桜才学園での生活   作:猫林13世

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半分以上自爆……


大雪の代償

 大雪が降った影響で、電車やバスが遅れている。なので授業は三時間目から開始することに決定したようで、我々は今生徒会室で時間をつぶしている。

 

「まさかこんなに積もるとはな」

 

「私の友達も渋滞で遅れてるみたいです」

 

「スズちゃん、そんなこと言って」

 

「えっ? 何かおかしなこと言いましたか?」

 

 

 七条先輩が急に大声を出したので若干ビックリしたが、私はそこまで驚かれるようなことを言った覚えがないので、そっちの方が気になった。

 

「十代で後れ毛みたいって」

 

「耳掃除でもしたらどうですか? というか、タカトシがいないだけでどうしてそんな難聴になるんですかね?」

 

 

 タカトシは今、私たちのクラスで特別補習をしている横島先生の監視として出払っている。なので生徒会室にはタカトシではなくコトミがいるのだが、この子がいても役に立たないし……

 

「スズ先輩は年上好きなんですか~?」

 

「そんな話は一度もしてないだろうが! というか、アンタもタカトシに特別補習してもらったらどうなの」

 

「せっかく授業がつぶれたって言うのに、タカ兄にしごかれるんじゃ大人しく授業をしてくれた方が良いって思いますけどね」

 

「だがコトミの成績を考えたら、タカトシの特別補習程度ではどうにもならないんじゃないのか? またテスト前に私たちが泊まり込みで教えてやろう」

 

「そんなこと言って、本当はタカ兄と同じ部屋に泊まる権利が欲しいだけですよね?」

 

「そ、ソンナコトナイゾー?」

 

「会長、思いっきり片言になってます」

 

 

 コトミに図星を突かれて、会長は上手くしゃべれなくなってしまったようだ。

 

「ところでスズちゃん、さっきの後れ毛の話だけど」

 

「そんな話は一瞬たりともしていない!」

 

 

 こんなことになるんだったら、私も特別補習に参加すればよかった……もちろん、教わる側でなく教える側として。

 

「せっかくだからコトミ、今ここで勉強を見てあげるわ。さっさと準備しなさい」

 

「何でそんな流れになってるんです!?」

 

「アンタの成績を考えれば、時間を無駄に使ってる余裕なんて無いでしょ! 即席で英語の小テストを作ってあげるから、それを解きなさい」

 

「八つ当たりは止してくださいよ」

 

「だが萩村の言う通りだな。今ここで無意味に時間を浪費させているくらいなら、一つでも多く知識を叩き込んだ方がコトミの――すなわちタカトシの助けになる」

 

「それじゃあ私は科学の小テストを作るね~」

 

「私は古文だな」

 

「何でそんなにやる気なんですかー!」

 

 

 コトミの悲痛な叫び声が響いたが、私たちはそれには取り合わずにコトミを逃がさないよう取り囲み、みっちり勉強を教えることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田に監視されながらの特別補習も終わり、私は津田と二人で生徒会室へと向かうことに。

 

「しかし、何故津田が監視役だったんだ? 補習なんだから私だって真面目にやるというのに……」

 

「それだけ信頼されていないということだと自覚してくれません? 俺だって教師の監視なんてしたくなんですから」

 

 

 呆れているのを隠そうともしない津田の態度に若干興奮しつつも、私は気まずげに視線を逸らす。私の給料の運命は津田に握られていると言っても過言ではないので、ここでふざけると査定に響くのだ。

 

「しかしウチのクラスはほとんどが登校できていたんだな」

 

「補習該当者はそれ程離れた場所に住んでいるわけじゃなかったというだけでは?」

 

「あれだけ補習該当者がいるのも問題だが、参加できなかったヤツにはどうするつもりなんだ?」

 

「先程の補習内容はこちらで纏めておきましたので、先生の方でコピーを取って渡してください。それくらい、できますよね?」

 

「あ、当たり前だ!」

 

 

 不参加だったやつへの対応を怠っていたと判断されたような気がして、私は必要以上に偉ぶって津田からノートを受け取る。こいつは常に先のことを考えていて疲れないのだろうかとも思ったが、そんなことを口にすれば怒られるだけだから黙っておこう。

 

「(横島先生、津田先生に怒られ悦に浸るっと)」

 

「何をしてるんだ、お前は」

 

「新聞部をリニューアルする為に、事実のみを報道しようと思いメモしてました」

 

「私の何処が悦に浸っていた!」

 

「というか、俺は『先生』ではないのですが」

 

「またまた~。津田先生は教師より教師らしいや、エッセイの『先生』として全校生徒に広く知られているではないですか」

 

 

 確かに津田が教えた方が私たちが教えるより身になるという噂もあるし、エッセイは下手な小説家の本より売れると言われているくらいだしな……本当に、何で学生やってるのか不思議な奴だ。

 

「とりあえず、そんな記事は認めないからな! 事実に反する記事を書くと言うのなら、津田の力で新聞部を活動休止にするくらいできるんだからな」

 

「そこでご自身ではなく津田君の名前を出す辺り、横島先生が津田君に負けている証拠ですね」

 

「そんな細かいことはどうでもいいだろ! というか、この学校で津田に勝てる奴がいるのか?」

 

「ちょっと思いつかないですね」

 

「だろ?」

 

 

 畑と盛り上がっていた所為で、私たちは背後の本人がいることを失念していた。だが背後から無視できない殺気を飛ばされ、私たちは同時に振り返る。

 

「どうやら新聞部の活動は休止、横島先生は給料カットしなきゃ分からないようですね」

 

「「それだけは! それだけは平にご容赦を!!」」

 

 

 外は雪が降っていて寒いはずなのに、私と畑は全身から汗が噴き出す事態に……これだから津田に勝てる奴はいないって思うんだよな……




三大問題児ですね

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