桜才学園での生活   作:猫林13世

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スケールが違う


ケーキのお礼

 今日は私の家にアリアが遊びに来ている。普段なら私がアリアの家に行くか、外で会うことが多いのだが、今日は両親がいないので友人を家に招くことができるのだ。

 

「シノちゃん、なんだか楽しそうだね~」

 

「そ、そうか?」

 

「うん。何だか何時もより浮かれてる感じがする」

 

「自分ではそんなつもりは無かったんだが……」

 

 

 アリアが見てそう思うのだから、相当浮かれているのだろうな、私は……だって昔から家に友達を招くことなんて少なかったから、数少ない経験ができてうれしいのだから……

 

「(って、誰に言い訳してるんだ私は……)」

 

 

 心の中の言い訳に心の中でツッコミを入れて、私は気を取り直してアリアと課題を片付けることに。

 

「コトミの面倒ばかり見ていたから、少しは自分たちの勉強もしておかないとな。受験生なのだから」

 

「大丈夫だよ、シノちゃん。来年の今頃も、同じこと言ってると思うから」

 

「そうなのか?」

 

 

 私には分からないが、アリアが言うのならそうなのだろう。だからといって受験勉強をしなくて良いわけではないので、私とアリアは黙々と勉強することに。

 

「(……何故だろう。集中出来ているはずなのに、何か物足りないと感じてしまうのは)」

 

 

 何時も予習復習している時と変わりないはずなのに、私はイマイチ集中しきれていない。チラリとアリアの方を見ると、どうやらアリアの方も集中しきれていないようで、しきりに首を傾げている。

 

「どうやらアリアも集中しきれていないようだな」

 

「シノちゃんも? 私もさっきから何か物足りない気がしてるんだよね」

 

「普段一人で勉強している時はこんなこと無いのに、不思議なものだな」

 

「ねー」

 

 

 勉強自体は順調なのだが、集中力が散漫になってしまったので息抜きをすることにした。

 

「昨日ケーキを作ったんだ!」

 

「シノちゃん本当にこういうこと得意だよね~」

 

「まぁな! だが、タカトシには敵わないだろうが……」

 

「タカトシ君は別カテゴリーだから比べること無いんじゃない?」

 

「そう思おうと思っているのだが、どうしても比べてしまうんだよな……この間のケーキも、かなり美味しかったし……」

 

 

 この間という程最近ではなかったかもしれないが、柔道部の遠征に付いて行った際に作っていたケーキはタカトシのオリジナルらしいのだが、店で売っていてもおかしくない程の出来だった。味も十分で、余計なライバルを生み出しかねないと思い私とアリア、萩村で散々牽制したくらいだ。

 

「料理上手な男の子はモテるって言うしね~」

 

「それであの見た目だからな……あの時は苦労したな」

 

「でも、シノちゃんのケーキだって本当に美味しいよ。ご馳走になるのが悪いって思えるくらい。何かお返しした方が良いかな?」

 

「気にするな。アリアには何時も世話になってるからな」

 

「でもな~……」

 

 

 そう言って顎に指をあてて考え込むアリア。その仕草が妙に色っぽく見えたが、断じて胸が強調されているからではない。私にできないから羨んだわけでもない……はずだ。

 

「そうだ! ウチにプール造ったから遊びに来ない?」

 

「相変わらず凄いスケールだな……」

 

「お母さんが水攻めプレイをしたいって言って造ったんだ~」

 

「その希望でプールを造れるのが凄いが、造っちゃうってのが本当に凄いよな……」

 

 

 そんなんで七条グループは大丈夫なのだろうかとも思うが、株価はぐんぐん上がっているようだし、経営面では順調なのだろうな……

 

「せっかくだし、タカトシ君たちも誘っちゃう?」

 

「そうだな。せっかくの夏休み、あまり出かけられていないしな」

 

「パリィちゃんと一緒にお出かけしたくらいだしね~。後はコトミちゃんの面倒を見る為に津田家に行ったり」

 

「意外と出かけてたな……」

 

 

 思い返せば結構遊んでいたんだなと思い、私は受験生の自覚が足りないと気合いを入れ直そうと心に誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアさんから電話をもらい、明日七条家にお邪魔することになってしまった。本当なら断ろうと思っていたのだが、横にいたコトミが人の電話をひったくって快諾をしてしまい、断れない感じになってしまったからだ。

 

「――で、言い訳はそれで全部か?」

 

「はい、誠に申し訳ございませんでした」

 

「はぁ……今年は課題も終わっているから多少の粗相は目を瞑るつもりだったが、人の電話をひったくるのはいただけない」

 

「仰る通りです」

 

「挙句に人の予定を勝手に喋って断れないように仕向けるなどな。普段知恵を働かせられないくせに、悪知恵だけは回るようだ」

 

「反省しております」

 

 

 俺の前で正座をしながら小さくなっているコトミを見て、俺はため息しか出てこない……毎回反省だけはしっかりするのだが、次に活かされないのが問題だからだ。

 

「兎に角、今から断ることもできないだろうし、どうせお前も付いてくるつもりなんだろうからちゃんと準備しておけ。どうやら出島さんが迎えに来てくれるらしいからな」

 

「行っても良いの!?」

 

「どうせダメだと言っても付いてくるつもりだったんだろ、白々しい」

 

「さっすがタカ兄! 私のことならお見通しだね!」

 

「はぁ……」

 

 

 もう一度ため息を吐いて、俺はコトミへの説教を切り上げて夕食の準備に取り掛かることにした。




動機が不純……

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