桜才学園での生活   作:猫林13世

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盛り上がりたいだけな気も……


ホームシック

 生徒会室である程度作業を終わらせたので、校内の見回りに行くことに。普段なら分かれて見回りするのだが、今日は全員で行動する事にした。

 

「全員で見回りと言うのも久しぶりだな」

 

「最近は二人組で行動してたもんね~」

 

 

 誰がタカトシと組むかで毎回熱いじゃんけん勝負が繰り広げられているのだが、今日は三人でタカトシを囲おうということで話がまとまっているのだ。

 

「あっ、パリィだ」

 

 

 萩村が先に角を曲がりパリィを発見。私とアリアも確認するように角に隠れながらパリィの姿を確認する。

 

「何だか哀愁が漂ってる気がする」

 

「パリィにもいろいろと悩みがあるのかもしれないな」

 

 

 交換留学生として桜才に通っている彼女だ。いろいろと悩みがあっても不思議ではない。

 

「悩みか~。シノちゃん、例えばどんな悩みだと思う?」

 

「そうだな……ホームシックかもしれないな」

 

「ホームシックか……」

 

「故郷に想いを寄せているのだろう。家族や友人、そして恋人」

 

「恋人なんていないよ~」

 

 

 私たちの声が聞こえていたのか、パリィが少し楽しそうな表情で振り返る。そう言えば、恋愛話が好きだったな……

 

「最近元気が無さそうだったからな。何か悩みがあったら我々に相談してくれ!」

 

「ありがと~。でもネネが言ってたけど、シノやアリアより、タカトシの方が解決策を授けてくれそうだって」

 

「それは否定できん……」

 

「実際タカトシ君の方が生徒会長っぽいとか言われてたもんね~」

 

「ここ最近は私だって真面目に生徒会長やっているというのに」

 

 

 タカトシの方が会長っぽいのは私だって思ったことはあるが、実際の生徒会長はこの私だ。畑のヤツが何処でそんな噂を仕入れてきたのかは分からないが、誰が何と言おうと生徒会長は私だ。

 

「とりあえず大丈夫だから、シノたちは見回りを続けていいよ~。まぁ、タカトシが既に終わらせてるようだけど」

 

「なにっ!?」

 

「あらあら~」

 

「いつの間に……」

 

 

 パリィに言われて気付いたが、タカトシが窓から見える廊下にいる。私たちがパリィと話している間に見回りを終えたということだろう……

 

「これではまたどっちが生徒会長だか分からないとか言われそうだ……」

 

「今回に関していえば、私たちも同罪ですから……」

 

「そもそもタカトシ君なら、見回りしなくても異常があれば気配で分かるだろうけどね~」

 

 

 アリアの一言に私と萩村はガックリと肩を落としながら、とりあえず生徒会室に戻る事にした。

 

「タカトシ、すまなかったな」

 

「いえ、女子は話が長いと義姉さんが言っていましたし、生徒の悩みを聞くのも会長の仕事ですから、見回りは俺一人がやっておいただけです」

 

「す、すまない……」

 

 

 何だかフォローされたのがいたたまれなくなり、もう一度謝ってからタカトシにもパリィの事を相談することに。

 

「なる程、ホームシックですか」

 

「こればっかりは私たちにも気持ちは分からないからな……どうすれば解決すると思う?」

 

「故郷を思わせる行事でもあればいいのでしょうが」

 

「故郷か……」

 

 

 タカトシに言われて、私は何かおあつらえ向きな行事が無いか思考を巡らせ、時期的にちょうどな行事を見つけた。

 

「ハロウィンはどうだ?」

 

「ハロウィンですか?」

 

「あぁ。ハロウィンはアメリカが本場だからな」

 

「発祥はアイルランドですけど、盛んなのは確かにアメリカですね」

 

「故郷の行事を楽しめばパリィも――」

 

 

 そこまで言って、私はもう一つの可能性に気付いてしまう。

 

「ますますホームシックになったらどうしよう」

 

「そこは前向きに考えましょう」

 

 

 こうして急遽開催されることになったハロウィンパーティーを成功させる為に、タカトシや萩村が関係各所に交渉して放課後に開かれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パリィには内緒だが、放課後ハロウィンパーティーを行う。その為にまずはお菓子作りだ。

 

「料理部が協力してくれることになりました」

 

「なる程。かぼちゃを使ったお菓子を作るんだな」

 

「お化けの方はタカトシたちが準備してくれるそうです」

 

「……タカトシがこっちにいた方が戦力になったんじゃないか?」

 

「何で私を見ながら言うんですか~?」

 

 

 会長の視線の先にはコトミが……確かにコトミがこちらにいてもあまり戦力にはならない――というか、むしろいない方が作業がはかどりそうな気もする。

 

「まぁ、このままお菓子作りをしっかりして、そのままハロウィンパーティーに移行するという寸法だ」

 

「サプライズパーティーだね」

 

 

 七条先輩が意気込んだところで、パリィがその言葉に反応してしまった。

 

「サプライズパーティー?」

 

「あっ、いや……」

 

 

 さすがに誤魔化せないかな、と思っていたが――

 

「サプライズパンティーって言ったの!」

 

「何言って――えぇぇぇぇ!?」

 

「アリア、随分と積極的」

 

「くっ、カメラがあれば……」

 

「タカトシがいないからって暴走すんなー!」

 

 

 パリィの興味を逸らすことには成功したみたいだけど、この空気どうするんだ……

 

「と、とりあえず料理部の指示に従おう」

 

「そうだね~」

 

「先が思いやられる……」

 

「スズ先輩、頑張ってくださいね」

 

 

 ホント、何でタカトシじゃなくてコトミがここにいるのかしら……




スズの負担が……

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