桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシ相手じゃ物語が終わっちゃうので……


とんでもない耳

 今日は寝坊して朝ごはんを食べ損ねたので早弁をしたため、お昼は学食で済ませることに。お小遣いに限りはあるけども、空腹で授業に身が入らなかったら次のテストでタカ兄に何と言われるか……そう考えたら少しの出費くらい我慢しなければ。

 

「おやコトミ。珍しいな」

 

「あっ会長。アリア先輩にスズ先輩も」

 

「アンタ、またお弁当忘れたの?」

 

「違いますよ~。ただちょっと早弁しただけです」

 

 

 生徒会と合流――当然タカ兄はいない――して私は席に腰を下ろす。マキもトッキーもお弁当だから誘っても付き合ってくれなかったので、一人で食べるつもりだった私にとってはこの三人と会えたのはラッキーだ。

 

「早弁とは……また寝坊したのか?」

 

「タカ兄に起こされた時間が早すぎまして……油断したら寝落ちしてしまいました」

 

「早いって……今日タカトシが学校に来た時間は七時過ぎよ? その時間なら起きてても不思議ではないと思うんだけど」

 

「昨日遅くまでダンジョン探索に勤しんでいまして……なかなかセーブポイントが無かったんですよね」

 

「ゲームしてただけじゃないの……よく怒られなかったわね」

 

「ちゃんと宿題は終わらせてからでしたので」

 

 

 その宿題もお義姉ちゃんに散々質問して漸く終わったのだが、やったことには変わりない。それにタカ兄だって全面禁止していないんだし文句を言われることもなかったのだ。ただセーブポイントがボス前にしかなかったのが予想外過ぎただけで……

 

「それにしても、学食のメニューって結構あるんですね」

 

「コトミちゃんはあまり利用してないもんね」

 

「タカ兄の愛兄弁当がありますから」

 

「何だその表現は……」

 

「だって妻じゃないですし」

 

 

 タカ兄なら嫁にしたい人が大勢いるだろうが、あの兄が主夫として家に留まっているのはもったいないと思う。恐らくどの職種でも成功できるだろうし。

 

「そういえばスズ先輩」

 

「なに?」

 

「さっき何か追加してませんでした?」

 

「あぁ、おしんこをね。お盆の上が寂しい気がして」

 

「そうだったんですか」

 

 

 私はあるだけでも十分なんだけど、料理とかする人は少し寂しく感じるのだろうか? タカ兄なら共感できたのかもしれないが、私には理解できないものだ。

 

「それで萩村。おしんこは美味しいのか?」

 

「はい。ナス漬プラスして正解でした」

 

「えっ!? タネ付けプレスで〇交した!? スズ先輩、何時の間に処女を――」

 

「食事中になんてことを言い出すんだ、お前はっ!」

 

 

 どうやら聞き間違えたようで、スズ先輩からカミナリを落とされた。タカ兄で慣れているとはいえ、スズ先輩のカミナリもなかなかだなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、何故か生徒会室にコトミの気配があり、俺はスズに視線で尋ねる。

 

「食堂での件、保護者であるタカトシにもしっかりと聞いてもらおうと思って」

 

「あぁ、何かスズが激怒したんだって? 柳本から聞いた」

 

 

 詳しい内容は分からないが、いきなりスズが大声でコトミを叱り出したらしいということだけは聞いている。だが放課後まで糸を引く内容だったとは知らなかった。

 

「それでコトミ、お前は何故食堂にいたんだ? 弁当は用意しておいたはずだが」

 

「タカ兄が出かけた後寝落ちしまして……朝ごはんを食べる時間が無く早弁しました……それで食堂でシノ会長たちと会ってそのまま一緒に食事をして、スズ先輩に怒られました」

 

「何故怒られたんだ?」

 

 

 肝心なところを濁したコトミに、俺は逃げられないよう圧を掛けながら質問する。スズに聞けばいいだけの話だが、ここは本人の口から言わせた方が良いだろうしな。

 

「スズ先輩が『ナス漬プラスして正解でした』と言ったのを『タネ付けプレスで〇交した』と聞き間違えまして……それを大声でスズ先輩に確認して、怒られました」

 

「耳掃除をした方が良いんじゃないのか? 普通そんな聞き間違えしないだろ」

 

「だって……」

 

「兎に角、お前は早弁の件で反省文を書いてもらうからそのつもりでな」

 

「まぁまぁタカトシ君、そこまで怒らなくても。コトミちゃんだって反省してるようですし」

 

「駄目ですよ七条先輩。ここは心を鬼にしてコトミの当たらないと。この子はまた同じ失敗を――」

 

「心をお兄に? タカ兄は最初からお兄ちゃんですけど」

 

「また聞き間違えてるぞ!」

 

「痛っ!?」

 

 

 スズの言葉を聞き間違えたコトミは、スズに脛を蹴り上げられ悶絶している。やっぱり耳掃除をした方が良いだろうな……だがこいつが自分で耳掃除をしたら鼓膜を破りかねない……

 

「と、兎に角コトミは早弁の件をしっかり反省するように。食堂での一件は私たちの間だけでのことだということで注意だけで済ませるが、早弁はさすがに見逃せないからな。どうせ授業中にこそこそ食べていたんだろうし」

 

「何故分かった!? って、タカ兄が最初からそう決めつけていましたしね……すみませんでした」

 

「授業に身が入らないから腹を満たそうとしたのは良いが、その所為で授業を疎かにするとはな……やはり家から出て一人で生活するか?」

 

「そんなことしたって成績は良くならないからねっ!? むしろ学校からいなくなるまである」

 

「それが嫌ならもっとしっかりしろ。ゲーム機捨てるぞ」

 

「それだけはご勘弁を!」

 

 

 とりあえずこれだけ脅しておけば、数日は大人しくなるだろう。数日しか続かないのは問題だが、一時でも大人しくなれば多少はマシになるだろう……




全く成長しないコトミ……

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