桜才学園での生活   作:猫林13世

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本当に畑さんと出島さんは……


隠そうともしない本音

 校内の見回りをしながら、私は七条家で行われているであろう準備のことが気になっていた。本当なら私も手伝った方が良いのだろうが、天草さんたちに「生徒会メンバーだけで大丈夫だ! 我々がいない間、お前には校内の安全を守ってもらいたい」と言われてしまった以上、無理に参加するわけにはいかない。

 

「……あれ? むしろ天草さんたちがいない方が、校内って安全なんじゃ……」

 

 

 校内で起こる問題の内、殆どが生徒会メンバーが絡んでいる案件なので、むしろあの四人――タカトシ君と萩村さんはいても問題ないのだが――がいない方が風紀的にも良いのではないだろうか……

 

「ねぇねぇ」

 

「何ですか、畑さん」

 

「最近はこの程度では驚いてくれませんね~、ちょっと残念です」

 

 

 私の背後からヌッと表れて声を掛けてきた畑さんに鋭い視線を向けるが、あまり効果は無かった。まぁこの人がこの程度で怯むのであれば、校内の風紀はもっと保たれていたであろう。

 

「それで、何の用なんですか?」

 

「七条家で開催されるクリスマスパーティー、私も参加できないかしら?」

 

「何が目的で?」

 

「学友とクリスマスを楽しみたいと――」

 

「貴女がそんな殊勝な考えをするとは思えません」

 

 

 畑さんのことですから、絶対に裏があると決めつけているが、この人を信じて良い思いをした覚えがないので、これは畑さんの自業自得だろう。

 

「ちぇー。本音を言えば、津田副会長が誰かとゴールインするのではないかと思ってまして」

 

「タカトシ君がクリスマスだからって浮かれるとは思えませんけど? むしろ浮かれている天草さんたちを適度に締める役割なんですし」

 

「それは私だって分かってますけど、せっかくの性なる夜に、何もしないとは思えませんので」

 

「聖なる夜だからこそ、大人しくしてるのでは?」

 

 

 畑さんが何を思ってそんなことを言っているのか、私には分からない。だがタカトシ君がクリスマスだからと言って浮かれるなんて絶対にあり得ない。これは私じゃなくても断言するだろう。

 

「それじゃあ潜入するしか――」

 

「会場は七条家の敷地内ですので、不法侵入で退学になりたいのでしたら止めませんけど」

 

「さすがにそれはマズいですね……退学になんてなったら私の収入源が」

 

「問題はそっちなんですか?」

 

 

 タカトシ君のエッセイが掲載されている桜才新聞、それを裏で売りさばいているので畑さんにはかなりの収益があるのは公然の秘密。もちろん、生徒会や風紀委員で取り調べようともしたが、学園公認の裏取引になっているので、私たちは介入できないのだ。

 

「それに、津田先生の多くのファンに刺される未来になりそうですし、今回は大人しくしてます」

 

「そうしてください」

 

 

 タカトシ君のエッセイが読めなくなったとなれば、一部過激なファンが畑さんを目の敵にして襲いかかってくるかもしれない。それくらいタカトシ君のファンは多く、熱心だからこそ過激になるかもしれないのだ。畑さんが思い止まったことに、私も安堵したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕込みも済み、残りはプロの方々に任せることになり、俺はシノさんたちの手伝いをする為に庭に戻る。さすがに暴走してはいないとは思いたいが、あの人たちは一度スイッチが入ると当分切れないから面倒なのだ。

 

「――で、この状況はいったい?」

 

「お嬢様が電飾コードを持って皆様に駆け寄り、足をもつれさせ天草様に縺れ、体勢を崩して萩村様を巻き込み、無理に起き上がろうとした結果皆様にコードが絡みつき、それが何だかエロくて……」

 

「それで出島さんは鼻を押さえている、と」

 

「お嬢様の胸に絡まるコード! 天草様の強調されるように突き出された臀部! 萩村様の破れたストッキングから見える太もも! これで興奮しないわけ無いでしょうが!」

 

「出島さんの趣味はどうでもいいので、さっさと助けてあげてくださいよ」

 

 

 この人は助け出すつもりが無いのだろうかとも思ったが、さすがに主であるアリアさんを放置するはずもない。俺に言われて漸く助けるという考えに至ったようで、絡まるコードを外そうと三人に近づき――

 

「も、もうたまりません!」

 

 

――盛大に鼻血を噴き出して倒れてしまった。

 

「何をしてるんですか、貴女は……」

 

「お嬢様のパンツが見えました」

 

「はぁ……」

 

 

 ため息を一つ吐いて、俺は絡まっているコードを少しずつ解いていく。間違って女性の身体に触ってしまわないように、慎重に解いていると、萩村が何だか足をもぞもぞと動かし始めた。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、ちょっと……」

 

「スズちゃん、もしかしておしっこ?」

 

「デリカシー! 相変わらずデリカシーの欠片も無いですね、七条先輩は!」

 

「幼女の聖水なら、私が喜んで飲ませていただきます!」

 

「変態しかいないのか!」

 

「もう少しだから我慢してくれ」

 

 

 さすがにここでされるのも問題だし、出島さんが飲むとか言うのも大問題なので、俺は気持ち急いでコードを解きにかかる。

 

「できた」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

「結構余裕ですね。本当に限界だと、走ることもできないのに……ちょっと残念です」

 

 

 どうやら本気で飲むつもりだったようで、その場で正座をさせ出島さんに説教することに。俺は何をしにこの家に来たんだか……




誤変換に気付けないのが、森さんと五十嵐さんの差

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