桜才学園での生活   作:猫林13世

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こんなことしてる高校生、見たこと無いんだが……


解決策は

 最近我が桜才学園の生徒たちの交通マナーが乱れていると報告され、本日は朝から校門側で挨拶運動と交通マナーチェックを兼ねることにした。

 

「こうしてみると、友人と時間を合わせて登校してくる生徒の方が多いんだな」

 

「私は出島さんに送ってもらうことが多いから分からなかったけど、お友達と一緒に登校って楽しそうだよね~」

 

 

 アリアとペアになって活動しているのだが、やはりこういう風景は青春っぽいなと思ってしまう。もしあそこにいるのが私で、隣にいるのがタカトシだったら――などという妄想をしていると、反対側の歩道にいるタカトシから鋭い視線を向けられてしまった。恐らく、私たちが不真面目に活動しているのがバレたのだろう。

 

「もしかして、アリアもか?」

 

「シノちゃんも?」

 

 

 どうやら私だけでなくアリアもタカトシと一緒に登校できたらという妄想をしていたようだ。さすが親友だな。

 

「そういえば、スズちゃんは何回かタカトシ君と一緒に登校したことがあるんだよね」

 

「わざわざ津田家にまで迎えに行って一緒に登校してきたらしいな」

 

「そう考えると、私たち以上にスズちゃんの方がタカトシ君との関係が進展しているのかな?」

 

「どうだろうな。あの二人が一緒に歩いていたとしても、兄妹にしか見られないんじゃないのか? それかコスプレ幼女を連れ回す高校生――みたいな?」

 

 

 いくら萩村が制服を着ていたとしても、一目で高校生だと納得はしてくれないだろう。実際、私たちと一緒のいる時も通りすがりに「コスプレ?」と言われたことが何度もある。

 

「シノちゃん、今度はスズちゃんが怖い顔してこっちを見てるけど」

 

「おっと。さすがに喋り過ぎたな」

 

 

 マナーチェックだけではなく挨拶運動も兼ねているのだ。私たちが挨拶を交わしていないことを見て怒っているのだろう。決して、私たちが萩村の容姿のことを弄っているのがバレたわけではないはずだ。タカトシなら兎も角、萩村ならこの距離で私たちの会話が分かるはずが――

 

「そういえば萩村は読唇術が使えたんだっけか」

 

「スズちゃんが読唇術で、タカトシ君は読心術だもんね~。後輩は優秀だって言われても仕方ないよね」

 

「そもそも普通の人間は唇の動きから何を言っているのかを推察するのも、心を読むこともできないとおもんだがな」

 

 

 前者はやろうとすればできるかもしれないが、後者は普通の人間には無理だ。それを当たり前のようにやっている二人に、私とアリアは改めて優秀だなぁと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員として参加しているのだけども、さっきから生徒会の三年生二人が不真面目に見えて仕方が無い。タカトシ君と萩村さんは真面目にしてくれているのだけども、どうしてあの二人はエンジンがかかるのが遅いんだろう。

 

「天草さん、七条さん」

 

「おぉ、五十嵐」

 

「どうかしたの~?」

 

 

 私が話しかけてきた理由が分からないのか、天草さんも七条さんも首を傾げて問い掛けてきます。

 

「さっきから挨拶をしていない様子でしたので注意をしに。今日は挨拶運動も兼ねているんですから」

 

「分かってるさ。だが、少しくらいお喋りに興じていても構わないんじゃないのか? 今の時間は、あまり生徒たちも見受けられないし」

 

「そういう問題ではありません! ちらほらではありますが生徒は通ってますし、何より天草さんは生徒会長なんですから。もっとしっかりしてくれないと困ります」

 

「わ、悪かったな」

 

 

 私の剣幕に気圧されたのか、天草さんは真面目に運動を再開してくれた。だが再開してすぐに、横断旗が折れてしまったようだ。

 

「どうするか……」

 

「シノちゃん、一緒に使う?」

 

「アリアが私を後ろから抱きしめるのか? 悪いが私にユリ属性は無いんだが」

 

「違うよ~。こうやって端と端を持って」

 

「なる程」

 

 

 何だかおかしな光景ではありますが、ふざけてるとも言い難いので注意し辛いですね……

 

「残念。せっかく『生徒会長と書記は危ない関係!?』という記事を書こうと思ったのに」

 

「畑さん……貴女、何処から現れたんですか?」

 

「普通に最初から。この活動の特集を組むために参加していたんですけど。もしかして風紀委員長には話が伝わっていなかったんですか~?」

 

「そんな報告は受けて――あっ」

 

 

 確か男子風紀委員が何か報告していたんだけども、距離が近すぎてあまり聞いていなかった報告があったわね……もしかして、それが畑さんの取材許可だったのかも。

 

「その体質、早い所改善しないと。さもないと本当に一生しょj――」

 

「取材する許可は出しましたが、カエデさんをからかって遊ぶ許可を出した覚えはないんですが?」

 

「つ、津田副会長……お主、何時の間に背後に……」

 

「普通に移動してきたに決まってるでしょうが。というか、生徒たちも見てるんですから、カエデさんもしっかりしてください」

 

「ご、ゴメンなさい……」

 

 

 私までタカトシ君に怒られてしまった。だがタカトシ君の言う通り、もう生徒たちも結構登校してきているのだ。ふざけている場合ではない。

 

「よしっ!」

 

「おっ、津田副会長に告白する覚悟でも決めたんですかー?」

 

「畑さんもふざけてないで、取材するならしっかりとしてください」

 

 

 からかってきた畑さんをあしらって、私は挨拶運動と交通マナーチェックに戻るのだった。




結局ふざける畑さん……

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