桜才学園での生活   作:猫林13世

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明けましておめでとうございます。そして劇場版公開日ですね


広瀬の初体験

 定期試験の季節が近づいてきて、私とトッキーは心底嫌な気分になっている。主将たちも気にしているみたいだけど、二年生組はタカ兄がテスト対策テキストを作って、分からない箇所をメールなり直接聞いたりで何とかなっているらしいが、私とトッキーはみっちりとしごかれないと身にならないという残念な頭の持ち主なのだ。

 

「――というわけで、テスト期間に入るので部活は明日から休みだ。各自しっかりと勉強して、くれぐれも赤点など採らないように。では解散」

 

 

 大門先生の言葉でお開きとなり、私たちは重い足取りで更衣室に戻る。

 

「はぁ……部活できないのは辛いなー」

 

「ムツミはそんなこと気にしてる場合じゃないでしょ? 津田君からどっさりとテキスト貰ってるんだし」

 

「それはチリもだって同じでしょ? まぁ、私より量が少なかったようにも見えるけどさ」

 

「そりゃ、私はムツミ程理解力低くないから」

 

 

 どうやらムツミ主将のテキストは特別仕様らしく、他の人たちよりも分厚いらしい。まぁ、それくらいしなきゃ主将も赤点回避なんて難しいんだろうな……

 

「ん?」

 

 

 携帯を確認すると、この間知り合った英稜生徒会一年生のユウちゃんから連絡が入っていた。

 

「なになに……ありゃ、それはご愁傷様」

 

「何言ってるんだ?」

 

「今度の勉強会、一人新人が入ることになったんだってさ」

 

「誰?」

 

「英稜の一年生。お義姉ちゃんと同じ生徒会役員なんだけど、私と同じくらい残念な頭の持ち主らしいから、タカ兄にみっちりしごかれることになったんだって」

 

「そりゃ可哀想だな……兄貴が」

 

 

 タカ兄の負担を考えてトッキーがタカ兄に同情しているが、私はユウちゃんに同情したい。お義姉ちゃんに目を付けられたのが運の尽きなのだろうが、厳しい一週間を過ごすことになるなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魚見会長から住所を聞いてやってきたが、本当に私が参加しても良いのだろうか?

 

「えっと……この辺りのはずなんすけど」

 

「待っていたぞ!」

 

「はい?」

 

 

 背後から声を掛けられ、振り返って確認するとそこには――

 

「桜才の生徒会長!」

 

 

――何故か仁王立ちをしている天草会長がいた。隣にはノリノリの七条先輩と、少し恥ずかしそうにしている萩村先輩もいる。

 

「どうして三人がこんなところに?」

 

「タカトシに頼まれてな……広瀬は初めてだから案内して欲しいって」

 

「それなら津田先輩が来てくれればよかったのでは?」

 

「ちょっと騒ぎすぎちゃってね~。それで追い出す口実で広瀬さんのお迎えを命じられたんだ~」

 

「何だか嬉しそうっすね?」

 

 

 普通追い出されたら反省したりするものだと思うのに、七条先輩は何故かにこにこしている。

 

「だってタカトシ君に命令されたんだもん」

 

「あの目はゾクゾクするよな」

 

「何で私まで……」

 

「萩村先輩は追い出されたわけじゃないんすか?」

 

「私はこの二人の見張りよ……」

 

 

 どうやら津田先輩の中では天草先輩や七条先輩より、萩村先輩の方が信用できるようだ。まぁあの会長と仲良しな時点で、天草会長も結構な性格をしているのだろうし。

 

「というわけで連行だ。みっちりと勉強を教えてやるから覚悟しろ」

 

「というか、何故津田先輩の家なんすか? 何処か図書館とかでも良いのでは?」

 

「トッキーは泊まり込みだからな。本当なら広瀬もそうなるはずなのだが、さすがにそれは免除された」

 

「そうだったんすね」

 

 

 泊まり込みで勉強会なんて、ちょっと楽しそうだけども、以前コトミから聞いた話では楽しんでる余裕などないらしいし、免除されたのは嬉しい。

 

「その分厳しく行くから覚悟するんだな」

 

「根性だけはあるんで、よろしくお願いします!」

 

 

 威勢のいい返事をして津田家へと連れていかれる私。この時、どうして何とかなると思ってしまったのか、私はしごかれた後そう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さすがにタカトシ君一人に三人を押し付けるわけにもいかないので、コトミさん、時さん、広瀬さんの面倒は私たちがローテーションを組んで勉強を教えている。

 

「――というわけ。広瀬さん、分かった?」

 

「な、何となく……」

 

「何となくじゃ困るんだけど……」

 

「申し訳ないっす……でも、私の頭ではこれが限界です」

 

 

 既に限界を超えている様子の広瀬さんを見て、私は少し休憩をと提案し、タカトシ君も許可してくれた。

 

「こんなのが後数日も続くなんて考えると、今すぐ逃げ出したい気分ですよ」

 

「逃げて困るのは広瀬さんだよ? このままだと冬休み補習まっしぐらだし、そうなると部活もできないし、会長が言ってたクリスマスパーティーにも参加できなくなっちゃうし」

 

「そうなんすよね~……何で勉強なんてしなきゃいけないんすか?」

 

「学校に通ってるんだから、勉強はしなきゃダメだよ」

 

 

 向こうではコトミさんや時さんも机に突っ伏しているのが見えるので、どうやら今日はこのくらいでお開きのようだ。まぁ、さすがに放課後三時間もみっちり勉強を教えられたら、この三人では限界を迎えてしまうだろう。

 

「広瀬さんは帰るんだよね? じゃあこれは家でやっておいてね」

 

「なんすか、これ?」

 

「今日サクラたちが教えた範囲の復習プリント。ちゃんと確認しておいてね?」

 

「りょ、了解っす……」

 

 

 タカトシ君の威圧感に気圧された広瀬さんは、直立不動で敬礼をして津田家を後にしたのだった。




逆らえない威圧感……

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