桜才学園での生活   作:猫林13世

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この子は仕方ないな……


デリカシーの有無

 魚見会長から生徒会メンバーの親睦を深めよう会のお知らせを聞き、今日は生徒会メンバーが集まることになっているのだが、そもそも私以外はそれなりに長い間生徒会の活動をしているのだから、親睦もないと思うのだが。

 

「広瀬さん、おはよう」

 

「おはよっす、青葉さん」

 

 

 同じ一年ということで、青葉さんとはそれなりに親しいと思っている。あまり会話はかみ合っていないが、そんなことも気にしなくても良いくらいには、居心地は良いのだ。

 

「魚見会長も好きっすよね、こういうの」

 

「桜才の天草会長と同じで、魚見会長もイベント好きだから」

 

「ウチの生徒会もっすけど、あっちも副会長がちゃんとしてるから成り立ってるんですかね?」

 

「どうだろうね。でも津田先輩や森先輩がしっかりしてると言うのは確かだし、あの二人がいなかったら生徒会活動がままならないのも確かかもね」

 

「私がいても大して役に立ってるとも思えないっすけどね」

 

 

 私は主に重い荷物や高い場所にある物を取る係りなので、それ以外で役に立てるとは思っていない。むしろテスト前に散々お世話になっているので、むしろお荷物感がある。

 

「でも広瀬さんが入ってくれたお陰で、荷物運びとかの作業はスムーズに進んでるし、十分に役に立ててると思うよ」

 

「そう言ってもらえると気が楽っすね。むしろそれ要員で誘われたので、そこくらいしか活躍の場が無いわけですし」

 

 

 青葉さんと話ながら集合場所に行くと、既に森先輩が来ていた。

 

「森先輩、おはようございます」

 

「おはようっす」

 

「二人ともおはよう。一緒に来たの?」

 

「途中でばったり会ったので。ところで、会長は?」

 

「まだ来てないよ」

 

 

 珍しいこともあるものだ。普段は私が一番最後のことが多いのに、今日は会長が最後とは……

 

「ところで、今日は何処に行くんすか?」

 

「私は何も聞いてないかな……会長、行き当たりばったりのことも多いし」

 

「そうなんすか?」

 

 

 私より付き合いの長い森先輩が言うのだからそうなのだろうが、あの会長が何も考えずに出かけるとも思えない。そんなことを考えていると――

 

「お待たせー」

 

「会長、遅い……」

 

「ちょっとナンパがしつこくて――タカ君に対しての」

 

 

――津田先輩を引っ張ってきた魚見会長がやってきた。

 

「タカトシ君!? 今日は何で?」

 

「義姉さんに誘われた」

 

「タカ君の人気を甘く見ていた……まさか駅前であれだけ声を掛けられるなんて」

 

 

 津田先輩は確かにカッコいいし、性格も良いので人気は高い。私の周りでも津田先輩に特別な感情を懐いている子がいるくらいだし。

 

「とりあえず行こうか」

 

「何処にです?」

 

「生徒会で必要な備品を買いに。ユウちゃんは荷物持ちよろしく」

 

「了解っす」

 

 

 力仕事なら喜んでという意味合いを込めて力こぶを作って見せると、会長は楽しそうに笑ったが、その横で森先輩と津田先輩が微妙な顔をしていたのは何故だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 親睦云々と言っていたのでてっきり遊びに行くものだと思っていたが、まさか備品の買い出しとは……会長は相変わらず何を考えているのか分かりにくいんだから。

 

「ゴメンね、タカトシ君。まさか生徒会の買い出しだったとは」

 

「まぁ、どうせ暇だったし構わない。それに、サクラが謝ることでもないだろ?」

 

「う、うん……」

 

 

 タカトシ君は素でやっているのだろうが、その笑顔はズルい。私は自分の顔が熱を帯び始めているのを感じて顔を背けた。

 

「森先輩、こっちはこれで全部っす」

 

「こちらもこれで全部ですね」

 

「後は魚見会長か」

 

 

 広瀬さんと青葉さんが戻ってきたので、私は魚見会長の姿を探すふりをして、顔の熱を逃がす。

 

「確か広瀬さんと一緒だったと思うんだけど」

 

「会長ならトイレに行くって言ってたので、多分そろそろ戻って来るんじゃないっすか? うんこだったら分かりませんが」

 

「広瀬さん……」

 

 

 相変わらずデリカシーの無い広瀬さんに、私はどうお説教しようか頭を悩ます。私がどうしようか考えている間に、タカトシ君が広瀬さんに注意をしてくれた。

 

「あまり人が多い場所でそういうことを大声で言うのは感心しないな。あけっぴろげな性格なのは良いことなのかもしれないが、そういう分別はしっかり持っていた方が今後苦労しないだろうし」

 

「そんなもんっすか? まぁ、確かに大声で言うもんじゃないっすね」

 

「というか、そもそも言うものじゃないと思うんだが」

 

「うーん……津田先輩がそう言うならそうなのかもしれない……今後気を付けます」

 

 

 コトミさんで慣れているからなのか、タカトシ君は妹を諭すような感じで広瀬さんに注意を済ませる。こんな風にさらっとできるのが羨ましいと思う反面、やっぱりタカトシ君はお兄ちゃん気質なんだなと感じてしまう。

 

「お待たせ。ちょっと混んでて時間かかっちゃった」

 

「あっ、それで遅かったんすね。てっきり――何でもないです」

 

「?」

 

 

 普段ならはっきりと言う場面で言いよどんだのを見て、会長が首を傾げる。だがすぐにタカトシ君の方を見て事情を察したようで、広瀬さんに対する追及は無かった。




手のかかる妹が増えたような……

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