桜才学園での生活   作:猫林13世

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当然と言えば当然


兄妹の力関係

 新学期を目前に控え、我々は生徒会室に集まり今後の予定を確認する事にした。

 

「――といった流れだな」

 

「シノちゃん、そろそろ津田君に会長職を任せる感じになるの?」

 

「そうしたいんだが、何故か受験に焦るシーンがやってこなくてな……」

 

「何を言ってるんですか、貴女は……」

 

 

 だいぶメタいことを言っている自覚はあるが、私やアリアが受験生だと思わせる感じが一切ないのは事実なのだ。もしかしたら、来年の今頃も同じことを言っているのかもしれない。

 

「というわけで、まだしばらくは私が生徒会長をする感じになるだろうから、タカトシも萩村もそのつもりで」

 

「「分かりました」」

 

「では、今日はこのくらいで」

 

 

 顔合わせをする必要など無かったのかもしれないが、学校でしか確認できないこともあったので集まってもらったのだ。決して私がタカトシに会いたかったから招集したというわけではない。

 

「シノちゃん、この後暇~?」

 

「特に予定は無いな」

 

「だったら遊びに行かない?」

 

「そうだな……たまにはいいかもしれないな。だが寄り道は校則違反だ。だから一度帰ってからだな」

 

「その点は問題ありません」

 

「出島さん……何処から現れたんですか、貴女は」

 

 

 突然の出島さんの登場に驚く私と萩村だが、タカトシは気にした様子はない。恐らく潜んでた時から気配で気付いていたんだろうな。

 

「皆さまの着替えは既に用意してありますので」

 

「出島さんに頼んでみんなの服は買ってきてもらってるから安心して~」

 

「確かに、これなら寄り道にはならないかもしれないな……だが、何故私たちのサイズを知っているんだ?」

 

「これくらい造作もないです」

 

 

 何となく受け取りにくい感じだが、時間を無駄にしないという観点から出島さんが用意した服に着替える事に――

 

「何処で着替えればいいんだ?」

 

「ここで着替えれば良いじゃないですか。俺はこのまま帰りますので」

 

「タカトシ君、何か予定が?」

 

「この後バイトなんです。その前に家のことを終わらせてコトミの監視をしなきゃいけないので」

 

「相変わらず忙しそうだな……だが、それなら仕方ないか」

 

「では、失礼します」

 

 

 生徒会室からタカトシが去り、私と萩村は着替える為に出島さんを生徒会室の外へ追いやった。あの人は畑以上の盗撮技術を持っているから、追い出して安心というわけではないのだが、さすがに同じ部屋の中にいられたらおちおちと着替えられない。

 

「というかアリア、何処に行くつもりなんだ?」

 

「七条グループで新しく始めたアトラクション施設に、オープン前だけで入れてもらえることになってるんだ~」

 

「……相変わらずスケールがデカい」

 

「会長、もう気にするだけ無駄ですよ……」

 

「そうだな……」

 

 

 普段忘れがちだが、アリアの家は超が付くほどのお金持ちなのだ。これくらいで驚いていてはきりがないと分かっているのだが、驚かないということはできない。

 

「ん? まさか、また試乗のバイトか?」

 

「最終チェックは既に済んでおりますので、純粋に楽しんでくださいませ」

 

「それならあんし――って、出島さんは外に出ててください!」

 

 

 いつの間にか室内に入ってきていた出島さんを追いやって、私と萩村は急いで着替える事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄がいない間に宿題を終わらせてしまおうと思っていたのだが、いつの間にか部屋の掃除をしていて、気が付いたら掃除をする前より散らかっていた……

 

「――というわけです」

 

「現実逃避をしてる暇があるなら、一つでも多く数式を覚えろと言っておいたはずだが?」

 

「本当に申し訳ございませんでした」

 

 

 タカ兄の前で土下座をするのも慣れてきている自分がいることに気が付き、私はさすがに情けない気持ちになっている。前なら快感を覚えていただろうが、さすがに自分が捨てられる危機という自覚があるのでそんなことを考えている余裕がないのだろう。

 

「とりあえずさっさと部屋を片付けて、宿題を終わらせろ。明日から新学期なんだから、遊んでる余裕なんて無いということはお前が一番分かってなきゃいけないことなんだぞ」

 

「分かっています……タカ兄、片づけを手伝ってください」

 

 

 私一人で片づけようとしても終わらないということは、タカ兄が不在だった午前中で証明できている。なのでタカ兄に掃除の手伝いを頼むしか、終わるビジョンが見えないのだ。

 

「自分でやれと言いたいところだがな……」

 

「不出来な妹で申し訳ない……」

 

「自覚してるだけ成長か……」

 

 

 ぶつぶつと文句を言いながらもタカ兄は凄いスピードで私の部屋を片付けていく。

 

「洗濯物はちゃんとしまえって言ってるだろ」

 

「やろうとは思ってるんだけど、どうしても他のことが気になって後回しになっちゃってるんだよ」

 

「ゲームとかしてる暇があるのにか?」

 

「今後はもう少しゲームの時間を削る所存です……なので、全面禁止だけは……」

 

 

 私の楽しみを取り上げる権限がタカ兄にはあるので、先手を打って何とかしなければならない。兄妹のはずなのに随分と権力に差がある気もするが、これは私が悪いからだ。

 

「……後で義姉さんが来てくれるみたいだから、宿題は義姉さんに見てもらえ」

 

「本当にごめんなさい……」

 

 

 お義姉ちゃんの手間で煩わせる結果になってしまい、私はもう一度深々と頭を下げたのだった。




全面禁止でも良い気がしてきた

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