桜才学園での生活   作:猫林13世

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勝手に周りが盛り上がっているだけ


恋バナ

 水泳の授業で泳いでいたのだが、不意に尿意を覚え私はプールから上がり考える。

 

「トイレ行きたいけど、この格好で外に出るのはなー……」

 

「我慢してお漏らししても、スズちゃんなら容姿相応で誤魔化せるよ~。それに、金髪ロリの聖水は欲しがる男子がいるかもしれないし」

 

「いろいろとツッコミたいが、誰がロリだー!」

 

 

 余計なことを言いだしたネネの脛を蹴り上げ、私はいよいよ我慢の限界が近づいてきた。

 

「やっぱり行った方が良さそうね……」

 

「だ、だったらこれを貸してあげるよ」

 

「何で持ってるのか気になるけど、助かったわ」

 

 

 ネネからバスローブを受け取り羽織ると、何やら納得顔で頷きだした。

 

「やっぱりバスローブは濡れている方が艶っぽく見えるね」

 

「謀ったなーっ!」

 

「さっきから何騒いでるんだよ……」

 

「あっ津田君。どうどう? スズちゃん、艶っぽいよね?」

 

「轟さんは後で生徒会室に来てもらいます。不用品を持ち込んだ件、ゆっくりと話を聞かせてもらいますから」

 

「き、緊急時に備えてのものなので、生徒会室はご勘弁を……」

 

 

 ネネのことをタカトシに任せて、私はトイレに駆け込んだ。こんなにギリギリまで我慢したのは、いったい何時ぶりだっただろう……

 

「ふーすっきりした」

 

「スズ、何処か行ってたの?」

 

「パリィ、ちょっとお手洗いに行ってたのよ。ところで、パリィはもう泳がないの?」

 

「ちょっと休憩中」

 

 

 よく見れば他の子たちも休んでいるので、私もそのままプールサイドに腰を下ろした。

 

「ムツミは相変わらずね」

 

「唯一の得意教科だしね」

 

「ムツミ速ーい、スポーツカーみたい」

 

「そりゃ言い過ぎでしょ」

 

 

 確かにムツミは泳ぐのも速いが、スポーツカーは言い過ぎだと私も思った。だがチリがツッコミをしてくれたので、私はのんびりムツミの泳ぐ姿を見ることができた。

 

「お腹減った~……」

 

「燃費の悪さはそーかもな」

 

「何が?」

 

「ムツミがスポーツカーみたいだってパリィが言ってたから、燃費の悪さはそれに匹敵するって話」

 

「そんなに悪くないよー!」

 

「ムツミとタカトシ、どっちが速い?」

 

「この前タカトシ君に負けちゃったから、タカトシ君の方が速いよ~」

 

「というか、男子と競ってる時点でムツミの方が凄いと思うんだが」

 

「それを自覚してないのがムツミの凄いところよね」

 

「んー?」

 

 

 首を傾げるムツミを見て、私とチリは揃って苦笑いを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと張り切り過ぎて突き指をしたパリィさんと一緒に保健室に行き、軽く手当をする。

 

「ハイ、できた」

 

「アリガト、ムツミ」

 

「何かあったら保健委員の私に言ってね」

 

 

 普段頼られることなんて無いけど、これくらいなら私にだってできる。昔から運動していたから、怪我の手当ての知識ならそれなりにあるのだ。

 

「保健委員って大変そーだネ」

 

「そんなことないよ? 生徒会の方がよっぽど大変だし」

 

 

 主にタカトシ君が大変そうだけども、他の三人だってそれなりに忙しそうにしている。しかし、あの三人の中でタカトシ君が一番後に生徒会に入ったはずなのに、どうしてタカトシ君が一番偉い様に思えるんだろう……会長は天草先輩なのに。

 

「でも保健委員って、保健の授業で教材になるんでショ?」

 

「?」

 

 

 パリィさんが何を言っているのか分からない私は、思わず首を傾げてしまう。

 

「(後でタカトシ君に聞いてみよう)」

 

 

 とりあえず怪我の手当ても終わったので教室に戻る途中で、パリィさんが話しかけてきた。

 

「ムツミは誰か好きな人いないの?」

 

「っ!? な、何でそんな話に?」

 

「女子高生は恋バナが好きだって、ランコが言ってたから」

 

「ランコ……あぁ、畑先輩か」

 

 

 確かにそう言った話は嫌いではないけども、自分の話をして楽しめるなんて思えない。というか、誰かを好きになるってどんな気持ちなのか分からないし……

 

「よく分からないんだよね……」

 

「そうなの? ムツミはタカトシのことが好きなのかなーって思ってたけど、違うの?」

 

「?!?!?」

 

 

 パリィさんに変なことを言われ、私は言葉にならない声を上げてパリィさんの口を塞ぐ。

 

「な、何を言ってるの!? 私がタカトシ君を好きだなんて、そんなこと……」

 

「ぷはぁ! でも、この学校の殆どの女子生徒がタカトシの貞操を狙ってるって聞いたけど」

 

「ていそー? よく分からないけど、タカトシ君が人気だってことは確かだよ。タカトシ君の見た目が良い人もいれば、エッセイのファンだって人もいるし」

 

「タカトシってエッセイストじゃないんだよね? なのにエッセイを書いてるの?」

 

「新聞部に頼まれてるんだよ。畑先輩が頼み込んで書いてもらってるって噂だけども、実際はファンの圧力が強いからなんじゃないかって噂を聞いたことがある」

 

 

 その噂もコトミちゃんから聞いたんだけども、柔道部にもタカトシ君のエッセイのファンはいるので、あながち間違いではないのだろう。

 

「ナルコが怒られてるのも見たことあるけど、タカトシって何者?」

 

「ナルコ? ……あぁ、横島先生。えっと、タカトシ君が怒ってるのは、偶々だと思うけど、タカトシ君は生徒会副会長だよ」

 

 

 それ以上の説明ができないので、私はそれだけ答えて質問から逃げた。だって、他に説明しようがないんだもん……




それ以外に説明しようがない……

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