットの場所を把握していなかったようで、兄貴は呆れてるのを隠そうともしない顔でため息を吐いた。

 

「道場に戻ったら確認しておけ」

 

「はーい……」

 

 

 兄貴に呆れられさすがに堪えるのか、コトミもバツが悪そうな顔で兄貴から視線を逸らした。

 

「それで手当だったな。保健室は今無人だが、余計なことするなよ?」

 

「余計なことって何さ!? 私だってちゃんと手当くらい――」

 

「包帯ぐるぐる巻きとか、やってただろお前」

 

「……備品では遊ばないようにする所存であります」

 

 

 相変わらずの厨二のようで、保健室にはそういったものがたくさんあるからコトミのテンションは上がるようだ。だがその後始末をしなければいけない兄貴が可哀想だ……

 

「というかタカ兄」

 

「何だ?」

 

「私が手当てするよりタカ兄が手当した方が確実だと思うんだけど」

 

「柔道部のマネージャーはお前だろうが」

 

「そうでした……」

 

 

 またしても兄貴に仕事を押し付けようとしたコトミだったが、あっさりと撃退される。まぁ、兄貴とコトミのどっちに手当てしてもらいたいかと聞かれれば、間違いなく兄貴と答えるだろうけども、この人はこの人で忙しいんだから、頼むわけにはいかない。私は兄貴に軽く頭を下げてから保健室にむかい、コトミに手当てをしてもらったのだが、自分でやった方が良かったと後悔することに……




まず自覚が足りないのか

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