ユウちゃんが男女バレー部で行われる合コンの予習をしたい――という態でただタカ君と遊びたいという理由で、私たち英稜生徒会と桜才生徒会とで合コンを開催することになった。
「今日はよろしくな!」
「こちらこそ、ウチのユウちゃんの為に集まってくれてありがとう」
「どうもっす」
事情を知らない人が見たらタカ君がとんだハーレム野郎に見えるかもしれないが、このメンバーでのタカ君のポジションはどちらかと言えば保護者ポジだ。私たちが暴走し過ぎないように見張ってくれていると表現するのが適当だろう。
「それじゃあ早速会場に行きましょうか」
「会場って、このカラオケ店じゃないんですか?」
「サクラっち、そこは雰囲気を楽しまないと」
せっかくノリノリで宣言したのに、サクラっちに水を差された気分です。まぁ、実際このカラオケ店でやるので、サクラっちの言うことは正しいんだけども……
「それにしても合コンなんて初めてだな~。お見合いなら未遂だけどあったけど」
「さすが七条さん……普通の女子高生はお見合いなんて早々ありませんよ」
「そういえば私も、親戚の集まりの後にお見合いさせられそうになったっけ」
「そんなこともありましたね」
あの時はタカ君が潰してくれたから何とかなったけども、もしかしたら今頃私は年上の旦那様に肉人形の如く使われていたのかもしれないと考えると……
「タカ君、あの時はありがとうね」
「はぁ……」
気のない返事の原因は、恐らく私が考えていたことを見抜いているからだろう。タカ君だからこそできる技で、他の人は――特に一年生二人は何故タカ君がそんな返事をしたのか首をかしげている。
「というか、早く入りましょうよ。店の前で立ち止まっているから、店員さんが不審がってますし」
「そうだね。このままだとタカ君が幼女誘拐の疑惑を掛けられちゃうかもしれないし」
「誰が幼女だ!」
「私は別に、スズポンを指して『幼女』と言ったわけじゃないんですが? それとも、自分が言われているという自覚があったと?」
「グッ……」
「義姉さんも遊んでないで協力してくださいよ。というか、こういうのって主催者側が進めるんじゃないんですかね?」
タカ君が手際よく受付を済ませてくれていたようで、私たちはタカ君に先導されるように部屋へと向かう。後ろからスズポンの鋭い視線が飛んでくるけども、とりあえずは気付かないフリを続けておきましょう。
カナから誘われて特に考えずに引き受けたが、実際合コンをするにあたって、私たちにはその知識が無かったことに今更気が付いた。
「とりあえず乾杯しておくか」
各々のジュースを手に、我々八人は乾杯を済ませた。だが、そこから一向に進まない……
「合コンってまず何をするんだ?」
「そういう時は青葉っち」
「合コンは最初に自己紹介をするそうですよ」
「ほぅ」
青葉が何故合コンの知識に富んでいるのかは分からないが、とりあえず情報は手に入った。だがこの面子で今更自己紹介をしてもな……
「改めて何を言えば良いんだ?」
「趣味とか血液型とか?」
「スリーサイズとか」
「初体験の年齢とか」
「そりゃ〇Vの自己紹介だろっ!」
「何故スズちゃんがそのことを知ってるの~?」
「グラビアアイドルのイメージビデオかもしれないだろ? 何故〇Vだと決めつけたんだ~?」
「先輩方、スズをからかって遊んでいるのでしたら俺は帰らせてもらいますが」
「私も、帰りたいんですけど」
「「す、すみませんでした」」
タカトシと森に睨まれて、私とカナは慌てて謝罪をし、アリアも萩村に頭を下げた。この面子でタカトシと森に帰られたら、いろいろとヤバいからな。
「せっかくカラオケに来てるんですから、歌いましょうよ」
「じゃあ一番手はユウちゃんが」
特に考えていないようだが、広瀬の助け舟のお陰で二人の意識は私たちから逸れてくれたようだ。
「そういえば、マイクの持ち方でその人の性格が出るんだよね」
広瀬が熱唱している横で、カナがそう話しかけてきた。ここでタカトシではなく私に話しかけてきたのは、恐らく深い意味は無いのだろう。
「ああやってちょい持ちする人は自信家なんだって」
「そうなのか」
カナの解説に感心していると――
「変わった持ち方だね」
「私汗っかきで。濡らさないように……」
――広瀬が持ち方の理由を萩村に説明した。
「やっぱ違うかも」
「次、七条さんどうぞ」
広瀬がアリアにマイクを渡す。アリアはマイクを受け取り歌い始めた。
「あの持ち方は私も知ってるぞ。小指を立てる人は、甘えん坊タイプだ」
「うんうん」
カナと二人でマイク診断の続きをしていると――
「七条さん、可愛い持ち方しますね」
「実はさっきお尻の穴がかゆくて……小指でちょっと、ね。だから汚さないように」
「我々の考えが甘かったようだ……」
「というか、さすがはアリアっちと言った感じでしょうか……」
さすがの我々もアリアが小指で穴を弄ったなど考えなかったので、二人でしみじみと話していたのだが、隣からタカトシが呆れているのを隠そうともしない視線をアリアに向けているのを感じ、私たちも気を付けようと心に決めたのだった。
呆れられるのは当然