桜才学園での生活   作:猫林13世

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後輩からも心配される始末……


タカトシの気苦労

 コトミとトッキーと三人で出かけているのだが、コトミが何処か心配そうな顔をしているのが気になる。普段なら何も考えていないような感じで遊んでいるのに、何か気掛かりなことでもあるのだろうか。

 

「コトミ、何か心配事?」

 

「へっ? 何で?」

 

「いや、心ここに在らずって感じだし」

 

 

 伊達に中学時代からの付き合いではない。コトミの表情の変化くらい気づけるので、私はそう指摘したのだが、コトミは驚いた様子で私を見てくる。

 

「何?」

 

「マキは私のことよく見てるなーって思っただけ」

 

「コトミは分かり易い方だと思うけど?」

 

「そうかな? まぁ、確かにタカ兄と比べたら分かり易いかもしれないけどさ」

 

「……どうしてそこで津田先輩の名前が出てくるわけ?」

 

 

 何となく自分に都合の悪い話題になりそうな予感がしたが、どうやらコトミに私をからかう意思は無かったようで、素直に事情を話してくれた。

 

「――というわけなんだよね。疲れてるのに嫌そうな顔をしなかったけど、内心は嫌なんじゃないかって思ったり」

 

「まぁ津田先輩なら顔に出さないだろうし、何より普段からコトミの相手をして嫌な顔してないんだから、表情から読み取ろうとしても無理だよ」

 

「まぁ、私も兄貴には世話になってるから分かるけど、あの人は顔には出さないよな」

 

「トッキーまで……」

 

 

 トッキーも津田先輩にはお世話になることが多いので分かっているようだが、あの人は相手に自分の心情を見せないのだ。もちろん、心を許している相手になら見せるのかもしれないが、私たちではそこまでの関係を築けていないので、津田先輩の本音を窺い知ることはできない。

 

「他人の私たちは兎も角、どうしてコトミは分からねぇんだよ?」

 

「そりゃ、コトミが悩みの種だからじゃない? 中学時代から酷かったし」

 

「今は多少なりともマシになってるよ!」

 

「本当に少しでしょう? この間のテストだって、津田先輩がいなかったら赤点だったんでしょう?」

 

「そ、そんなこと無いと思うけど……」

 

 

 急に自信が無くなったような表情になったコトミを見て、私は津田先輩の苦労の一端を見たような気がして、思わずため息を吐いてしまう。

 

「今年はあまり津田先輩に負担を掛けないようにした方が良いんじゃない? トッキーもだけど」

 

「「ハイ……」」

 

 

 自分たちでも分かってはいるようだが、どうしようもないと言いたげな二人を見て私は、今年も津田先輩は大変な思いをするのだろうなと思い、どうにか手伝えないかと頭を悩ませたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 散々遊びたおしたパリィちゃんだったけども、一番気に入ったものはこたつという、何ともダラダラした結果に落ち着いた。ちなみに、私たちもこたつでぬくぬくしながら過ごしている。

 

「これって、タカトシの家である必要あったんですかね?」

 

「確かに、こたつなら私の家でも、萩村の家でもあっただろうしな……」

 

「でも、お正月遊びのおもちゃは無かったんじゃない?」

 

「まぁ、遊ぶ年齢じゃないしな」

 

 

 タカトシ君はまたキッチンで何か作業をしているので、この部屋には私たちだけしかいない。普通なら他人の家でこんなにダラダラなんてできないだろうけども、何回も訪れているとそう言った緊張感は無くなってしまうのだなと、そんなことを考えていると、スズちゃんが私を見詰めていた。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、さっき言っていたことが気になりまして」

 

「さっき?」

 

 

 何の話かと首をかしげていると、スズちゃんがもったいぶらずに教えてくれた。

 

「タカトシを七条グループの総帥にって話です」

 

「あぁ、その話か~」

 

「まさかアリア、本気でタカトシを七条家に迎え入れるつもりじゃないだろうな!?」

 

「私は何時でもOKだけど、タカトシ君にその気がないしね~。もしタカトシ君が本気になったのなら、何時でも迎え入れる準備はできてるんだけど」

 

 

 お父さんにもタカトシ君のことは伝わっているようで、以前本気でタカトシ君のことを調べていたとお母さんから聞いたことがある。だが、調べていた人の方がタカトシ君に見付かって素性を調べられた為、具体的なことはお父さんの耳には入っていないのだが。

 

「アリアが本気でタカトシ攻略に挑んだら、私や萩村など相手にならないだろうな……」

 

「何処を見て言ってる?」

 

「べ、別に他意はないからな? 身体的なスペック以外でも勝てないだろ?」

 

「それは、まぁ……七条先輩はお金持ちですし、強運の持ち主ですし」

 

「そんなことないよ~」

 

 

 謙遜しているとパリィちゃんが興味津々な顔をしているのが目に入り、何が楽しいのだろうと気になってしまった。

 

「パリィちゃん、何がそんなに楽しいの?」

 

「恋バナ! 三人ともタカトシに恋してるんだね!」

 

「そ、そんなにハッキリ言うこと無いだろ!?」

 

「そうだよ~。人に言われると恥ずかしいんだから」

 

「べ、別にタカトシのことなんて何とも想ってないんだから!」

 

「スズはツンデレだね~」

 

「何を騒いでるんですか、貴女たちは……」

 

 

 呆れ顔で部屋に入ってきたタカトシ君に言い訳をしようとしたが、彼が持っているパンケーキに意識を奪われたのが複数名――というか全員。

 

「おやつに作ったのでよかったらどうぞ」

 

「さすがはタカトシだな!」

 

 

 本当に、お嫁さんにしたいくらいの家事力。女として複雑だと思わなくはないけども、今は素直に舌鼓を打とうと思う。




甘いものにつられる面々……

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