桜才学園での生活   作:猫林13世

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タダのデートですね


お返し選び

 七条家でのクリスマスパーティーから二日後、私はタカトシ君とお出かけする為に待ち合わせ場所に向かっている。七条家では天草さんや萩村さんから睨まれたりしましたが、別に疚しいことではないので気にしないでおこうと決めたのですが、どうしても尾行の不安は拭い去れません。

 

「七条さんがあちら側に居ますし、最新技術を駆使して監視されていたりするかもしれませんしね……」

 

 

 あの家は何でもできると噂されているくらい系列会社が多いから、それくらいできて当然な気もします。そうなるとタカトシ君でも気付けない可能性もあるわけで、後で何を言われるか分かりませんね……もちろん、普通にお出かけするだけなので、気にしなくて良いような気もしますが。

 

「えっと待ち合わせはあの場所だから……」

 

 

 待たせたら悪いなってことで、十分前に到着したのだが、タカトシ君の姿は無い。彼の事だから早めに着いてるかもしれないって思ったんだけど……

 

「本当にありがとうございました」

 

「気にしないでください」

 

「ですが!」

 

「結果的に何も盗られなかったんですから、そこまで気にしなくても」

 

「タカトシ君?」

 

 

 私が来た反対側からタカトシ君と、何やら恐縮している女性グループがやってきて、私は何事かと思い声を掛けた。

 

「あぁサクラ。待たせてゴメン」

 

「まだ時間前だけど……それより、この人たちは?」

 

「あぁ、彼女のバッグがひったくられそうになったから、その犯人を追い掛けて取り返しただけ」

 

「本当にありがとうございました! このバッグ、お母さんからもらったもので、大事にしていたので」

 

「中身、大して入ってないもんね~」

 

「それは関係ないでしょ!」

 

「本当に気にしないでください。偶々目について追い掛けただけですから」

 

 

 さらっと言っているが、ひったくりを追い掛けるなんて普通はできないと思うんだよね……自転車か、最悪バイクという可能性だってあるのに。

 

「何かお礼を……」

 

「お気持ちだけで大丈夫ですよ。それに、貴女たちもどこかに出かける予定なのでしょうし、その邪魔はしたくありませんので」

 

「本当にありがとうございました! この御恩は忘れませんので」

 

「は、はぁ……」

 

 

 身を乗り出してお礼を言ってくる女性に、タカトシ君は引き攣った笑みを浮かべているが女性は特に気にせず、もう一度頭を下げて去っていく。

 

「あの人たち、タカトシ君が高校生だって分かってたのかな?」

 

「いや、どうだろう……明らかにあの人たちは社会人っぽかったが……」

 

「というか、やっぱりタカトシ君の方が先に到着してたんだ」

 

「五分くらい前だけどな」

 

「それでさらっと犯人確保しちゃうんだから、タカトシ君って自分がどれだけ凄いか自覚してるの?」

 

「凄い? 俺が?」

 

 

 やっぱり無自覚だったようで、私は苦笑いを浮かべてしまい、タカトシ君に不審がられてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プレゼントのお返しと言っても、俺にそう言った類いの経験は無い。コトミに誕生日プレゼントを買う感覚とは違うということだけは分かっているが、個人に贈り物という経験は皆無に等しい。

 

「何をあげれば良いんだ?」

 

「タカトシ君でも分からないことがあるんだね」

 

「サクラは俺を何だと思ってるんだ……」

 

 

 俺にだって分からないこと、知らないことくらいある。だが何故か周りの人間は俺に聞けば解決するという雰囲気で尋ねてきたりするのだ。

 

「こう言うのは気持ちだから、余程おかしなものじゃない限り大丈夫だよ」

 

「そうなんだが……」

 

 

 ちなみに、俺がサクラからもらったのは黒の長財布。前まで使っていた財布がボロボロだったのをしっかり見ていたようだ。買い替える予定だったが、まさか買ってもらえるとは思っていなかったので嬉しかった。

 

「(そう言うことか……)」

 

 

 相手の事を観察し、相手が欲しいと思っている物を探す。プレゼント選びは相手を喜ばせたいという気持ちなのだろう。

 

「サクラ、ちょっと待っててくれ」

 

「えっ、うん」

 

 

 何を買うかを決め、さすがに本人の前でそれを選ぶ勇気がなかったので別行動を申し出て、俺は目的の物が売っている店へ入り、会計を済ませサクラの許へ戻る。

 

「お待たせ」

 

「五分も待ってないよ。それに、さっきは私が五分タカトシ君を待たせちゃったから、これでお相子ということで」

 

「そうだな」

 

 

 これがコトミだったら何か奢らされていただろうが、サクラはそんなこと言わなかった。まぁ、コトミの方ががめついだけなんだろうが。

 

「それで、何を買ってくれたの?」

 

「大したものじゃないがな」

 

 

 そう言って買ってきたばかりの物をサクラに手渡す。

 

「手袋とマフラー?」

 

「もう持ってるだろうけど、気分で変えるのもありかと思ってな。普通のデザインだから、登校中でも怒られないだろうしな」

 

「ありがとう! 今年、買い替えようか迷ってたんだよね」

 

「なら良かった」

 

 

 流行とか、そういった類いのことは分からなかったが、サクラが喜んでくれているようで一安心だ。

 

「何だか互いに買い替えようとしてたものをプレゼントした感じになっちゃったね」

 

「そうだな。だが俺はサクラが手袋とマフラーを買い替えようと考えてたなんて知らなかった」

 

「私も。愛着があるのかもしれないと思ってたんだけどね」

 

「つまり、互いに知らなかったということか」

 

「だね」

 

 

 何だかおかしい感じになり同時に吹き出す。とりあえずサクラが喜んでくれてよかった。




誰か見てたら発狂案件だな……

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