桜才学園での生活   作:猫林13世

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信頼度が半端ない


ブログ開設の条件

 見回りをしながら、私は何か新しいことをしたいと考えていた。新学期ということもあるし、今までの自分ではしなかったような何か――そんなことを求めている。

 

「会長、こちらは異常ありません」

 

「ご苦労。今ふと見上げたんだが、学園の桜は綺麗だな」

 

「そうですね」

 

 

 縁側でお茶を飲みながら会話をする老夫婦みたいな空気が私たちの間に流れる。これはこれで悪くない雰囲気だが、何故私とタカトシの間には恋人のような空気ではなくこういうのになってしまうのだろうか。

 

「この桜をもっと大勢の人に見てもらいたいな」

 

「そうですか。では新聞部に桜特集でも組んでもらいますか? あの人のことですし、外部販売で大勢に見てもらえると思いますよ」

 

 

 確かにそれも一つの手だろう。だが桜才新聞を購入している人の目的は記事の内容ではなく、タカトシのエッセイだからな……桜特集を組んだとしても、殆ど目を通されずに終わってしまうだろう。

 

「畑に貸しを作ることにならないか?」

 

「この程度では返しきれないくらいの貸しがこちらにあるんで、問題ないと思いますが」

 

 

 確かに畑のやらかしたことをこちらで――というか主にタカトシが処理をしているお陰で、畑は退学処分にならずに済んでいる。これほど大きな貸しがあるのだから、頼めば本気で記事を作ってくれるだろう。だが私がやりたいのは、桜才の桜の宣伝ではなく、今までしてこなかったことへの挑戦だ。

 

「なんかこう……他に方法はないだろうか」

 

「他、ですか? だったらブログ開設してみたら如何でしょう? もちろん、学校行事などの宣伝にもなるので生半可な気持ちでしたら許可は下りないでしょうけども」

 

「ブログか……」

 

 

 確かに以前の私なら機械音痴でブログをやろうなんて思わなかっただろう。だが今の私はある程度PCが使えるので問題は無いはずだ。もちろん、公式ブログとなるならふざけるわけにはいかないので、タカトシに検閲してもらうことになるだろうが、今の私ならそれ程酷いことにはならないはずだ。

 

「早速許可をもらいに行くぞ!」

 

「どうぞ。俺は残りの見回りをしてきますので」

 

「タカトシも行くの!」

 

「は? 何故俺も……」

 

「お前がいてくれた方がプレゼンに説得力が出るからな」

 

「はぁ……」

 

 

 なんとも情けない理由だが、私一人よりタカトシが一緒にいてくれた方が先生方のうけがいい。ましては学園公式ともなれば、タカトシの信頼度が無ければ許可が下りるかどうか……それくらい私はやらかしてきたからな。

 

「――というわけでして、桜才ブログをはじめたいのですが」

 

「いいんじゃね? 学園長には私から言っておく。もちろん、ふざけた内容だった場合は即閉鎖するからな」

 

「その点はご安心を。タカトシが検閲してから公開しますので」

 

「なら大丈夫だな」

 

 

 やっぱりタカトシの名前は偉大で、横島先生をはじめとする教師陣も『津田がいるなら』といった感じでブログ開設を許可してくれた。生徒会長として情けない気持ちではあるが、これで新しいことが始められるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会長に桜の写真を撮ってきてくれと言われた時は何を言い出すのかと思ったけど、生徒会室に戻ってその理由が分かった。

 

「ブログなんて始めるんですか」

 

「あぁ。せっかくの新学期だし、何か新しいことを始めたいなと思ってな」

 

「でもシノちゃん、機械苦手なのによくブログなんてやろうと思ったね」

 

「今の私ならこれくらいはできる。それにタカトシや萩村に分からない箇所は聞けるしな。というわけで萩村、写真をPCに取り込むにはどうすればいいんだ?」

 

 

 私は会長からPCの前を譲ってもらい、たった今デジカメで撮ってきた写真を取り込む。これくらいはできてもらいたかったんだけども、そう言えば会長がカメラを弄ってる所ってあんまり見なかったな……これも苦手なのだろうか。

 

「おぉ! これは綺麗に撮れているな」

 

「スズちゃんが拘ってたからね~。ちなみに、傍で写真を撮っていた畑さんは、スズちゃんのパンチラ写真を狙っていたのをタカトシ君に怒られてたけど」

 

「あ、アイツは……」

 

 

 私も七条先輩も全く気付かなかったけど、タカトシは木の根元でカメラを構えていた畑さんに気付き、別室に連行して現在も説教中。その為会長の相手は私がしなければならないのだが、私では畑さんを反省させるだけの怖さは出せないし、仕方が無いか……

 

「というか、勝手にブログなんて開設して大丈夫なんですか?」

 

「ちゃんと許可は貰っている。最終チェックをタカトシがしっかりするということで、職員室も納得してくれたしな」

 

「タカトシ君がチェックするなら、問題ないよね~」

 

「そこで会長がやるからではなくタカトシがいるからで納得されるのは、タカトシとしては不本意なのでは?」

 

 

 アイツはあくまでも副会長で、会長が責任を負うのが普通だ。だが私たちの関係はその普通が当てはまらない。副会長でありながら会長よりも信頼度があり、仕事ができるのだから職員室での評価も『会長<タカトシ』になってしまうのも仕方が無い。

 

「とりあえず記念すべき第一回目の更新は、桜才学園の簡単な説明と、桜の写真をメインにするつもりだったんだ」

 

「タカトシ君の許可が下りると良いね~」

 

 

 普通ならおかしいと思う。だが私たちはタカトシが最終判断を下すのが当然のように思えているので、私も会長も七条先輩の言葉に疑問を抱かなかった。




シノが会長だったはずなんだがな……信頼度はタカトシが上

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