桜才学園での生活   作:猫林13世

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珍しく時期が被った


お月見の計画

 何か新しいイベントは無いか考えてながらカレンダーを眺めていると、もうすぐ十五夜だということに気付き、パリィもいることだし月見イベントを開こうと決め生徒会メンバーに連絡する。

 

『今度みんなでお月見をやらないか?』

 

 

 メッセージアプリでそう呟くと、すぐに返事が着た。

 

『いいね!』

 

『構いませんよ』

 

『せっかくですし、パリィも誘いましょう』

 

 

 さすが我が生徒会メンバー。私が言いたいことを理解してくれているようだ。

 

『よーし! みんなでまんげっ見よう!!』

 

『はっ?』

 

『……すまない。予測変換でミスった……満月を見よう』

 

 

 昔使っていた履歴が残っていたのか、予測変換で盛大にミスをしてしまいアプリ越しにタカトシから殺気を飛ばされた。

 

「最近は大人しくしてたから忘れてたが、相変わらず画面越しでもすごい圧だ……」

 

 

 普通の男子高校生ならこれくらいの冗談気にしないのだろうが、タカトシは私たちの保護者的なポジションでもあるので、言葉遣いとかにも厳しいのだ。

 

『それで、何処でやるの~?』

 

『そうだな……』

 

 

 普段ならアリアの家に集まって庭から月を眺めるパターンなのだが、せっかくだし縁側でゆっくりしたいしな……

 

『タカトシの家でどうだ?』

 

『ウチですか? 別に構いませんが、何故です?』

 

『君の家には縁側があるだろ? せっかくのお月見だし、縁側でまったりするのもいいかと思ってな。私と萩村の家には無いし、アリアの家だとお月見はできるかもしれないが、思い描いているのとちょっと違う感じになりそうだし』

 

『そうだね~。ウチには縁側がないしね~』

 

『そもそも七条先輩の家は完全に洋風ですからね』

 

 

 洋風以前に豪邸な気もするが、タカトシの家で開催することが決定的になり、私は具体案を練る為に話を変える。

 

『何か持っていかなければいけない物はあるか?』

 

『ただ月を見るだけなら、何も必要ないんでしょうが、会長のことですから月見だんごも必要ですよね?』

 

『なっ!? 食べたいのは私だけじゃないはずだぞ!』

 

 

 

 私だけ食い意地が張っているように言われ、私は慌てて否定するが、それが余計に食べたいと思っていると思われる感じになってしまい、何とも言えない感じになってしまった。

 

『それはこちらで用意しますので、皆さんは手ぶらで構いませんよ』

 

『わかった~。あっ、出島さんがバニースーツ持ってけっていってるんだけど、必要かな~?』

 

『いらん』

 

『分かった~』

 

 

 さすが出島さんだ……私がやろうとしていたボケを先に提案して潰してくるとは……これじゃあ頃合いを見計らってバニー姿になる計画は失敗だな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お月見の件をパリィに話すと、ぜひ行きたいということなので、当日私はパリィと一緒に津田家へと向かう。パリィは浮かれているようで、鼻歌交じりに歩いている。

 

「そんなに楽しみなの?」

 

「うん! こうやってみんなで集まって何かやるの、楽しいし」

 

「そうね」

 

 

 これでボケる人間がいなければ楽しいと思えるのでしょうけども、ツッコミ側の人間からすれば、余計な作業があるんじゃないかと身構えてしまい、素直に楽しめないのよね……

 

「(まぁ、タカトシがいるから何とかなるんでしょうけども)」

 

 

 ここ最近サボり気味だと自覚しているけども、私にタカトシ並のツッコミスキルを期待されても無理なものは無理なのだ。ましてあの家にはタカトシ以外にコトミもいる。タカトシの前でもアクセル全開のコトミを、私程度が抑えられるはずもないのだから。

 

「スズ~、タカトシの家ってどっちだっけ?」

 

 

 以前一度だけ行ったことがあるから、ある程度の道順は覚えていたようだが、細かいところは忘れているようで、パリィは振り返って私に尋ねてくる。

 

「こっちよ。ところで、さっき何を買ったの?」

 

「ススキだよ~。お月見には必要なんでしょう?」

 

「そうね」

 

 

 確かにお月見にはススキだけども、最近の人間でそこまで用意してお月見する人がどれだけいるのかしら……少なくとも私たちの会話の中で、ススキを用意しようという話は出てこなかったわね……

 

「到着!」

 

「そういえばパリィは、コトミにあったことあるんだっけ?」

 

「あるよ~。タカトシの妹とは思えないくらい、おふざけな娘だよね~」

 

「パリィにもそう思われてるなんて……」

 

 

 出会って間もないパリィにもコトミの本質を知られているようで、私は心の中でタカトシに同情する。タカトシも同情されたくないだろうけども……

 

「タカトシー、来たよー」

 

 

 玄関を開けてそう声を掛けるパリィ。インターホンで来たことは告げているので、今更そんなこと言わなくても良いと思うんだけども……

 

「いらっしゃい」

 

「タカトシ、ス……スキ――」

 

「っ!?」

 

 

 何故このタイミングでパリィがタカトシに告白をしたのか……絶賛混乱中の私をよそに、タカトシはパリィから何かを受け取った。

 

「――持ってきた」

 

「わざわざススキなんて持ってきたのか?」

 

「だって、必要でしょう?」

 

「まぁ、あった方が風情は良いかもね」

 

「あっ、ススキか……」

 

 

 さっきパリィが持ってきたという話をしたと言うのに、何でそんなことを忘れてしまったのかしら……




スズも焦るなよ……

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