桜才学園での生活   作:猫林13世

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せっかく早く集まったのに……


慌てる理由

 生徒会業務をタカトシ君にまかせっきりになってしまっていることへのお詫びとして、今日は四人で外出し、タカトシ君にお礼をすることになった。

 

「でもシノちゃん、お礼って言っても何をするの?」

 

「今日の遊びの費用、タカトシの分は私たち三人で払う」

 

「つまり、タカトシの分は奢るってことですか?」

 

「あぁ。一人で負担するのは結構きついだろうから、私たち三人で――」

 

「ん~?」

 

 

 シノちゃんとスズちゃんの視線が私に向けられて、いったい何事かと首を傾げたが、すぐにその理由に思い当たった。

 

「タカトシ君一人分くらい私が払うよ~?」

 

「だがそれだとアリアからのお礼ということになってしまうだろう? 私も萩村もタカトシには感謝しているんだから、それくらいは払わせてくれ」

 

「そうですよ。七条先輩にだけ払わせるわけにはいきません」

 

「気にしなくても良いんだけどな~」

 

 

 私としてはそれくらいで返しきれる恩じゃないと思っているのだけども、シノちゃんもスズちゃんもこればっかりは譲れないというスタンスだったので、私が折れることに。

 

「ところで、今日は何処に行くの?」

 

「高校生らしく街で遊ぼうと思ってな」

 

「高校生らしい……ですか?」

 

「あぁ。よくよく考えてみたら、私たちは一般的な高校生らしさを体験していないんじゃないかと思ってな」

 

「はぁ……」

 

 

 私も良く分からないけど、シノちゃんには何か考えがあるようなので、今日のプランはシノちゃんに全部任せることにしよう。

 

「ところで、そのタカトシは何時になったら来るんですか?」

 

「あぁそれだが、タカトシには一時間遅い時間を言ってあるからな」

 

「どうして?」

 

「私たちは作戦会議をしなければいけないだろ? だからタカトシがいない時間を作ったんだ」

 

「それがここだと?」

 

「そうだ。タカトシにも同じ時間を伝えると、どうしてもアイツが一番最初に待ち合わせ場所に到着するからな」

 

 

 確かに私たちが待ち合わせをすると、タカトシ君が一番、スズちゃんかシノちゃんが二番ということが多い。私も時間前には到着するようにしているんだけども、どうしても一番最後ってことが多いのだ。

 

「それにここなら、萩村の好きなケーキもあるしな」

 

「そんなこと言って、会長も食べたかったんじゃないんですか?」

 

「とりあえず、ケーキでも食べながら作戦会議だ」

 

 

 私たち三人はケーキと紅茶を注文して、どうやってタカトシ君をもてなすかを話し合った。その所為でタカトシ君に伝えた待ち合わせ時間のギリギリになってしまったのは、いかにもシノちゃんらしい結果だと思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だか三人が申し訳なさそうな雰囲気でさっきから行動しているのだが、別に遅刻したわけではないので気にしなくても良いんだがな……それとも、三人が先に集まって何かしていたことが後ろめたいのだろうか。

 

「それで、今日は何処に行くんですか?」

 

「とりあえずどこかでお昼にしよう。遊ぶにしても空腹じゃ長く遊べないだろしな」

 

「ですが、三人はケーキを食べてきたのでは?」

 

「何故分かったっ!?」

 

「シノちゃん、それじゃあ自爆だよ……」

 

「あっ……」

 

 

 隠したかったのか知らないが、シノさんは結構ショックを受けたような反応を見せた。

 

「いや、隠したかったのならちゃんと口元を拭いてきた方が良いですよ。慌ててたのか知りませんけど、三人ともクリームが付いてます」

 

 

 ポケットからハンカチを取り出して三人の口元を拭いていく。萩村だけ何だか抵抗したが二人は素直に拭かれてくれた。

 

「それで何をそんなに慌ててたんです?」

 

「……会長、これは隠せそうに無さそうですね」

 

「そうだな……」

 

 

 何やら観念したようにシノさんとスズが肩を落とし、アリアさんも仕方ないみたいな感じで笑っている。

 

「実は最近君に生徒会業務をまかせっきりになっていることに対してお礼をしようと思ってな。三人でどうすればいいか話し合っていたんだ」

 

「はぁ」

 

「それで、今日の遊びに掛かった費用、タカトシの分を私たち三人で奢ろうって話になったんだ」

 

「それとケーキ、どう繋がりが?」

 

「そこのカフェで話し合っていてな。ケーキがあまりにも美味しくて途中からそっちがメインになってしまったような感じもするが、気が付いたら待ち合わせ時間ギリギリになってしまって慌てていた、というわけだ」

 

「そういうわけですか。ですが、皆さんにはコトミの面倒とか見てもらってますし、お礼とか気にしなくても良いんですが」

 

「だがそれでは我々の気が収まらん! だから今日の費用は我々に任せてくれ」

 

「……では、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 

 恐らくシノさんたちは折れないと思ったので、こちらが早めに折れることに。あまりここで言い争っていると目立ってしまうだろうし――ただでさえシノさんとアリアさんは注目されることが多いし――最悪後で払えば良いと思ったからだ。

 

「それじゃあまずはカラオケだ! 今日こそは萩村に点数で勝つ!」

 

「シノちゃんだって十分高い点数じゃない」

 

「だが、テストで勝てないからここでくらいは勝ちたいし……」

 

「いや、学年違うじゃないですか」

 

 

 三人が楽しそうならそれでいいか……

 

「ほらタカトシ、さっさと行くぞ」

 

「分かりました」

 

 

 四人で行動するとどうしても引率ポジションっぽくなるんだが、誰かがしっかりとしておかないとだめだから仕方ないよな……誕生日的にも俺が一番下のはずなのに……




結局タカトシが一番大人

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