桜才学園での生活   作:猫林13世

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何が楽しいのかわからんな……


合コンとは

 サクラっちと次の会議の打ち合わせをしていると、生徒会室でユウちゃんが携帯とにらめっこをして何か悩んでいる。

 

「うーん、わからん……」

 

「広瀬さん、どうしたの?」

 

 

 あからさまに悩んでいるので、サクラっちがそう声を掛ける。ユウちゃんのことだから斜め上の悩みということは無いだろうから、安心して聞いたのだろうな。これが私だったら何かよからぬことを考えているのではないかと疑われていただろう。

 

「分からないことがあったら、先輩に聞きなさい。分かる範囲で答えてあげるから」

 

「会長、微妙にかっこ悪いです」

 

「そう? タカ君じゃないんだから、何でも分かるってわけじゃないし」

 

「タカトシ君だって何でも分かるわけじゃないと思いますが……」

 

 

 確かにタカ君だって分からないことがある。でもそれは知らなくても困らないような範囲の話なので、ユウちゃんの悩み事くらい、タカ君ならすべて解決できると私は思っている。

 

「それで、ユウちゃんは何を悩んでいるの?」

 

「合コンって何やるんすか?」

 

「「へ?」」

 

 

 私もサクラっちも想像していなかった単語がユウちゃんの口から出て、私たちは間抜けな声を出してしまう。だって運動一筋のユウちゃんが合コンなんて……

 

「えっと……どうして合コンについて知りたいの?」

 

「男子と女子バレー部が親睦会としてやるらしいんすけど、合コンって全然わからなくて。部員に聞こうとしても『ユウは知らなくても仕方ないか』って言われて終わるんすよね……」

 

「あぁ……」

 

 

 確かにユウちゃんなら知らなくても仕方ないって思われてそうだし、それを面白がって教えないのも頷ける。

 

「それで先輩、合コンって何をやるんすか?」

 

「えーと……食事とかカラオケとか?」

 

「普通に遊ぶ感じなんすか?」

 

「スクワット」

 

「えっ?」

 

 

 私がユウちゃんの質問に答えると、サクラっちが不思議そうな表情で私を見詰める。まぁ、サクラっちが思っている合コンではこんなことしないだろう。

 

「ジュースに媚薬を盛られたショーコには理性を抑えることができなかった。肉の延べ棒の上にまたがり、ゆっくりと腰を下に――」

 

「フィクションから抜粋すなっ! というか、何でそんな内容の本がここにあるんですか!?」

 

「だって、家で読んでたらタカ君に怒られそうだから……」

 

「だからって生徒会室で読もうとしないでください! と言うか、不必要なものを持ち込むなんて、生徒会長としてどうなんですか」

 

「それを言われると……」

 

 

 サクラっちに怒られ、私は持っていた官能小説を鞄の中にしまう。本当はアリアっち経由で出島さんから借りたのだが、そのことを声高に宣言する勇気は私には無い。だって、あの人とつながっているということは、結構ハードな性癖だと宣言することと同義だろうし……

 

「それで結局、合コンって遊ぶだけなんすね?」

 

「うーん……私たちもやったこと無いから詳しくは言えないし、何となく大学生以上がしてるイメージだし」

 

「お酒飲んで騒いでる感じ」

 

「何の話ですか?」

 

 

 ここで青葉っちが合流して、私は今度ユウちゃんが男女バレー部で合コンをすることと、具体的に何をするのか質問されていることを説明した。

 

「十円ゲームというものがあるそうです」

 

「十円ゲーム?」

 

「参加者が順番に質問し、YES・NOで答えて盛り上がるゲームです。表ならNO、裏ならYES」

 

「普通逆じゃないっすか?」

 

「数字が書いてある方が表だと思ってる人が多いけど、あっちが裏だからね」

 

「そうなんすか」

 

 

 実際はどっちでもいいらしいけど、基本的には数字が書いてある方が裏ということになっているので、今はそのツッコミはしないでおこう。

 

「十円を持っていれば気軽に遊べるから、盛り上がるには良いかもね」

 

「でも私、制服の型崩れが嫌で、小銭持ってないっす」

 

「……結構現代っ子だね」

 

「じゃあ、試しにやってみよう」

 

 

 ちょうど十円を四枚持っていたので、私は早速十円ゲームを体験しようと提案し、三人とも賛成してくれた。

 

「こうやって手許を布で隠すから、誰がどの答えなのか分からないようになってるんすね」

 

「タカ君なら、布越しでも誰がどの十円を動かしてるか分かりそうだけどね」

 

「それはさすがに……」

 

 

 サクラっちが否定しようとして途中で止まったのは、恐らくタカ君ならできそうだと思ったのだろう。

 

「じゃあ私から。実は気になっている人がいる!!」

 

 

 実に合コンらしい質問だが、恐らくユウちゃんはそんなことを考えずに質問したのだろう。

 

「お?」

 

 

 YESが二枚あることにユウちゃんは意外そうな反応を見せたが、私はこれくらいでは驚かない。

 

「私とユウちゃんの十円玉は二十七年モノだからー……あ」

 

「レギュレーションに反してません!?」

 

「サクラっちは分かるけど、青葉っちも?」

 

「私は広瀬さんがどういう人なのかまだ良く分かってませんので」

 

「なるほど……」

 

 

 どうやら気になる『異性』だと受け取っていたのは私とサクラっちで、純粋に気になる『人』という考えで青葉っちは受け取っていたようだ。まぁ、間違っていないけどこの場合は間違ってるんじゃないだろうか。




ウオミーもなかなかレギュレーション違反

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