桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミは完全に態と


捜索後の津田家

 出かけていたタカ兄が帰ってきたのは良いが、何故かその背後にはお怒りの生徒会の皆さんとカエデ先輩、そしてがっかりした表情の畑先輩がいらっしゃる……

 

「あの、私何かしましたか?」

 

「お前のふざけた投書の所為で無駄な時間を過ごしたぞ!」

 

「えっ? タカ兄は最初から私の投書だって気付いていたようですし、皆さんも分かってたんじゃないんですか?」

 

 

 そもそも筆跡がバレないように定規を使って文字を書くなんて、私以外に実践する人が桜才にいるとは思えないんだけども……そしてツチノコなんて情報を持ち出す人間もだ。

 

「タカトシに言われて漸くそういえばそうだと思ったくらいだ!」

 

「つまり、皆さんは本当に学校の敷地内にツチノコがいると思っていたと?」

 

 

 もしそうなら、私以上に夢見がちだ。そもそもツチノコなんて未確認生物が一高校の敷地内で見つかるはずないと分かるだろうに。

 

「兎に角今からコトミは説教タイムだ! 我々の貴重な時間を奪った罪、しっかりと反省してもらう」

 

「そんなこと言われましても……タカ兄、どうにかならない?」

 

「そもそも皆さんはロマンを追い求めてツチノコの捜索をしていたのではなかったんですか? 実際にいるかいないか、そこは問題では無かったはずだと思いますが」

 

 

 タカ兄はどちらの味方をするつもりも無いのだろうが、恐らく捜索前にシノ会長が宣言したのであろう言葉を淡々と告げる。

 

「確かにロマンを追い求めていたのは事実だ。だがその結果がこれでは、原因を作ったコトミに文句を言いたくなっても仕方ないだろう?」

 

「結果って?」

 

 

 何か結果が出たのだろうと思い、私はタカ兄に確認したのだが、横から畑先輩が何かを取り出した。

 

「今回我々が発見できたのはこれです」

 

「これって……浣腸器? 何でこんなものが発見できたんですか?」

 

「それは分かりません。ですが、せっかく現れたと思ったのに結果がこれでは……記事にしようにもできません」

 

「何故敷地内に浣腸器があったのか捜索すれば、それなりに話題にはなると思いますけど?」

 

「どうせ横島先生が持ち込んだとか、そんなところでしょうから記事にはなりませんよ」

 

 

 畑先輩の返事に、私は思わず納得してしまう。確かにあの先生なら浣腸器を持ち込んでいたとしても不思議ではないし。

 

「というか、私を責める前に、好奇心に負けたご自身を責めたらどうでしょうか? 私はちょっとした悪戯のつもりだったわけですし、タカ兄にはバレバレだったんですから」

 

 

 私の反論に、シノ会長たちは何も言えなくなってしまったようだ。だけど何処か私を恨めしそうに睨んでいるのは、それでも私を叱りたいという気持ちの表れなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日はバイトでタカ君たちの家に行けなかったけども、今日は朝から行くことができる。確か昨日はシノっちたちがツチノコの捜索をするとかで、コトちゃんが一人でお留守番をすることになっていたはずだから、もしかしたら家の中が散らかっているかもしれないし。

 

「――というわけで、来ちゃった」

 

「はぁ……随分と早い時間から来ましたね」

 

 

 現時刻は朝の七時ちょっと前。この時間で普通に起きて作業しているタカ君もタカ君だが、確かにこんな時間に訪ねるのはちょっと失礼かもしれない。

 

「実はこの後サクラっちたちとお出かけすることになってるんだけど、タカ君たちも一緒にどうかなと思って」

 

「特に予定は無いので構いませんが、俺がいない方が気楽なのでは? 英稜の生徒会メンバーは全員女子ですし、半数は後輩になるわけで、委縮させてしまう気もしますし」

 

「タカ君なら大歓迎だよ。それに、サクラっちが一人でツッコミをしなくても済むだろうし」

 

「義姉さんたちが自重するって選択肢もあると思うのですが?」

 

 

 タカ君の目が笑っていないのを感じ、私は明後日の方を向いて誤魔化す。それができるのであれば、最初からサクラっちの心配などしないのだ。

 

「わー遅刻だー! タカ兄、何で起こして――って、お義姉ちゃん?」

 

「おはようコトちゃん。遅刻って?」

 

「今朝は朝練なんですよー! タカ兄、どうして起こしてくれなかったの!?」

 

「そもそも俺はお前がこの時間に出かけるなんて聞いていない。というか、高校生にもなって起こしてもらわなけれは行動できないという点を反省しろ」

 

「お説教なら後で聞くから! 行ってきます!」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

 

 タカ君と二人でコトちゃんを見送り――手ぶらだけど良かったのだろうか――私はタカ君と二人で家事を済ませることに。

 

「コトちゃんもいないし、タカ君がお出かけしても大丈夫だよね?」

 

「コトミがいないからという点は気にしないでおきますが、お邪魔でなければ」

 

「私が誘ってるんだから、お邪魔なわけないよ」

 

 

 むしろ他の三人がお邪魔と思える……青葉っちやユウちゃんは兎も角、サクラっちはタカ君争奪戦で圧倒的有利なポジションにいるわけだし、たまにはお義姉ちゃんに譲ってくれたも良いんじゃないかと思うのだけども。

 

「シノさんたちに知られたら後が面倒そうだな……」

 

「夜のお散歩をしたシノっちたちに、私たちをとやかく言う権利はないから大丈夫だよ」

 

 

 事情はどうあれ夜にタカ君とお出かけをしたのだから、これくらいは見逃してもらいたいものです。




次回は英稜組とお出かけ

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