桜才学園での生活   作:猫林13世

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シノ、隠せてないから……


演習相手

 会長がレギュレーション違反ギリギリの判断方法で答えた相手を特定するということが数回続いたので、十円ゲームはお開きになった。

 

「それ以外だと『合コンさしすせそ』と言うものがあるそうです」

 

「合コンさしすせそ?」

 

 

 どうして青葉さんが合コンに詳しいのかはさておき、説明を受けなければそれが何なのか分からないので、そこのツッコミは流して青葉さんに先を促す。

 

「例えばさなら、さすが~と言った感じで、しは知らなかった。すはすごーい! で、せはセンスある~。そしてそはそ~なんだ~と言った風に、相手を立てる手段です。やり過ぎは逆効果とも言われているので、ほどほどに使うと上手く相手を気持ちよくさせられるそうです」

 

「へー」

 

 

 確かにやり過ぎたら不快に思われそうだけども、盛り上げるにはちょうどいい感じの言葉たちだ。でも私が言っても棒読みになりそうだし、余り効果は無さそうだな……

 

「(まぁ、合コンなんてやらないだろうけども)」

 

「せっかくだから新しいさしすせそを考えた」

 

「えっ?」

 

 

 何だか嫌な予感しかしないが、一応聞くことに。

 

「さ『サービスしてあげる』、し『シコシコ』、す『スーっ』(バキューム音)、せ『前立腺マッサージ』、そ『粗〇ン野郎!!』ってのはどうかな?」

 

「一つも許容できない」

 

 

 やっぱり会長はろくでもないことしか考えていなかった……というか、何で聞いちゃったんだろう。

 

「駄目? 結構使えると思うんだけど」

 

「何時何処で使うつもりなんですか!」

 

「うーん……あっ、タカ君は粗〇ンじゃないから使えないか」

 

「それ以外も使えるかぁ!! というか、タカトシ君がそんな誘いに乗ると思ってるんですか?」

 

 

 こんな説得の仕方は不本意だが、私ではそれ以外に会長を止める手段が思い付かなかったので、タカトシ君の名前を借りた。

 

「確かに……じゃあ、これは没だね」

 

 

 何だか納得はいかないけど、とりあえず会長が諦めてくれたので善しとしよう……

 

「(ゴメンなさい、タカトシ君)」

 

 

 心の中でタカトシ君に謝罪をして、私は自分の不甲斐なさをかみしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後もいろいろと合コンっぽいことを体験した私たちは、今や合コンマスターと言えるかもしれない。

 

「(何だか思考がコトちゃんっぽくなってきたような気も……)」

 

 

 元々そういう感じは好きだったけども、コトちゃんと一緒にいることが増えたから影響を受けているのだろう。

 

「広瀬さん、これで合コンは大丈夫そうかな?」

 

「んー……」

 

 

 なんとも歯切れが悪い返事に、私とサクラっちは顔を見合わせる。

 

「何か不安なことでも?」

 

「私、物覚えが悪くて……忘れそうっす。カラダで覚えるのは得意なんすけど」

 

「フム」

 

 

 ここはもう少し先輩として手助けをしてあげなくてはいけないようだ。私は携帯を取り出してサクラっちに宣言する。

 

「つまり、予行演習が必要ってことだね」

 

「へ」

 

 

 私の提案が予想外だったのが、サクラっちは間の抜けた声を出す。まぁ、実際男子を四人集めるなんて難しいので、ここは友人に助けてもらおう。

 

「――というわけで、英稜生徒会と桜才生徒会で合コンしましょう」

 

『しかし、八人中七人が女子なんだが?』

 

「大丈夫。私たちは両刀遣いって設定でやるから」

 

『そっかー、なら大丈夫だな』

 

「全員タカ君狙いになっちゃう感じになるのは、シノっち的にも嫌でしょ?」

 

『な、な、な……何で私にそんなことを言うんだ?』

 

「だって少なくとも、そちらの三人とこちらの二人はタカ君狙いになるでしょうし、青葉っちやユウちゃんもタカ君のことは認めてますから」

 

 

 後輩二人の場合は、異性としてというより先輩として認めてる感じだけども、それをシノっちに言う必要は無い。

 

『兎に角、後輩の為なら仕方が無い。時間とかは追々連絡してくれ』

 

「分かりました。それではまた」

 

 

 シノっちに約束を取り付けて、私は満面の笑みで振り返った。

 

「そういうわけで、桜才学園生徒会の皆さんが練習相手になってくれるから、今度の日曜日は模擬合コンと行きましょう」

 

「いろいろとツッコミたい事がありましたが、練習相手に桜才学園を選んだ理由をお聞かせください」

 

「だって、男子生徒を四人捕まえてくるより、桜才生徒会にお願いした方が早いでしょう? それに、見知った相手なら緊張することもないし、さっき私が言ったようなことも起こらないだろうし」

 

「別にそこは心配してませんけど、確かに見知った相手の方が気楽に練習できそうですが……先程の設定を本気で実行するなら、私とタカトシ君で粛々とお説教しますから」

 

「それはそれでご褒美かもしれないですが、実行しないでおきましょう」

 

 

 せっかくのお出かけだというのに、延々と二人に怒られると言うのはさすがに避けたいので、両刀遣いという設定は却下しておこう。

 

「でもそうなると、本当に全員でタカ君を狙うことに――」

 

「予行演習なんですから、性別は考えなくてもいいんじゃないですか? 純粋に仲良くなりたいとか、そういった感じで」

 

「それだとリアリティが……」

 

「会長の考えの方がよっぽどリアリティに欠けます!」

 

 

 サクラっちに怒られ、私は首を竦めた。それにしても、そんなに怒ることなのだろうか……




リアリティを求めるのに何故両刀遣い設定……

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