桜才学園での生活   作:猫林13世

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作ったこと無いな……


カマクラ作り

 補習の監視を終えて生徒会室にやってきたタカトシは、何処か疲れている様子だった。だがそれでも私たちがコトミに勉強を教えているのを見て、申し訳なさそうに頭を下げてくる辺りが真面目なのだろう。

 

「すみません皆さん。我が愚妹がご迷惑を……」

 

「まぁ、私たちも時間を持て余していたからちょうどいい暇つぶしだ。タカトシがそこまで気にすることではないぞ」

 

「そうそう。それに、後輩の面倒を見るのも先輩の務めだしね~」

 

「アンタだって教師の監視なんて、しなくても良いことしてたんだから、これくらい気にしないで」

 

 

 我々三人の言葉に、タカトシはもう一度頭を下げてからお茶の用意をしだす。ここで変に気にしないのも、タカトシの良い所なのだろうな。

 

「とりあえず後は俺が引き継ぎますので、皆さんはお茶でも飲んでゆっくりしてください」

 

「タカ兄、これ以上は無理……」

 

「普通なら後二時間以上は勉強するんだから大丈夫だろ。というか、お前は授業中に違うことを考えたりして集中していないから疲れるんだろ」

 

「お説教は勘弁して……」

 

「ところでタカトシ、横島先生はどうしたんだ? 確か補習が終わったら一緒に生徒会室に来るはずだったんだが」

 

 

 タカトシがコトミに小言を言い出したタイミングで、私は横島先生がこの場にいないことに気が付いた。別にいてもいなくても変わらないんだが、来ると言っていたのに来ないので気になっただけなのだが。

 

「畑さんと一緒に反省文の作成をしていると思いますよ。さすがに給料が懸かっているので、ふざけたりはしないでしょうし監視は無くても大丈夫だと判断して、俺だけ生徒会室に来たんです」

 

「な、なる程な……」

 

 

 どうやらまた余計なことをしたようだと、私たち三人はそれを理解し、タカトシが淹れてくれたお茶でほっと一息つくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業が半分潰れてくれたお陰かどうかは分からないけど、私はいつもより元気に放課後を迎えられた。

 

「そういえば、パリィは補習に参加してなかったね」

 

「英語は母国語だから」

 

「そうだったね」

 

 

 一瞬パリィが羨ましいと思ったけど、国語の授業では泣きそうな顔をしていたからお相子なのかもしれない。まぁ、私も最近は理解するのに時間が掛かって必死こいてるけど……

 

「スズちゃんは良いよね、頭が良くて」

 

「ネネだって昔はできてたでしょ?」

 

「もう追いつけないって」

 

 

 スズちゃんと津田君は相変わらずの頭脳の持ち主だけど、私は機械弄りに励み過ぎて勉強が疎かになっているのだ。理由が分かっているのだから改善すれば良いのではないかとも思うが、それができるのなら苦労しない。

 

「この後どうする?」

 

「せっかく雪が積もってるんだし、何かしようよ」

 

「カマクラ、作ってみたい」

 

「カマクラ?」

 

 

 パリィが目を輝かせているので、私とスズちゃんはカマクラ作りに付き合うことになった。まぁ、部員の半数が登校できなかったから、今日の部活は中止にするしかなかったし、久しぶりに童心に帰るのも悪くはない。

 

「私は大人だから、童心に帰る権利がある!」

 

「スズちゃん、誰も何も言ってないよ?」

 

「幻聴が聞こえた気がして……」

 

「スズもなかなかエキセントリックだよね~」

 

「普段は常識人側なんだけどね~」

 

 

 容姿などの話になるとぶっ飛んだ感じになるのは、それがコンプレックスだからだろう。

 

「それじゃあとりあえずカマクラを作りますか」

 

「スズ、早く手伝って」

 

「えっ、えぇ」

 

 

 パリィに声を掛けられて正気に戻ったスズちゃんも手伝ってくれたお陰で、考えていたより早い時間でカマクラが完成した。

 

「これでカマクラの中でお餅を――」

 

「七輪なんて持ってきてないわよ」

 

「というか、そこまで大きいカマクラじゃないから、お餅は楽しめないかな」

 

「残念……」

 

 

 どうやらそんな意図があったようだと、私とスズちゃんは顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。

 

「まぁ、中に入るだけでもあったかいだろうし、それで勘弁して」

 

「そうだよ~。それじゃあさっそく――ッ!?」

 

 

 完成したカマクラに入ろうとした私は、自分の身体が先に進まないことに気が付く。

 

「ネネ? どうかしたの?」

 

「最近太ったの忘れてた……お腹が引っ掛かって進まない」

 

「えぇ!?」

 

「スズちゃん、パリィ、引っ張って!」

 

「私たちの力で抜けるかどうか……」

 

 

 確かにスズちゃんは容姿相当な力しかないし、パリィもどちらかと言えば非力の部類。二人掛かりでも私の身体を引っこ抜けるかどうか……

 

「何してるんだ?」

 

「その声は津田君! お願い抜いて!」

 

「まさか轟先輩が壁尻プレイを強要!?」

 

「お前は黙ってろ」

 

 

 どうやらコトミちゃんもいるみたいで、愉快な勘違いをしている。まぁ、普段の私ならコトミちゃんの勘違いに乗って盛り上がるんだろうけども、生憎と緊急事態でそれどころではない。

 

「引っ張るから少し我慢してくれ」

 

「お願い」

 

 

 津田君に引っ張ってもらったお陰で、私はカマクラから脱出することができたのだが、私が引っ掛かっていたところから崩落して、カマクラは無残な姿に……

 

「残念……」

 

「タカ兄、作ってあげたら?」

 

「何で俺が……」

 

 

 津田君は文句を言いながらも私たち三人で作ったカマクラより大きいものを、私たちが掛かった時間より短い時間で創り上げたのだった。




タカトシなら造作もないでしょうね

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