桜才学園での生活   作:猫林13世

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もう警察案件だと思う


畑さんの処分

 タカ兄に本気でお小遣いを五割カットされるかと思って焦ったけど、何とか五百円で済んでよかった。

 

「まったく、タカ兄は鬼畜だよね……実の妹を虐めて楽しんでるんだ」

 

「そもそも津田先輩に面倒を見てもらわないと、コトミは生活すらできないんだから、少しくらい我慢しなさいよね。というか、今回のテスト、そこまで難しくなかったんだから、七十五点くらい採れるでしょうが」

 

「それはマキが頭が良いからでしょ! 私やトッキーじゃ、七十五点なんて無理に決まってるじゃん!」

 

「いや、私は七十八点だったんだが」

 

「えっ……トッキーに負けた」

 

 

 ここ最近はトッキーに勝っていたのに、まさかここに来て負けるとは……お小遣いが懸かっていた分、私の方が緊張感があったはずなのに……

 

「まぁ、まだ正式な点数が出たわけじゃないんだし、落ち込むのは早いんじゃない?」

 

「マキは兄貴が採点ミスをすると思うのか?」

 

「思わないけど、コトミやトッキーが答えを写し間違える可能性はあるかなとは思ってる」

 

「「……否定できない」」

 

 

 私もトッキーもうっかりやドジが多いので、答えを写し間違える可能性は大いにある。その場合あっていると判断された答えが間違ってる可能性や、その逆もあり得るのだ。

 

「兎に角今は、テストが終わったことを喜んだら?」

 

「そうだね……とりあえずお昼にしようよ。トッキーと私はこの後部活だし、マキも一緒に食堂でご飯にしよう」

 

「そうだね。たまにはそれでもいいかな」

 

 

 三人で食堂に行き、私たちはそれぞれ注文を済ませて席に着く。

 

「なんだ、二人とも一緒にしたんだ」

 

「コトミだって同じでしょ?」

 

「うん。無性に食べたくなっちゃって」

 

 

 私たちは三人とも唐揚げ定食を注文したようで、全く同じものが三つテーブルに並んだ。

 

「このお肉、柔らかくておいしー」

 

「ウチの食堂、レベル高いよな」

 

「そうだね。でも、タカ兄のお弁当の方が美味しいって思っちゃうのは、食堂のおばちゃんたちに失礼かな?」

 

「好みは人それぞれなんだし、別に良いんじゃねぇの?」

 

「柔らかくて美味しいのは同意するけど、その分固いものを食べる機会が減ってる気がするんだよね。顎の力が衰えないか心配だよ」

 

「確かに。でもまぁ、固いモノを咥えることはあるから大丈夫じゃない?」

 

「……津田先輩に報告して、やっぱり五割カットにできないか相談してくる」

 

「じょ、冗談だから! せっかくテストから解放されたんだから、これくらいの冗談は良いでしょ!?」

 

 

 マキが本気でタカ兄の所に行きそうな雰囲気だったので、私は必至にマキを押し宥める。せっかく死守したお小遣いが、ちょっとした冗談で消滅するのは避けたいし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で備品の整理をしていたら、タカトシが横島先生に連れていかれてしまった。何でも新聞部がまたやらかしそうという情報が職員室に入り、真相を確かめて欲しいと横島先生がタカトシを連れて新聞部室に向かったのだ。

 

「という訳で、私たちだけでこの備品を片付けなければいけなくなったわけだが……量が多い」

 

「というか、畑さんをここに召喚して事情を聞き出せばよかったのでは?」

 

「まぁ、畑が元凶と決まったわけではないし、呼び出しに応じるとも思えないからな」

 

 

 

 新聞部で何かやらかすとすればあの人しかいないだろうけども、確かに会長の言う通り畑さんが悪いと決まったわけではない。私は凝り固まった概念を頭から追いやる為、左右に頭を振った。

 

「新聞部の方はタカトシ君に任せるとして、私たちは御片づけを済ませちゃいましょう」

 

「この花瓶だが、このまま箱に入れるのはマズいですね」

 

「そんな時は、紙をくしゃくしゃにして一緒に入れると良いぞ!」

 

「(天草会長、萩村書記に『ミーをめちゃくちゃにして』と頼む……っと)」

 

 

 何となくロッカーの中から不穏な気配を感じ取り、私はロッカーを勢いよく開けた。

 

「あら~?」

 

「畑っ! そこで何をしている!」

 

「もちろん、津田副会長の追及から逃れる為にここに隠れていたんです! まさかこんな特ダネが手に入るとは思ってませんでしたが」

 

 

 畑さんから回収したメモ帳には、事実とは異なることが書かれていた。私たちは速攻でそのメモを破り捨て、タカトシに電話を掛けようとして――

 

「畑さんが不在の間に、新聞部にあった資料は全て回収しておきましたので。申し開きがあるのでしたら職員室でお願いします」

 

 

――タイミングを計ったかのようにタカトシが現れた。

 

「何故……部員たちには秘密の資料だったのに」

 

「貴女が何をしているかなど興味ありませんが、何処に隠すなんて少し考えれば分かります。わざわざフェイク動画まで作って隠すなんて、随分と手の込んだ隠蔽工作でしたので、それ相応の処分が下ると思いますのでそのつもりで」

 

「未遂ですので、どうにかなりませんか?」

 

「それは俺にではなく職員室で言ってください。今回の件はそちらで処分を下すことになっていますので、俺には何もできませんので」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 

 のちにタカトシから聞いた話では、畑さんがしようとしていたのは女子更衣室の盗撮映像の男子生徒への転売だったようで、畑さんは三日間の停学処分と、反省文の提出を命じられたようだ。




タカトシから逃げられるわけ無いのに

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