桜才学園での生活   作:猫林13世

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何がしたかったのか、アイツは……


ツチノコの情報

 畑さんが尾行の練習をしていた理由を聞いて、俺は呆れてしまった。ツチノコの目撃例はそれなりに聞いたことがあるが、実際に捕まえたという話は無い。そもそも本当にいるのかどうかも分からないものを追い求めて何になると言うのだろうか……

 

「それで、何故ツチノコなんて話になってるんですか?」

 

「実は、この様なタレコミ投書がありまして」

 

 

 畑さんから手渡された紙には――

 

『道場のウラでツチノコらしきモノを見た! 調査してください!!』

 

 

――と、何とも読みにくい文字で書かれていた。

 

「なんか文字が角ばってるね」

 

「定規を使って書いたんでしょうね。筆跡で特定されないように」

 

「サスペンスドラマであるやつかー」

 

 

 スズとアリア先輩は文字に注目しているようだが、俺は別のことが気になっていた。

 

「(こんな回りくどいことをするのって、アイツしかいないよな……)」

 

 

 恐らくこの投書の主であろう妹を思い浮かべて、俺は盛大にため息をついて畑さんに紙を返す。

 

「津田副会長はご興味が無いようで」

 

「ええ。特に止めませんが、調べるのならご自由に」

 

 

 俺は残ってる作業を片付ける為に机に向かう。背後では会長が興味津々の様子だが、こっちにまで回ってこなければ良いが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシは興味が無いようだが、私は畑の話を詳しく聞くことにした。

 

「それで、ツチノコは本当にいるのか?」

 

「それを調べる為の尾行訓練です」

 

「なるほど。なんらかの生物がいるというのは学園の安全が脅かされかねない。我々も捕獲に協力しよう」

 

 

 生徒会を上げての調査だから、アリアや萩村、タカトシも参加してもらおう。

 

「じゃあ髪の毛をください」

 

「え?」

 

「ツチノコは女子の髪の毛が好きと言われています」

 

「え~~~~~」

 

「すぐ済みますから! 先っぽ!! 先っぽだけだから!!」

 

「またこの部屋ですか!」

 

 

 畑に髪の毛を強請られていたタイミングで生徒会室に五十嵐が入ってきた。

 

「って、何をしてるんですか?」

 

「ツチノコ捕獲の為に、天草会長に髪の毛を提供してもらおうと思いまして。何なら五十嵐さんの髪の毛でも良いですよ? むしろ五十嵐さんの髪の毛の方がツチノコもおびき寄せそうですし」

 

「おい! それはそれで気に食わないぞ!」

 

「ではご協力を」

 

 

 何だか畑の口車に乗せられた感じがするが、五十嵐の方が良いと言われて何となく気に入らなかったので、私は髪の毛を提供することに。

 

「ですが、ツチノコの正体って食事中の蛇って言われてますよ?」

 

「そんなロマンの無い」

 

 

 私が髪の毛を提供した直後、萩村が夢も希望もないことを言いだした。

 

「だが調べて見ないことには分からないだろう?」

 

「どれどれ~……ホントだ、そっくり」

 

 

 アリアが見ていた映像を覗き込んだ五十嵐が気を失いそうになり、タカトシがその背中を支える。

 

「アリア! 生徒会室で丸のみフェチむけのアニメを再生するんじゃない!」

 

「でも、食事中の蛇の映像を調べようとしたら、これくらいしかなかったし」

 

「ですが、確かにこの映像はツチノコに見えなくもないですね」

 

 

 畑の言うように食事中の蛇がツチノコに見えなくもないが、これだけ大きな蛇が動いていたらさすがに誰かに見られているだろうしな……

 

「ちなみに、これが捕獲前に私がまとめたツチノコ情報です。ご覧ください」

 

 

 畑から渡されたデータを私たち四人――ちなみにタカトシではなく五十嵐だ――で見ることに。

 

「何々……ツチノコは凄く速い。ツチノコは高く跳ぶ。ツチノコ型という肉の延べ棒がある、か」

 

「最後の情報は何なんですか!?」

 

「ツチノコに関する情報です」

 

「何処がですか! 名前以外関係ないじゃないですか!!」

 

 

 五十嵐は文句を言いたげだが、なんだかんだで付き合ってくれるようだ。

 

「それでは早速ツチノコ捜索に繰り出しましょうか」

 

「そうだな。できる限り早く見つけて結果を知りたいし」

 

「それって私も付き合うんですか?」

 

「天草さんに髪の毛を提供してもらえたので、五十嵐さんは来なくても大丈夫ですよ」

 

「……いえ、畑さんが風紀を乱す行為をしないかどうか近くで見張らせてもらいます」

 

 

 結局五十嵐も捜索に付き合うようだ。ちなみに、タカトシは生徒会室の留守と、残っている雑務を担当してくれるようで不参加だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫く道場周辺を捜索したが、そう簡単に見つかるはずもなく早くもあきらめムードが漂い始めている。

 

「いないなー……」

 

「まぁ、ツチノコって夜行性らしいですからね」

 

 

 萩村が何気なく言ったセリフに、私たち全員がそちらを向く。

 

「へーそれは知らなかった」

 

「畑! それくらいの基本情報は仕入れておけ!」

 

「すみません。では、捜索は週末の夜にやりましょー! それなら津田君も参加してくれるでしょうし」

 

「た、タカトシ君と夜の学校で一緒!?」

 

「おや~? 風紀委員長は何を想像したんですかね~? ツチノコ以上のスクープになりそうなことは遠慮してもらいたいのですが」

 

 

 五十嵐と畑が盛り上がっている中、私は萩村の表情が気になった。

 

「(あぁ、ヤブヘビだったと思っているのか……)」

 

 

 萩村は暗い場所などが苦手だからな……だが参加する辺り、アイツも気になっているようだ。




カエデさんも参加決定

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