桜才学園での生活   作:猫林13世

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浮かれすぎるのもなぁ……


校内の雰囲気

 クリスマスが近いということで、ここ最近校内の風紀が乱れている気がする。具体的には、廊下で男女の距離が近くなっているように見えたり、露骨に女子生徒を見ている男子が見受けられたり、挙句の果てには校舎裏でキスをしていたという目撃報告すら入って来るのだ。

 

「ここ最近見回りの回数が減っていたから、こんなにも風紀が乱れているだなんて……」

 

 

 私も三年生なので勉強などで見回りができなくなる日が出てきているので、その所為で風紀が乱れていると思い、気合いを入れ直して見回りをしようとして――

 

「おっと、すみません」

 

「………」

 

 

――廊下を早足で移動していた男子生徒にぶつかってしまった。

 

「もしもし?」

 

「………」

 

「何だこの女?」

 

 

 どうやら私のことをよく知らない生徒の様で、私の目の前で手を振ったりして反応が無いのを見て、首を傾げながらどこかに行ってしまった。

 

「び、ビックリした……」

 

 

 とりあえず何もされなかった安堵と、未だに治っていない男性恐怖症に不安を覚えながら、見回りを再開する。

 

「おんや~?」

 

「畑さん……今日は何の用ですか?」

 

「別に用はありませんが、今さっき男子生徒にいろいろとされていたようでしたので、具体的に何をされたのか聞きたいですけどね」

 

「ど、何処から見てたんですか!?」

 

 

 声を掛けてきた時は、偶々出会った感じだったのに、何故か畑さんはさっきの出来事を知っていた。別に疚しいことは無いのだけども、何故か焦ってしまい、私は明らかに畑さんの術中にはまっている。

 

「風紀委員長が校内で不順異性交遊とはいただけませんね~? これは珍しく津田副会長のエッセイが無くても校内新聞が注目を浴びるチャンス!」

 

「誤解です! ただぶつかっただけです」

 

「本当ですか~? 嘘を吐くと為になりませんよ~?」

 

「ほんとうです! というか、気を失い掛けて殆ど話せてませんので」

 

「何だ、つまらない……」

 

「つまらなくて結構です」

 

 

 畑さんに娯楽を提供するつもりもないですし、そもそも本当に何もなかったのだから、これ以上何も話すことは無い。私は畑さんと別れて校内を見回りし――

 

「五十嵐! お前、男子生徒と校内でイチャコラしてたって本当なのか!?」

 

「あの人は……」

 

 

――天草さんと鉢合わせして畑さんがいい加減なことを吹聴していると知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逃走を図ったのだが、あっという間に居場所を特定され、私は生徒会室に連行された。

 

「やはり津田副会長から逃げおおせるのは不可能でしたか……」

 

「いや、逃げるなら昇降口を見張ってれば見つけられると誰でも思いますが? まぁ、貴女の場合は別ルートも考えられましたが、あれだけ殺気立っているカエデさんが探し回ってたら、別ルートを考えてる余裕なんて無くなりますよね」

 

「そ、そこまで考えての待ち伏せだったとは……」

 

 

 津田副会長にしては随分と安直な待ち伏せだと思っていたのですが、まさか私の心理状態を考えての待ち伏せだったとは……やはりこの人、ただ者ではないな。

 

「会長、連れてきました」

 

「ご苦労。後は私と五十嵐で訊問しておくから、今日は帰っていいぞ」

 

「分かりました。アリアさんとスズには俺から連絡しておきます」

 

 

 一応津田副会長以外のメンバーも捜索していたようで、この部屋で待ち構えていたのは天草さんのみ。津田副会長が生徒会室から出てすぐに、五十嵐さんが合流し私への訊問が始まる。

 

「まずは、何故このような嘘を吹聴したのか説明をしてもらえますか?」

 

「も、黙秘権を――」

 

「話さないなら一生ここから動けません」

 

「それは困りましたね……」

 

 

 風紀委員長の雰囲気からそれが冗談ではなく本気だと覚り、私は素直に理由を話した。と言っても、少し騒動になれば楽しいかなー、くらいの感覚だったのでこれと言った理由は無いのだが……

 

「――という感じです」

 

「そんな理由で私に嘘を吐いたのか? 態々誤解するようなアングルから写真を撮ってまで?」

 

 

 私が天草さんに見せた写真は、固まっている風紀委員長の前に手を翳す男子生徒の図なのだが、敢えて手は写らない角度で撮った為、男子生徒がキスをしようとしているシーンにも見える構図だったのだ。そして私の嘘が相まって、天草会長は風紀委員長が不順異性交遊をしていると勘違いしたのだが。

 

「今回の件はかなり重い罰が必要のようですね。完全なる愉快犯ですし」

 

「だが私たちが科した罰なんて、畑にダメージがあるとは思えん。かといってタカトシに頼むのも違う気がするし……」

 

「ですが、無罪放免というわけにもいきません。これ以上悪質な悪戯をされたら、ただでさえ乱れている風紀がさらに乱れてしまいますし」

 

「うーん……とりあえず畑は一ヶ月の活動停止だな。それから、今後はタカトシのエッセイ以外は必ず検閲をするから、その時の記事と違うものが発行されていたら、すぐに新聞部は休部、畑の裏帳簿は理事長室でタカトシと理事長に精査してもらおう」

 

「う、裏帳簿なんてありませんよ?」

 

 

 それらしいものは確かにあるが、別に脱税をしているわけではない。ちゃんと学校にも利益の何割かを入れているので、理事長はそこまで目くじらを立てることは無いだろう。そう、理事長は……




あることは確定してますからね

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