桜才学園での生活   作:猫林13世

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ありそうでなかったからな


珍しい組み合わせ

 コトミを遊びに誘おうと思っていたのだが、相変わらず宿題を終わらせていないという返事が着たので、私はトッキーと二人で遊びに出かけた。だが出かけた先で天草会長と七条先輩と遭遇し、何故か四人で行動することになってしまった。

 

「トッキーとも八月一日とも、あまり交流する機会が無かったからな」

 

「たまにはこういう付き合いも良いよね~」

 

「そ、そうですね……」

 

 

 何時もなら津田先輩かコトミが間に入ってくれているので緊張することは無かったが――津田先輩の場合、別の理由で緊張していたが――直接この二人の先輩と話すのはかなり緊張する。ふざけている場面ばかり目立っているが、この二人も紛れもなく優秀な先輩たちだから。

 

「トッキーさんもマキちゃんもそんなに緊張しなくてもいいよ~。私もシノちゃんも、もっと気楽に二人と遊びたいだけだから」

 

「そうは言われましても……なぁ?」

 

「ですね……あまり交流の無い先輩たちと一緒に遊ぶとなると、それなりに緊張はしてしまいますよ。ましてお二人は、我が校で知らない人はいないと言われているくらい有名な人ですし」

 

「そうなのか? 私たちよりもタカトシの方が知名度高そうだが」

 

 

 津田先輩は別格だが、天草会長も七条先輩も遠くから見ている分には申し分ない美少女なのだ。男子からだけでなく、女子からも一目置かれていても不思議ではない。だが二人にはその自覚がないようで、互いに顔を見ては首を捻っていた。

 

「生徒会メンバーは有名っすよ。あのちっこい先輩も」

 

「スズちゃんもか~。それなら納得だよ~」

 

「生徒会メンバーの顔が売れているのは良いことだな!」

 

「(まぁ、それ以外の理由もあるんですけどね)」

 

 

 天草会長と七条先輩は、今でこそ落ち着いてきているが、一時期はかなり酷かったらしい。どのくらい酷いかというと、コトミと同レベルで酷かったのだ。もちろん、頭の出来ではなく下発言が……

 

「ところで八月一日よ」

 

「何でしょうか?」

 

「中学時代のタカトシの話をしてくれないか?」

 

「はい?」

 

 

 いきなり何を聞いているんだこの人は、と言った感じで返事をしてしまい、私は慌てて頭を下げる。だが天草会長は気にした様子も無く理由を話してくれた。

 

「私たちは高校に入学してからのタカトシしか知らないからな。以前のタカトシの話なんて、コトミから偶に聞けるくらいだ」

 

「コトミちゃんからだとちょっと脚色されてる感じがするから、マキちゃんならその辺り上手く話せるんじゃないかって思っただけだよ~」

 

「そ、そうですか……でも私だってそこまで津田先輩のことを知っているわけじゃないんですけど」

 

「まったく知らない私たちからすれば、少しでもタカトシの事を知れるチャンスなんだ。だから頼む!」

 

「お願い出来ないかな~?」

 

「ま、まぁそれくらいなら……」

 

 

 二人に懇願されてしまい、私は押し切られる形で津田先輩の中学時代の話をすることに。トッキーは興味なさそうに私たちの会話を聞いていたのだが、何処からか現れた七条家の車にトッキーも押し込まれてしまい、その後二時間は解放してもらえなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あまり詰め込んでも覚えないというので、俺はコトミを連れて買い出しに出かけることにした。本音を言えば三時間程度で弱音を吐くなんてと思っているのだが、見るからに限界のコトミにこれ以上勉強を教えても見に着かないだろうと判断したのだ。

 

「というか、お前が来ても何の戦力にもならないんだが?」

 

「少しくらいは荷物持ちできるよ」

 

「いや、お前に持ってもらう程買う物なんて無いんだが」

 

「そう言わないで……」

 

 

 ストックが無くなっているということもないし、大勢が家に来る予定も無い。両親は相変わらずなので基本的には俺とコトミの二人暮らし。大量の荷物が発生するような買い物など無いのだ。

 

「というか、お前も少しくらいはできるようになろうとか思わないのか?」

 

「そう言われましても……タカ兄のように食材の目利きなんてできないし……」

 

「覚えようとしないの間違いだろ?」

 

「勉強だけで手一杯だよ!」

 

「その勉強も大してしてないだろうが、お前は」

 

「ハイ……」

 

 

 コトミに小言を言いながら必要な食材をカゴに入れていく。あまり長居をして知り合いに会うと面倒だからと思っていたのだが、さすがにスーパーで知り合いに会うということは無さそうだ。

 

「だいたいお前は――」

 

「タカ兄、お説教なら家で聞くから……外で怒るのは止めてください」

 

「……そうだな」

 

 

 ついつい小言を言い続けようとしてしまったことを反省し、俺はさっさと会計を済ませることに。だがレジで思わぬ人と遭遇した。

 

「おや、津田君じゃないか」

 

「古谷先輩、ご無沙汰してます」

 

「相変わらず主夫が似合うねぇ」

 

「主夫ではないんですけどね」

 

「いやいや、妹さんに小言を言っている姿なんて、立派なお母さんだよ」

 

「性別的に不可能なんですが……」

 

「それくらい板についているってことだよ」

 

「嬉しくないですね、それ」

 

 

 古谷先輩と軽く会話をして、スーパーの出入り口で別れた。さすがにコトミも悪乗りしてくることは無かったので、後は帰るだけだ。

 

「帰ったらしっかりと宿題を終わらせろよ」

 

「一日じゃ無理だから!」

 

「それだけ溜め込んだお前が悪い」

 

「分かってるけどさ……」

 

 

 何時までも自立しないコトミに呆れつつ、甘やかしている自分にも問題があるのではないか……そんなことを考えながら家路を進むのだった。




溜め込む気持ちもわかるが……

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