桜才学園での生活   作:猫林13世

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これで十分と言えるレベルは……


十分な結果

 テスト前最後の平日、私たちはタカトシ君にテスト範囲の質問をする為に教室からタカトシ君を出さないようにしている。本当ならタカトシ君だって予定があるんだろうけども、気軽にタカトシ君の家に行けない私たちは、ここでタカトシ君に質問をするしかないのだ。

 

「――というわけだけど、ちゃんとわかった?」

 

「な、何とか……」

 

「津田君のお陰で、何とか平均点くらいは採れそうだよ」

 

「轟さん、最近めっきり学力が落ちてるよね……」

 

「アハハ、部活が忙しくて……それに、機械に相手してもらう時間も増えちゃってるし」

 

「はぁ……」

 

 

 ネネの反応にタカトシ君が引き攣った顔をしているけど、何か問題がある発言だったのだろうか? ネネはロボ研だし、機械の相手をする時間が増えても仕方ないと思うんだけどな……

 

「それじゃあ、特別講習はこれくらいでお開き。後は各自しっかりと渡したテキストを反芻してしっかりとテストに臨むように」

 

「タカトシ君、本物の先生みたいだね」

 

「津田君なら、人気の先生になれそうだよね」

 

「でもでも、津田君なら作家とかエッセイストとかもむいてると思う」

 

「雑談してる暇があるなら、一つでも多くの単語を覚えたりした方が有意義な時間の使い方では? 補習になっても助けないからな」

 

 

 お喋りで盛り上がりそうになったのを察知したタカトシ君が、厳しい視線を向けながらそう告げると、私たちは蜘蛛の子を散らすように教室から逃げ出した。だって、あの目のタカトシ君は物凄く怒ってる時だって、コトミちゃんから聞いていたから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土日は結局津田家でお世話になり、私はテストに挑んだ。普段ならさっぱりわからなくて半分以上空欄で提出するのだが、今回は全ての教科で七割以上欄を埋めることができた。それでも空欄はあったのだが、私からしてみればこれは快挙だと言える。だって、テスト返却の際に先生から何があったのかと聞かれたくらいだから。

 

「――てな感じで、赤点は無かったっす」

 

「平均六十点か……これじゃあコトちゃんたちにも負けちゃってるかもね」

 

「そりゃコトミたちは津田先輩にみっちりとしごかれてるわけですし。私は自宅学習の時間もありましたので、その差だと思いますよ」

 

 

 ちゃんと家でも勉強しているつもりだったが、どうしても他の誘惑に負けることもある。その点コトミたちはそんな誘惑に乗る余裕すらないくらいの厳しさで教えられているのだ。まして津田先輩以外にも監視者がいるのだから、私以上の点数でも不思議ではないだろう。

 

「これでユウちゃんもクリスマスパーティーに参加できるね。アリアっちに全員参加って連絡しておかなきゃ」

 

「というか、これから私職員室でカンニング疑惑の否定をしなきゃいけないんすけど……会長たちからも説明してくれませんか?」

 

「あぁ……それじゃあサクラっち、ユウちゃんの弁護をお願いね。私と青葉っちで仕事は終わらせておくから」

 

「分かりました」

 

 

 普段三十点行けば上出来の私が、いきなり六十点超えの点数を採れば疑われるのは仕方が無いことだが、せっかく勉強して良い点を採ったのに、カンニングを疑うなんてひどい先生たちっすよね……

 

「失礼します。一年の広瀬ユウです」

 

 

 職員室に入る際にそう宣言して、私を呼び出した担任の許へ向かう。森先輩が付いてきたのが不思議だったのか、私ではなく森先輩に視線を向け、その理由を説明され私のカンニング疑惑は晴れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 義姉さんとサクラからのメッセージで、広瀬さんも無事赤点回避に成功したことを知り、とりあえず安堵した。クラスメイトたちも殆どが補習回避できたので、今回も見当はずれな所を教えていなかったという結果に俺も満足だ。

 

「津田~」

 

「だから言っただろ? 補習になっても助けないって」

 

「そんな~。このままじゃ俺、クリスマスも補習なんだよ」

 

「自業自得だろ? テスト前日まで遊んでたお前が悪い」

 

「遊んでたわけじゃない! ただちょっと誘惑に勝てなかっただけで、勉強するつもりはあったんだ」

 

「まぁまぁ津田君。思春期男子の部屋には誘惑がたくさんあるんだし、少しは同情してあげても良いんじゃないかな?」

 

「それが何かは分からないが、誘惑に乗って勉強を疎かにしたのはソイツなんだ。ソイツが望んだ結果がこのテストなんだから、補習は甘んじて受け入れるべきだろ」

 

「御尤も」

 

 

 柳本のフォローをしようとした轟さんを撃退し、俺はため息交じりで生徒会室へ向かおうとして――

 

「津田ー! このままじゃ私のクリスマスが補習でつぶれてしまう! せっかく男どもを喰い漁ろうと思っていたのに」

 

「教師らしく、健全で安全なクリスマスをお過ごしください。分かってるとは思いますが、男子生徒を襲おうとか思っているのでしたら、来年からこの学園に居場所は無いと思っていてくださいね?」

 

「め、滅相も無い! 立派に補習をする所存であります!」

 

 

 横島先生もついでに撃退して、俺はいよいよため息を連発するまでに呆れてしまっていた。

 

「タカトシ君、大丈夫?」

 

「カエデ先輩……えぇ、ちょっと自分以外のことで疲れまして」

 

「?」

 

 

 事情を説明して納得してもらい、何だか同情されたような感じになってしまった。別に俺が同情されるいわれはないんだがな……




教師からも相談される生徒って……

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