桜才学園での生活   作:猫林13世

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宅配で良いのかは微妙ですが


夜中の宅配

 パーティーがお開きになり皆さんが部屋に戻っていったので、これからが私の仕事ということですね。まずはしっかりと衣装に着替えて、寝静まったら部屋を訪れて枕元にプレゼントを置く。

 

「そのついでにお嬢様の寝顔を鑑賞して……グフフフフ」

 

 

 普段であればお嬢様の部屋に忍び込むなんて旦那様に怒られる案件だが、今回は合法的にお嬢様の部屋に入ることができる。

 

「あわよくばお嬢様の寝顔を激写して、それで暫く欲求を満たすことも……」

 

 

 ここ最近は畑様からお嬢様の写真を購入できるので盗撮することもなかったのですが、やはり寝顔ともなると畑様でも撮ることが難しい。そもそもこの屋敷に忍び込んだ時点で御用となるので、畑様がお嬢様の寝顔を撮るチャンスは私以上に少ないのですから。

 

「そうと決まれば、まずはお嬢様の部屋から……」

 

 

 全員分のプレゼントが入った袋を担いで廊下を進み、笑い声でバレないようにゆっくり歩いていたら、腰に鈍い衝撃が走った。

 

「ま、まさか……」

 

 

 気のせいだと思いたかったが、身体は正直だ。腰に衝撃が走ってすぐ、私は歩くことができなくなりその場に倒れ込む。

 

「こ、このままではよいこの皆様にプレゼントを配ることが……お嬢様の部屋に合法的に入ることが……お嬢様の寝顔が……」

 

 

 はいつくばってでもプレゼントを配ろうとしていた私の目の前に――

 

「何してるんですか?」

 

「つ、津田様……」

 

 

――私の独り言を聞いて呆れている顔をしている津田様が立っていました。

 

「興奮し過ぎて腰が……」

 

「ぎっくりですか?」

 

「そ、そこまで酷くは無いと思いたいのですが……この現状を見るにそうかもしれません……」

 

 

 まだまだ若いと思っていましたが、こういうのは年齢関係なく突然やって来るものですからね……

 

「ちょっと失礼します」

 

 

 津田様が私の背後に回り込んで、腰の辺りを軽くマッサージしてくれ、私は何とも言えない快感を味わう。

 

「き、気持ちいい……」

 

「応急処置はしましたので、明日――いえ、日付が変わってるので今日ですか。一日大人しくしていれば大事には至らないと思いますよ」

 

「ですが私の仕事はこれからが本番でして……」

 

 

 私の横に置いてある袋に目を向け、津田様は苦笑いを浮かべていました。

 

「それは明日、直接手渡すしかないのでは? この状況では配って歩くなんて無理でしょうし」

 

「せっかくコスプレまでしたのに……」

 

 

 どうにかしてプレゼントを配れないかと考え、私は一つの答えにたどり着いた。

 

「というわけですので津田様、後はお願いいたします」

 

「……俺が皆さんの部屋に配って歩けと?」

 

「津田様にしかお願い出来ないのです」

 

 

 嫌そうな顔をしていた津田様ですが、私が頼み込むと渋々引き受けてくださいました。これでお嬢様たちの喜ぶ顔が見れますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出島さんから任されたプレゼント配りを終わらせる為に、俺は皆さんの部屋を訪ねることになってしまった。

 

「まったく、何でこんなことを……」

 

 

 先にコトミ、広瀬さん、青葉さんへのプレゼントを配り終え、次からは上級生の部屋だ。

 

「と言っても、皆さん寝てない様子ですし……」

 

 

 シノさんは偶々目を覚ました様子だが、義姉さんは部屋におらず、アリアさんは部屋で読書でもしている感じだ。

 

「部屋の前に置いていくのも違うしな……」

 

 

 出島さんの計画に付き合う必要など無いのだが、部屋の前に置いていくのは違うと俺でも分かる。

 

「やれやれ、ここは素直に説明してプレゼントを配っていくか」

 

 

 一番面倒が少なさそうなシノさんの部屋から配っていくことにして、俺はゆっくりとドアを開けて部屋の中に入り――

 

「会長、出島さんからです」

 

「なにっ!?」

 

 

――布団にもぐって変な妄想をしているシノさんに事務的に語り掛けた。

 

「出島さんがプレゼントを用意していたというだけの話ですよ」

 

「だが何故タカトシが配ってるんだ? 出島さんが用意していたのなら彼女が配れば良いじゃないか」

 

「本人はそのつもりだったようですが、プレゼントが重かったのか腰をやってしまいまして……それで俺が押し付けられたというわけです」

 

「そう言うことだったのか……だが何故タカトシは出島さんが腰をやったと知っているんだ?」

 

「あぁ、人の部屋の近くで蹲ってましたから……さすがに気配で分かりますし、あのまま放置しておくのもあれだったんで、部屋まで運びましたから」

 

「で、出島さんをお姫様抱っこしたというのか?」

 

「いえ、橋高さんに頼んで担架を用意して運びました」

 

 

 何か勘違いしているようだったので、俺は事実だけを淡々と告げてシノさんの部屋を後にする。次は義姉さんの部屋だが、あの人は何故俺の部屋にいるんだ?

 

「とりあえずプレゼントだけを置いてアリアさんの部屋に事情を説明しに行くか」

 

 

 どうせろくでもないことを考えていたんであろう義姉さんの事は放置して、俺はアリアさんの部屋へ向かう。出島さんは「出来れば寝顔を……」と言っていたが、隠し撮りなんてするつもりは無いし、そもそも寝ていない人の寝顔なんて撮れるはずもない。俺はそう考えながらアリアさんの部屋の扉をノックした。

 

『どうぞ~』

 

「失礼します。これ、出島さんからのクリスマスプレゼントです」

 

「ありがと~。でも何でタカトシ君が?」

 

 

 この後アリアさんにもシノさんと同じ説明をして「せめてそれっぽくした方が良いよ」と言われ、何故かトナカイの着ぐるみを着ることに……配るのはサンタで、トナカイじゃないと思うんだが……




何時も以上に事務的なタカトシ……

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