桜才学園での生活   作:猫林13世

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浮かれすぎると昔の癖が……


あり得ない聞き間違い

 七条家でクリスマスパーティーを開催するにあたって、我々はその準備を手伝うことにした。いつも場所を提供してもらって、なおかつ準備まで任せるのはさすがに頼り過ぎではないかと思ったからである。

 

「では皆様にはイルミネーションの準備をお願いします」

 

「そんな、出島さんったら」

 

「シノちゃん、どうかしたの?」

 

 

 出島さんの言葉に私が赤面していると、アリアが不思議そうに私を眺めてくる。

 

「だって、ある日ネションって……」

 

「どういう耳をしてるんですかね?」

 

「す、すまない……楽しみ過ぎてちょっと昔の癖が……」

 

「どんな癖だよ……」

 

「タカトシ様には厨房の手伝いをお願いしたいのですが」

 

「俺なんかが手伝って良いんですか? プロの方がいるのですよね?」

 

「御謙遜を。タカトシ様は今すぐにでもその中でやっていけるだけの実力を有しているではございませんか」

 

 

 出島さんのセリフに、私とアリア、そして萩村が力強く頷く。タカトシはそんなこと無いと思っているようだが、アイツの料理の実力は既にプロ級に達している。七条家で働いている料理人の中でもやっていけると、私たちは思ったのだ。

 

「そんなことは無いと思いますが、問題がないのであれば……というわけで萩村、こっちの三人の監視は頼む」

 

「三人?」

 

「シノさん、アリアさん、そして出島さんの三人」

 

「ちょっと待って!? 私一人でその三人はさばききれないって!?」

 

「おいおい、幾ら浮かれているからと言って、前みたいに暴走したりしないから安心しろ」

 

「そうだよ~。ちょっと楽しみ過ぎちゃうかもしれないけど、ちゃんと準備はするから」

 

「イマイチ安心できないんだよな……」

 

 

 萩村は不安そうに私たちを眺めているが、私たちだって成長しているんだ。何時までも後輩に迷惑を掛けたままではないということを思い知らせてやろう。

 

「ではまず、この電飾をお願いします」

 

「今電源を入れたらシノちゃんに電撃プレイだね」

 

「やるなよ! 絶対にやるなよ?」

 

「それはつまり、電源を入れて欲しいということですね?」

 

「芸人的なノリじゃないからな!?」

 

 

 早くも脱線しかかっている私たちの雰囲気を見て、萩村が盛大にため息を吐いたのはタカトシには内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ君たちのお陰でユウちゃんも赤点回避できたことで、英稜生徒会メンバー全員で七条家で開催されるクリスマスパーティーに参加できることになった。これもすべて、タカ君が後輩の面倒を見てくれたからだろう。

 

「まさか私があんな点数採れるとは思っても見なかったっす」

 

「それ程胸を張れる点数じゃないと思うけど? 赤点は回避できたけど、平均点付近じゃ」

 

「私にしてみたら快挙っすよ。何時も赤点すれすれだったんですから」

 

「それでよく生徒会に入ろうと思ったよね」

 

「会長がスカウトしたんじゃないっすか。高い所の物を取る要員として」

 

「そうだったね」

 

 

 元々ユウちゃんには目を付けていたので、あの時はチャンスだと思ってスカウトしたのだ。まさかあっさりオッケーをもらうとは思っていなかったので、少し拍子抜けな気分を味わったのは内緒だ。

 

「ところで、私たちはお手伝いしなくても良いのでしょうか?」

 

「サクラっちは真面目だね。でもアリアっちが私たちは何も心配しなくて良いって言ってたんだし、ゲストとして振る舞いましょう」

 

「本当に良いのでしょうか……」

 

「あっ、個人的にプレゼントを買うのは構わないからって、出島さんから伝言があったんだった。どうもプレゼントも七条家の方で用意してくれるらしいから、今年は私たちでの交換会は無し」

 

「至れり尽くせりですね」

 

「それで会費千円は、何だか申し訳ない気持ちです」

 

「まぁ、本当は会費なんていらないって言ってたらしいんだけど、それはさすがに厚かましすぎるってシノっちたちがね。だから気持ちだけ出すことになったんだよ」

 

 

 七条家として見れば、お嬢様の友人から金をとるなんてとんでもないとでも言いそうなことだが、こちらとしてもすべて払ってもらうのは気が引ける。その気持ちは理解できたので、もう少し位出しても良いんじゃないかと思ったんだが、それ以上は頑として受け入れてくれなかったのだ。

 

「それにしてもみんなでクリスマスパーティーっすか。何か起こりそうっすね」

 

「タカ君が目覚めて、私たち全員に赤ちゃんを――」

 

「本人がいないからって酷いこと言ってません? 後で報告しても良いんですけど」

 

「それだけは勘弁してください!」

 

 

 私とサクラっちの言い分、タカ君がどちらを信じるかなんて考えるまでも無い。私は義姉だが、サクラっちの方が信用度が高いので、私がどれだけ言い訳したとしても意味は無いだろう。そしてタカ君は、下ネタを嫌っている。それはつまり、長時間お説教コースまっしぐらなのだ。

 

「会長も津田先輩がいないからってぶっ飛び過ぎなんですよ」

 

「でも青葉っち、タカ君だって男の子なんだし、性なる夜に――」

 

「聖なる、ですよね?」

 

「何故私が誤変換したと分かった……」

 

「コトミさんにも影響され過ぎです」

 

 

 サクラっちに睨まれてしまったので、これ以上のボケは自重し、生徒会メンバーで来るクリスマスパーティーまでしっかりと仕事を片付けようと奮起したのだった。




森さんも鍛えられている

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