桜才学園での生活   作:猫林13世

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食べちゃうんですよね……


乙女の心配事

 シノ会長に勉強を教わりながら、私はできなかった小テストを思い出して反省することに……覚えていなかったのだが、問題の殆どは依然タカ兄やお義姉ちゃんに習ったものばかりだったのだ。

 

「(どうして私はこんなにも勉強ができないんだろう……)」

 

 

 先に生まれたタカ兄に殆どの才能を持っていかれたということなのだろうが、それにしてもできなさ過ぎる。自分一人で挑んでいたら、恐らく高校生活におけるテストで、ほぼ百パーセント赤点だっただろう。

 

「コトミ、集中が途切れてるぞ」

 

「すみません、ちょっと考え事をしていまして……」

 

「考え事?」

 

「えぇ……もし私一人で試験に挑んでいたら、そもそも桜才に合格できなかっただろうな、とか」

 

「試験の結果が揮わなかったことを反省するのは良いが、それは後でもできるだろ。今はしっかりと復習して、もう一回同じ問題をやることだけに集中してくれ」

 

「分かってはいるんですけど……」

 

 

 落ち着いて勉強しようと思えば思う程、余計なことを考えてしまう。本当ならタカ兄に彼女がいても不思議ではない状況なのに、彼女がいないのは間違いなく私が原因の一端だろう。私が、タカ兄の時間を奪っているからだろう。

 

「(でも、考えようによっては私がダメだからという理由で家に入り浸ってるわけだし、必ずしも私がタカ兄に恋慕している人たちの邪魔をしているわけではないのか)」

 

 

 それはそれで問題だとは思うが、私をダシにタカ兄の料理を食べたり、ウチに泊ったりしてるのだから、邪魔だけではないはずだ。

 

「コトミ、さっきから文字が曲がっているぞ。集中しなさい」

 

「ゴメンなさい」

 

 

 シノ会長に注意され、私はもう一度気合いを入れ直す。タカ兄の恋愛事情云々は後で考えることにして、今は再テストで合格点を採れるように勉強しなければ。まぁ、再テストといっても、ここでやるだけなんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局コトミが合格点を採るまでに三回かかり、シノさんには夕飯を食べていってもらうことになった。

 

「すみません、会長……まさかこんな時間が掛かるとは思ってませんでした」

 

「コトミの意識が色んなことに向けられていたからだろうな。まぁ、遊びたいとかでは無かったので注意しなかった私も悪かった」

 

「コトミ、ちゃんとシノさんに感謝するんだぞ」

 

「分かってるよ。シノ会長、本当にありがとうございました」

 

 

 義姉さんと一緒に作った料理を食卓に運び、俺たちは四人で夕飯を摂ることに。

 

「そういえばタカ君、この前桜才学園でハロウィンパーティーがあったそうですね」

 

「留学生のパリィを元気づけようと企画したんです」

 

「そこでタカ君がお菓子作りをしたと噂になっているのですが、それは本当ですか?」

 

「園芸部からかぼちゃをもらったので、それでパイを作りましたが……何故噂に?」

 

 

 別に全員に振る舞ったわけではないので、あの場にいた人しか知らないはずなんだが……というか、噂になるようなことでもない気もするんだがな。

 

「タカ君のお菓子は美味しいですから、誰かが生徒会室でタカ君のお菓子が振る舞われていることをしって、嫉妬したのかもしれませんね」

 

「確かにあのパイは美味しかったからな」

 

「シノっちが羨ましいです」

 

「食べたいのなら、ウチで作りますが」

 

 

 あれくらいならそれ程手間もかからないので、義姉さんが食べたいのなら作るんだが……

 

「本当ですか! あっでも、タカ君のお菓子は美味しいので、食べ過ぎてしまう傾向が……」

 

「まさかカナ……」

 

「ち、違いますよ? でも、秋から冬になるわけですし、気を付けておかないと食べ過ぎてしまいますから」

 

「分かる! 分かるぞ、その気持ち! この時期は食べ物がおいしくてついつい食べ過ぎてしまうんだよな」

 

「私も気を付けてるんですけど、毎年ちょっと太っちゃうんですよね~。タカ兄が羨ましいですよ~」

 

 

 三人に視線を向けられ、俺はそんなこと言われてもという気持ちになる。

 

「タカ兄って、体重を気にしたりしてないよね」

 

「適度に運動してるからな。それに食べ過ぎなければいいだけの話だ」

 

「その自制心がないから、私たちは困ってるんだよ」

 

「それは俺の所為じゃないだろ。自制心を鍛えればいいだけの話だ」

 

 

 俺がバッサリ切り捨てると、コトミだけでなく義姉さんとシノさんもガックリと肩を落とす。

 

「自制心を鍛えようにも、美味しそうな食べ物を見たら食べたくなるでしょう?」

 

「なら食べた分運動すればいいだけじゃないか?」

 

「それができたら苦労しないって」

 

「タカ君は乙女心が理解できていないようですね」

 

「タカトシの数少ない欠点だな」

 

「酷い言われようだ……」

 

 

 さっきから体重の話をしているのに、三人の箸は止まることなく料理に伸ばされている。作った手前食べてくれるのはありがたいのだが、気を付けるという話は何処に行ったのやら……

 

「ご馳走様でした」

 

「タカ君、もう良いの?」

 

「もういいって、結構食べた方ですけど」

 

 

 俺のこの発言で、三人の手が止まる。無意識で食べていたようで、自分が食べた量を思い出して頭を抱えているのだが、この年頃なら多少食べ過ぎても問題ないと思うんだがな……まぁ、それを言うとまた何か言われそうなので言わないが。




最近は自制できるようになりましたが、若いうちは……

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