受験が終わって暫く、朝食を摂ってるとコトミが困ったようにため息を吐いていた。
「どうかしたのか?」
「最近落ちる夢ばかり見ちゃって……」
「それは夢だろ。気にし過ぎだろ」
コトミでもそんな事を考えるんだな……お気楽に見えて考えるとこはちゃんと考えてるのか。不安だったけどちゃんと成長してるんだな。
「そうだよね! 兄妹で禁断の関係に落ちるなんてありえないよね!」
「あれ? 俺たちなんの話してたんだ?」
受験の話だと思ってたのに、如何やら違ったようだ……さっきの俺の感動を返せ。と言ってもコトミの夢の話を勝手に俺が勘違いしただけだからな……それにしてもコイツホントにそんな事を思ってるのか? 夢ってのは情報の整理で見るものだからな……何で俺を恋愛対象として見てるんだ?
「タカ兄は競争率高そうだからな……そうだタカ兄!」
「な、何だよ?」
「久しぶりに一緒にお風呂入ろうよ!」
「は? 何言ってるのお前」
高校入試する歳にもなって異性の兄弟と一緒に風呂だなんて……本気でコイツの頭の中が心配になって来たぞ……
コトミの事が心配になりながらも、俺たちは登校する事にした。コトミの受験が終わってるとはいえ、今度は俺たちの試験があるからな……前は点数落ちたから元に戻るくらいには頑張らなきゃな……
「おはよう津田……」
「? どうかしたんですか、会長?」
会長の視線を辿ってみると、ズボンのチャックが下がったままだった。
「チャック開いてるなら言ってくださいよ。恥ずかしい」
「え!? 君なりの露出プレイじゃなかったのか?」
「そんな馬鹿な……」
そんな事考えるのなんて会長だけ……
「アリア、チャック開いてるぞ」
「これは、私なりの露出プレイ」
「何気に大胆だな」
「そんなヴァかな!?」
身近に居たんですけど……しかもさっきの話を聞いてたわけでもなさそうなのに、何でそんな思考が出てくるんだろう……
生徒会の仕事で、津田と物置に来たのだけど、高い場所に荷物があって届かないわね……
「あの荷物を取りたいけど届かない……」
「台になるようなものも無いしな……」
「如何する?」
「それなら津田君がスズちゃんを持ち上げれば良いんだよ~」
「七条先輩!?」
何でこんなところに居るんだろう……
「ほら、スズちゃんなら高い高いって感じでおかしく無いでしょ?」
「その抱え方はおかしいな」
「ゴメン、つい出来心で」
「………」
私が七条先輩に鋭い視線を向けると、津田が呆れたように頭を押さえていた。
「しょうがないか……」
そう津田が言うと、凄い跳躍力を見せ荷物を降ろした。あんなに高い場所まで届くなんて、羨ましい身長してるわね……
「って! 誰が小さいって!!」
「「ッ!?」」
「あっ……ゴメンなさい」
自分の思考にイライラして大声を出してしまった……恥ずかしいわね……
「それじゃあ、私は先に戻ってるね~」
「……結局あの人は何しに来たんだ?」
「……さぁ?」
津田と荷物を運んでいくと、物置に携帯を落したのに気付いて取りに戻る事にした。
「えっと……あった!」
良かったすぐに見つかって……そういえば七条先輩の携帯も落ちてるような……
「届けた方が良いわよね」
何しに来たのか分からないけど、携帯がないと困るだろうし……
「あれ、七条先輩?」
何か考え事をしながら歩いてる七条先輩を見つけた。きっと携帯探してるんだろうな……
「あれ? 急に胸が軽くなった」
「前見ろー!!」
「あっ、スズちゃん。私の携帯知らない?」
「それなら見つけました。届けようと思ってたら七条先輩が前から来てこんな事に……」
それにしても何て重量感……羨ましいなんて思って無いけど、もう少し成長しても良いような気もしてるのよね……身長もだけど……
「だから誰がロリ体型だー!!」
「スズちゃん?」
「ごめんなさい……」
自分の思考が嫌になるわね……ストレスでも溜まってるのかしら? でもストレスの原因なんて……
「あ!」
思い当たってしまった……津田の妹のコトミちゃん。あの子の面倒を見てからなんだか思考が黒くなってるような気がするのよね……
「津田の気持ちが少し分かったわ……」
「?」
あんな子の面倒を毎日見て、それでいて成績上位に名を連ねるなんて……どれだけ凄いのよアンタは……
いよいよコトミの合否判定が分かる日になった。俺は付き添いで来たんだけど、何で会長たちまで居るんだ? 生徒会の集まりとか無かったよな?
「私たちも気になってな。コトミとは一緒に寝泊りした仲だし」
「そうだね~。一緒におっぱいをもみ合った仲だもんね~」
「「クソゥ!」」
「?」
会長と萩村の機嫌が急に悪くなったような……でもそこはかとなく地雷臭がするから触れるのは止そう。
「それでコトミの受験番号は?」
「019だよ!」
「19か……」
そういってみんなでコトミの番号を探し始めた。
「イック」
「いくいくいく」
「いくー!」
「静かにしなさい!」
番号まで何てものが当たるんだこの妹は……
「津田、アンタの気持ち、今なら少し分かるわよ」
「やっぱり? 萩村もコトミの勉強を見てから荒んでたような気がしてたから」
今度お詫びに何か奢ろう……
「あったー!」
「ホントか?」
コトミが喜びの声を上げたので、俺も番号を探した。確かに019は合格者の場所に存在する。これであの苦労が報われるな……
「夢じゃないですよね!? ちょっとつねってください」
そういってコトミが前に出ると、会長がコトミをつねった。
「ギュー」
「気持ち良い……」
「酷い現実だ……」
会長は頬では無く乳首をつねり、コトミはそれで快感を感じているような表情を浮かべている……夢だったら嫌だけど、夢だと良いな……
「コトミ、アンタ如何だった?」
「受かったよ!」
「ホント? それじゃあ高校でもよろしくね」
「うん! でも良かったね~。これでまたタカ兄と……ムグゥ」
「アンタ何言い出すの!」
「「「「?」」」」
受験当日に会ったコトミの友達、俺の後輩がいきなりコトミの口を塞いだ。そういえば名前聞いてなかったな……
「なぁコトミ、その子の名前って何だ? もしかしたら聞いた事あるかも知れないから」
「えっとね~……あれ? 何だっけ?」
「
「ああ! そうだったね」
八月一日さんか……珍しい苗字だって騒いでたヤツが居たな……
「津田先輩、来年からまた後輩になりますので、よろしくお願いしますね」
「ああ。よろしく八月一日さん」
「後輩にもモテるのね……」
とりあえずコトミが合格したのは夢では無いらしいので、お母さんとお父さんには良い報告が出来るな。
それほど本編に絡みませんが、一応オリキャラ登場。立場的には中里と同じですかね。