桜才学園での生活   作:猫林13世

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これ以上信頼できる人はいないでしょう


タカトシの信頼度

 合コンの練習をした翌日、私はタカ君の家でコトちゃんに勉強を教えていた。

 

「お義姉ちゃん、昨日タカ兄たちと合コンしてたんですよね? どうだった?」

 

「特別なことは何もなかったよ。そもそもタカ君以外女子だったから、カップル成立なんてあり得ないことだし」

 

「タカ兄が誰かをお持ち帰りするわけ無いですしね~」

 

 

 女子七・男子一の構図でも興奮する素振りすらなく淡々と過ごしていたタカ君を思い出して、ちょっと複雑な思いがよみがえる。

 

「というか、タカ君って異性に興味があるのでしょうか?」

 

「あるんじゃないですか? タカ兄だって高校生男子ですから、それなりに異性を気にしたりはするでしょう。でも、それよりも先にツッコミが出てしまうので、異性というよりボケとしか見ていないのかもしれませんね」

 

「ありえそうですね……」

 

 

 タカ君が私たちをどのように見ているのかは、コトちゃんが言っている通りだろうと私も思っている。異性としてよりもボケる人、作業の邪魔をする人など思われているのだろう……

 

「実際問題として、タカ兄が恋人を作っちゃったら、私はもうタカ兄に構ってもらえないでしょうから、もう暫くは恋人など作らずにいて欲しいんですが」

 

「コトちゃんがいなかったら、タカ君だって年相応に恋人が欲しいとか思ってたかもね」

 

「それはどうでしょうね……昔からタカ兄はモテてましたけども、告白されたって話はあまり聞きませんし」

 

 

 コトちゃんの話では、中学時代でもタカ君はかなりモテており、コトちゃんの存在を知らない相手ですらタカ君に告白したのは稀であったらしい。

 

「それだけ高嶺の花扱いされているのでしょうね」

 

「まぁ、タカ兄と付き合おうとするのなら、それなりのスペックが要求されるでしょうから、一般モブでは付き合えないでしょうし」

 

「コトちゃんは何を言っているの?」

 

 

 色々とツッコミたい感じはするけども、深く聞いちゃいけないような気がするので、この話題はここで終わりにすることに。

 

「というか、私の興味を逸らして勉強をしないようにしてるけど、その分タカ君が厳しく教えることになるよ?」

 

「そ、そんな意図はございません……」

 

 

 どうやらそのつもりだったようで、コトちゃんは慌てて勉強に取り組む姿勢を見せる。

 

「(コトちゃんのお陰でタカ君に彼女がいないのは、私たちにとってはありがたいことなのですが、それをコトちゃんに言えば調子に乗りそうですし、何よりタカ君が良い顔をしないでしょうから黙っていましょう)」

 

 

 内心でそんなことを考えながら、私はコトちゃんの勉強を見ることに集中するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員の見回りを終え教室に戻ろうとしたら――

 

「ちょっと良いでしょうか?」

 

 

――背後から畑さんに声を掛けられた。振り返った私を見て少しつまらなそうな表情を見せたのは、恐らく私が大して反応しなかったからだろう。

 

「それで、今日は何をしでかしたんですか?」

 

「私が悪事を働いたことを前提で話をしないでもらいたいのですが」

 

「そう思われたくないのでしたら、日ごろの行いを改めてください。貴女は風紀委員からすれば要注意人物なわけですから」

 

「そんなですかー?」

 

「自覚していないのですか?」

 

 

 タカトシ君のような威圧感は無理でも、少しでも釘を刺しておきたいのでニッコリと笑いながら詰め寄る。

 

「ぜ、善処します」

 

「お願いしますね」

 

 

 とりあえず畑さんに反省を促すことに成功したので、私は畑さんの用事を聞くことに。

 

「それで、何の用なんです?」

 

「先日、桜才学園生徒会四名と英稜高校生徒会の四名でカラオケへ行っていたようなのですが」

 

「交流会の延長だったのでは?」

 

 

 ウチの生徒会と英稜の生徒会は結構仲が良い。会長同士が意気投合しての付き合いらしいのだが、それ以外にも各々が仲良くしているようで、そう言ったイベントも頻繁に行っていると聞いている。

 

「狭い部屋に女子七人に対して男子が一人。何も無かったと思いますか?」

 

「その男子ってタカトシ君ですよね? だったら何もありませんよ。彼はそこらへんの男子とは違いますし」

 

「そう思いたいだけなのでは? 津田副会長だって高校生男子。襲っても抵抗しない女子が側に居たら理性の箍が外れても――」

 

「俺がどうかしました?」

 

「な、何でもありません。では!」

 

 

 タイミングよく表れたタカトシ君の表情に怯えた畑さんがすさまじいスピードでこの場から去っていく。

 

「畑さん、廊下を走っては――」

 

「もう聞こえないでしょう」

 

「はぁ……後で新聞部に行って注意しておかないと」

 

「それで、何の話をしてたんです?」

 

 

 自分の名前が出てきたので興味があるのか、タカトシ君がそう尋ねてくる。

 

「ウチと英稜の生徒会で出かけてたのを目撃したが、どう思うかと聞かれてました」

 

「あぁ、合コンの練習の時ですか」

 

「合コンの練習……ですか?」

 

 

 何故そのようなことをする必要があるのか分からなかったので素直に尋ねると、タカトシ君は開催された理由を丁寧に教えてくれ、途中疲れ切ったような雰囲気を醸し出した。恐らく大変だったのだろうと思い、私は「お疲れ様」と心の中でタカトシ君を労ったのだった。




畑さんは何処で情報を仕入れてくるのか……

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