桜才学園での生活   作:猫林13世

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妥当と言えば妥当


コトミに対する評価

 タカ君がバイトだからコトちゃんのお世話をしに津田家にやってきたのだが、タカ君から私宛に書置きがあった。

 

「何々……『コトミの耳掃除をお願いします』ね」

 

 

 コトちゃんが盛大な聞き間違いをしたことは聞いている。だがその内容は教えてくれなかったし、シノっちも呆れている様子だった。

 

「ただいま」

 

「お帰り、コトちゃん」

 

「あっ、お義姉ちゃん」

 

「早速だけどリビングに来て」

 

「な、何ですか?」

 

 

 身構えるコトちゃんに、私はタカ君からの書置きを見せる。それを見てコトちゃんは気まずそうに私に頭を下げた。

 

「お願いします」

 

「いったい何をしたの?」

 

 

 コトちゃんに事情を説明させると、何時も通りの思春期全開の聞き間違いをしただけだったのだ。

 

「コトちゃんにとっては何時も通りのことだけど、大勢の前でそんなこと言っちゃダメだよ?」

 

「だって、スズ先輩が何時の間に大人の階段上ったのか気になっちゃいまして」

 

「確かに……スズポンに先を越されたと思っちゃいますね」

 

 

 コトちゃんは年下だからそこまで焦らないかもしれないが、私だったら焦ってしまうかもしれない。だって、見た目幼女なスズポンが先に経験したなんて……

 

「驚いて聞いちゃうかもしれないね」

 

「でしょう? それなのにタカ兄とスズ先輩はカミナリを落とすし、シノ会長とアリア先輩はフォローしようとしてくれたけど力不足でしたしで、えらい目に遭いましたよ……」

 

「でも、コトちゃんが悪いんだからね?」

 

「分かってますよぅ……」

 

 

 コトちゃんの耳掃除を終わらせて、私は洗濯物を取り込んだり晩御飯の準備を始めたりと忙しなく動いていると、コトちゃんがノートを持ってこちらにやってきた。

 

「お義姉ちゃん、この問題の意味を教えてください」

 

「えっとそこはね――」

 

 

 自分から宿題をやっているのは進歩なんだけど、相変わらず質問してくる回数は多い。それでも、コトちゃんが成長しているのは確かなので、私はしっかりとコトちゃんに説明をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員会に昨日の津田さんの失言が伝わったのは、私が登校してすぐだった。

 

「またあの子なのね……」

 

「既に津田副会長が注意をしているとのことですので、風紀委員としてはこれ以上深入りすべきではないと思うのですが」

 

「そうね……タカトシ君がお説教を済ませているのなら、こちらから再度注意する必要はないでしょう」

 

 

 私たちが注意しても響かないだろうけども、タカトシ君に怒られればさすがに反省するだろう。言っていて悲しくなるが、コトミさんはそういう感じなのだ。

 

「しかし」

 

「何か?」

 

 

 この件は終わりだと思っていたけど、まだ何か言いたそうな後輩に先を促すと、彼女の興味は私に向けられていた。

 

「五十嵐先輩も津田先輩のことは名前で呼ぶんですよね」

 

「べ、別におかしくはないでしょう?」

 

「津田先輩と親しい人たちは名前で呼んでいるようですし、五十嵐先輩も津田先輩と普通に話せてるので良いんでしょうけども、五十嵐先輩は男性恐怖症じゃないですか。津田先輩だけは大丈夫なんですね」

 

「タカトシ君は私の体質を知っていてちゃんと距離を保ってくれるから」

 

「でも、普通の距離でも逃げませんよね? 畑先輩が写真を見せてくれましたし」

 

「あの人は……」

 

 

 恐らく隠し撮り写真だろう。タカトシ君は気付いてたけどスルーしたのだろうけども、そんな写真を見せ回っているなんて……

 

「ライバルは多そうですけど、頑張ってくださいね」

 

「な、何のライバルよ?」

 

「決まってるじゃないですか。津田先輩の恋人争いのライバルですよ」

 

「わ、我が校は校内恋愛禁止よ!」

 

「外で付き合う分には問題ないんですし、委員長だってそれは理解してますよね?」

 

「それは……」

 

 

 後輩に負けた私は、もし自分がタカトシ君と付き合ったらという妄想をしそうになり、慌てて頭を振って委員会本部から教室に逃げ出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日も遅刻ギリギリで教室に到着すると、マキとトッキーが呆れた視線を私に向けてくる。

 

「きょ、今日は早弁しなくても大丈夫だから」

 

「もしかして、朝ごはん食べてて遅刻しかけたの?」

 

「今日はタカ兄が起こしてくれなかったんだよぅ……」

 

「高校生にもなって誰かに起こしてもらわなきゃ起きられないのは問題じゃね?」

 

「タカ兄みたいなこと言わないで……」

 

 

 トッキーに言われたことはタカ兄にさんざん言われていることだ。私だって自力で起きようと努力しているのだが、目が覚めると何故かアラームが止まっていたりするのだ。

 

「朝練がある日は普通に起きてるのに、どうしてない日は遅刻ギリギリなんだよ」

 

「あれだってタカ兄に起こしてもらってるから遅れてないだけで、自力なら遅刻確定です……」

 

「相変わらず津田先輩に苦労掛けてるのね……昨日の食堂の件も、随分話題になってるし」

 

「あれは……」

 

「まぁ、コトミにとっては通常運転なのかもしれないけど、周りの耳は気にしなさいよね」

 

「マキは付き合い長いから兎も角、普通はドン引きするだろ」

 

「タカ兄とスズ先輩に散々怒られたから、もう言わないで……」

 

 

 ついでに言うのなら、家でお義姉ちゃんにも注意されたので私だって今後は気を付けようと思っている。でも周りの評価を考えるのなら、私ならまたしてもおかしくないと思われちゃうのだろう。

 

「今後はもっとまじめになりたい……」

 

「ならまずは、自力で起きなさいよね」

 

「分かってるって……」

 

 

 マキの言葉にガックリと肩を落とし、私はとぼとぼと席に着いたのだった。




からかわれるカエデ……

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