桜才学園での生活   作:猫林13世

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信頼度が高いのはタカトシだな


信用の無さ

 シノちゃんとスズちゃんはお家の事情で先に帰っちゃったけども、生徒会作業はあったので私とタカトシ君の二人で終わらせることになった。もちろん、シノちゃんやスズちゃんの分は家に持ち帰ってやると言っていたのでそれ程多くは無いのだけども、二人きりということで少し緊張しちゃうな。

 

「津田副会長、こちらが報告書になります」

 

「確かにお預かりしました。わざわざ申し訳ありません」

 

「いえ、こちらとしても生徒会には色々とお世話になっていますので」

 

 

 風紀委員からの報告書をタカトシ君が受け取り、今日の業務は終了となる。本来ならカエデちゃんがシノちゃんの手渡すのだが、今日はどちらも不在なので副会長のタカトシ君が、副委員長から報告書を受け取っている。別におかしなことではないと思うのだけども、どちらも男の子と言うのが少し気になった。

 

「(元女子校だけども、こうやって男の子たちも活躍してるんだな~)」

 

 

 タカトシ君ばかり目立っていて、他の男の子たちが働いていないように錯覚しているけども、他の男の子たちもちゃんと働いているって分かれて良かった。じゃないと他の男の子たちは学校におかずを探しに来てるだけって思っちゃうしね。

 

「さて、これを確認して今日の業務は終わりですね。アリア先輩、お疲れ様でした」

 

「タカトシ君も、お疲れさまー。今お茶淹れるね」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

 

 報告書に目を通しながらもしっかりとお礼を言ってくれるタカトシ君に見惚れながらも、私はしっかりとお茶を用意する。何時もなら四人分淹れるのだが、今日は二人分だ。

 

「それにしても、タカトシ君が会長って言われても違和感がない感じになってきちゃったね」

 

「そうですかね? 俺としてみればやっぱりシノ先輩が会長って方がしっくりくるんですが」

 

「シノちゃんも長いからね~。でも、タカトシ君だってシノちゃんの代理としてしっかりと仕事してるんだし、次期生徒会長なんだから、もう少しは自覚を持った方が良いと思うよ?」

 

「そんなものですかね」

 

 

 お茶を啜りながら残ってる報告書に目を通し、タカトシ君は軽く伸びをする。

 

「さて、これで終わりですね」

 

「それじゃあ、私たちも帰ろう――って、あら?」

 

 

 窓の外に目をやると、ぽつぽつと雨が降っている。さっきまでは降りそうだったが降ってなかったのになぁ……

 

「出島さんにお迎えを頼まなくっちゃ」

 

 

 大丈夫だろうと思って傘は持ってきていないので、出島さんに車で迎えに来てもらう。電話を済ませて出島さんが来るまではぼんやりと時間をつぶさなきゃなと思っていたのだけども、そのタイミングで畑さんが生徒会室にやってきた。

 

「津田先生、こちらの確認をお願いします」

 

「その『先生』って呼び方、止めてもらっても良いですかね?」

 

「いえいえ、先生のお陰で私は――新聞部は相当儲かっていますから。感謝の念を込めて先生で」

 

「言い直さなくても儲けてるのが畑さんだけだって知ってますけどね」

 

 

 畑さんが持ってきた来月号の桜才新聞の検閲を済ませたタカトシ君が、ふと窓の外に視線をやる。そのタイミングで出島さんの車が校門前に停車したので、さすがはタカトシ君だなぁって感心してしまった。

 

「校門まで入っていきますか? 折り畳みなので、あまり大きくないですけど」

 

「ありがとー」

 

 

 こういう風に、さらっと言ってくれるからタカトシ君は信用できるんだよね。これがもし他の男の子なら、下心があるんじゃないかって疑っちゃうのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お嬢様をお迎えに上がったのは良いのですが、傘を持っていないのに昇降口からここまでどうやって来るのでしょうか。まさか、濡れてくるつもりじゃないでしょうね。

 

「もしそうだったら……」

 

 

 ビショビショのお嬢様を想像して危うく鼻血を吹き出しそうになりましたが、私の妄想は現実の物とはなりませんでした。何故なら――

 

「出島さーん」

 

「お嬢様! と、津田様」

 

「こんにちは」

 

 

 お嬢様をエスコートしてきた津田様。折り畳み傘なので二人が濡れないようにするには密着するしかない。まさか津田様はこれを狙って――いえ、あり得ませんね。津田様のことですから純粋な善意でお嬢様をエスコートしてくださったのでしょう。

 

「せっかくだし、タカトシ君も乗っていって? 送ってくよ」

 

「いえ、お気持ちだけで」

 

「大丈夫ですよ、津田様。今回は道を間違えたりしませんので」

 

「イマイチ信用できないんだよな……」

 

 

 以前間違えて高速に乗ってしまい、帰宅時間を大幅に遅れさせた前科がある手前強く言い返せませんが、津田様に疑いの目を向けられるだけで絶頂しそうなので善しとしましょう。

 

「タカトシ君は出島さんのことを疑い過ぎだって。大丈夫だから」

 

「はぁ……では、お言葉に甘えさせていただきます」

 

「何だったら、そのまま私に甘えてくれてもいいんだよ?」

 

「やっぱり歩いて帰ります」

 

「冗談だよ~。タカトシ君、冗談に対して真顔で返すのは酷くないかな?」

 

「でしたら、もう少し笑える冗談でお願いしたいですね」

 

 

 普通でしたら巨乳で美人なお嬢様に甘えられるって聞けば飛びつきそうなのですが……むしろ、私が甘えたいくらいです! っとふざけるのはここまでにして、しっかりと津田様をお送りしなければ。




畑さんも出島さんも、ふざけなければ優秀なのに……

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