桜才学園での生活   作:猫林13世

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痛そう……


ムツミの喰いっぷり

 登校途中で献血をしてきたせいで、今日の部活に参加できなくなってしまった。まぁ、私の血で誰かが助かるのなら、一日運動できないくらいどうってこと無い。

 

「寒くなると裸足はキツイね~」

 

「このくらいの寒さなら平気」

 

 

 一年生たちが道場に入って来るのを眺めていると、トッキーが何時ものようにドジを踏んだ。扉の角に足の小指を強打したのだ。

 

「~~~」

 

「冷えた足にその一撃はキツイよね」

 

「トッキーも私と一緒に見学する?」

 

「見学? というか、主将はどうして見学を?」

 

 

 一年生たちに私が見学している理由を説明すると「主将らしいね」と言われたけど、何で私らしいのだろう?

 

「というわけで、コトミちゃんが掃除している間は私がマネージャー業をするから、必要な時は声を掛けてね」

 

「あんまり動き回るなよ?」

 

 

 チリに釘を刺されたが、何もせずに座っているのも退屈なので、できる限りマネージャー業を頑張ろう。

 

「トッキー、組手の相手して」

 

「あぁ、構わない」

 

 

 みんなが練習してるのに、私だけジッとしてるのはな……こんな思いをするなら献血は帰りにすれば良かったかも……まだやってるのかは分からないけど。

 

「あっ、ゴメン」

 

「平気……少し血が出たくらい」

 

「大丈夫!?」

 

「っ!?」

 

 

 トッキーが受け身を失敗して擦りむいたので、私は救急箱を持ってトッキーに駆け寄ろうとして――

 

「運動するなって言っただろ」

 

 

――駆け出す前にチリに捕まった。

 

「ゴメン、ちょっとトイレ」

 

 

 チリにお説教されている横で一人がトイレへ向かう。この寒さだからトイレに行きたくなっても仕方ないよね。

 

『血が出た』

 

「大丈夫!?」

 

「場所で察しろ」

 

 

 少し過敏になっているのか、チリに冷静なツッコミをされて気付く。こればっかりは女の子にしか分からないけど、私が気にすることじゃなかったのだ……

 

「もう大人しく座ってろ」

 

「そうするよ……」

 

 

 椅子を持ってきて素直に見学する事にしたんだけど、どうしても運動したくて身体がうずうずしてくる。

 

「(でも運動したらまたチリに怒られるし……かといってこのまま大人しくしてるといつ爆発するか分からないし……)」

 

 

 私は根っからの運動好きなので、みんなが練習しているのを見ているだけでは、何時運動したくて我慢出来なくなるか分からない。

 

「(座ったままでもできる運動は……)」

 

 

 あまり激しい運動じゃなければ大丈夫だろうと考えて、私はバレない程度に腰を浮かす。

 

「?」

 

 

 チリが一瞬こっちを見たような気がするけど、この程度ならバレないよね……

 

「おーい! こいつ空気椅子してるぞー!!」

 

「っ!?」

 

 

 何故バレたのか分からないけど、チリが大声を出した所為で部員以外にも聞こえてしまったようだ。

 

「いったい何を騒いでいるのだ? いくら休日とはいえ少しは声のボリュームをだな」

 

「あっ、生徒会の皆さん」

 

 

 さっきコトミちゃんが言っていたように、生徒会メンバーが現れた。生徒会作業を終えたくらい時間が経っている考えると、結構大人しくしていたんだな。

 

「かくかくしかじかで、ちょっと目を離すと運動をしちゃうんですよ」

 

「それは大変だな」

 

「分かった。俺が三葉の事を監視してるから、みんなは部活しててくれ」

 

 

 た、タカトシ君が私のことをずっと見てるってことだよね……それってつまり、私以外の女の子を見ないってことで……

 

「………」

 

「固まって大人しくなった」

 

「タカトシ、私が監視してるからアンタは見回りの続きを」

 

「献血の後ならレバーを食べるといいよ。レバーは鉄分が豊富だからね」

 

「食べ物の話を聞いたらお腹減ってきたなー」

 

「相変わらずね」

 

 

 結局生徒会の皆さんが私の監視をしてくれるようで、タカトシ君はコトミちゃんが掃除した箇所が気になったようで掃除道具を持って道場をせわしなく動いている。

 

「おーい! 大門先生がお昼、焼き肉を奢ってくれるってー」

 

「生徒会も来ていいぞー」

 

「本当ですか! ありがとうございます」

 

「というわけで、一旦部活休止! 大門先生のおごりで焼き肉に行きます」

 

「「「おっー!」」」

 

 

 七条先輩がお肉の話をしてたから、無性にお肉が食べたくなっていたので、この話は凄く嬉しい。それに奢りだし、たくさん食べられる。

 

「すみません、大門先生。俺とコトミの分は出しますので」

 

「気にするな。津田には色々と世話になってるからな」

 

「そんなことは無いと思いますが……」

 

「いやいや、お前がいてくれるだけで、体育の授業に緊張感があるからな。男子生徒が騒ぎだしたり、女子の着替えを覗こうとかしなくなるから」

 

「抑止力として機能している、ということですか」

 

「そう言うことだ」

 

 

 タカトシ君と大門先生が何か話しているけど、今はそれどころではない。

 

「すみませーん! ご飯大盛りお代わりおねがいしまーす!」

 

「「「………」」」

 

「ん? みんな食べないの?」

 

「アンタの喰いっぷりに、私たちの血の気が引いたんだよ……というか、それ何杯目よ?」

 

「えっ……五杯目かな」

 

 

 せっかくの奢りだし、お腹空いていたからこれくらいは普通だよね。でもみんなが苦笑いを浮かべているような気もする……

 

「(まっ、いっか)」

 

 

 今は周りの事を気にするよりもご飯ご飯っと。




食べ過ぎだって……よく入るよな……

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