桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミの考え方は分からないな


思考の違い

 宿題も早めに終わっているので、今日はトッキーと遊びに出かけている。とはいっても、お小遣いには限りがあるので、遠出することはないのだけども……

 

「ちょっとコンビニいかねぇか?」

 

「良いね」

 

 

 移動中にコンビニが視界に入ったので、私はトッキーに誘われた風を装ってコンビニに入る。

 

「うーん……何を買おうかな」

 

「そう言うのは心の中で言えよ」

 

「おっと、声に出てたのか」

 

 

 トッキーに指摘されるまで自分が喋っているなんて思っていなかったので、私は周りを見回して誰も聞いていなかったことに安堵する。

 

「先に会計してるからな」

 

「えっ、もう決まったの」

 

 

 トッキーが商品を持ってレジへ向かうのを見て、私は慌てて何を買おうか決めることに。

 

『お会計777円です』

 

 

 トッキーが会計時に少し嬉しそうにしているのが見えた。恐らくラッキー7ということで気分が良いのだろう。

 

「お願いします」

 

 

 トッキーから遅れること3分、私も買いたい物を纏めてレジへと持っていく。

 

「お会計999円です」

 

「はーい」

 

 

 千円を出して会計を済ませて、私はレシートを持ってトッキーに駆け寄る。

 

「トッキー見てみて!」

 

「あ?」

 

「カンストダメージ叩きだした気分」

 

「(今の若い子ってそうなの?)」

 

 

 私が喜んでいるのを見て、トッキーが不思議そうに首を傾げているが、私には何が原因で首を傾げているのか分からない。これがタカ兄なら分かるのかもしれないが……

 

「ところで、今月も厳しいとか言ってた気がするんだが、コンビニで千円も使ってよかったのか?」

 

「……ハッ! まさか、トッキーの罠だったとは……」

 

「何でそうなるんだよ!」

 

 

 今の私にとって千円ですら大金だということをすっかり忘れていた……さっきまでカンストダメージ叩きだした気分で楽しかったのに、一気に絶望に浸ることになるとは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古谷先輩から電話でヘルプ要請を貰い、私は先輩が一人暮らししているマンションにやって来た。

 

「悪い天草! 家のことをやってくれるだけで良いから」

 

「なんだかコトミみたいな感じになってますね……溜め込んだんですか?」

 

「提出期限を一ヶ月間違えてたんだよ……急いで仕上げないと単位もらえない」

 

「分かりました。今日は私が古谷先輩のお世話をしますから、先輩は頑張ってくださいね」

 

 

 事情を聞き、私は古谷先輩の部屋の掃除から始め、洗濯、ゴミ出しと先輩がやろうとしていたであろう家事を片付けていく。

 

「次はご飯か……」

 

「冷蔵庫の物、好きに使って良いから」

 

 

 先輩から許可をもらい、私は冷蔵庫の中身を見て何が作れるか考える。

 

「(これがタカトシなら、すぐに何品も思いつくんだろうが、生憎私は主夫ではなく普通の女子高生だし……)」

 

 

 レポートと格闘しているから、あまり手の込んだものより食べやすいものの方が良いだろうということで、私はカレーを作ることにした。

 

「(こんなものか……)」

 

 

 我が家ならスパイスを追加で入れることもできたのだが、先輩の家にはそのようなものは無かったので市販のルーのみの味付けだが、これはこれで悪くない。

 

「先輩、ご飯できましたよ」

 

「すまんねぇ……本来なら私がおもてなししなきゃいけない立場なのに」

 

「レポートが大変なのですよね? 困った時はお互い様です」

 

 

 作業を一旦取りやめて、先輩はテーブルを空けてくれた。私はそこに二人分のカレーを置き、二人きりの食事にすることにした。

 

「おっ、カレーか」

 

「材料もありましたし、手軽に食べられた方が良いかなと思いまして」

 

「よし、早速食おう!」

 

 

 この発言がコトミの物で、私がタカトシだった場合怒られるだろうなと思いながら、私は手を合わせてカレーをいただく。

 

「あちゃー零しちゃった……」

 

「カレーと白い服は相性最悪ですね」

 

「辛いものともねー」

 

「?」

 

 

 辛いものと白い服の相性が最悪とは、いったいどういうことか……私は先輩に真意を尋ねるような視線を向ける。

 

「汗で服、透けてるよ」

 

「ぐはーっ!?」

 

「風呂貸してやるから、今日は泊まっていったら?」

 

「お言葉に甘えさせてもらいます……」

 

「着替えはテキトーに出しておくから」

 

 

 先輩にお風呂を借りて、私は汗だくの身体を洗い流す。部屋にいるのが畑だったら覗きの心配もしただろうが、先輩はそういうことはしないので安心だ。

 

「(というか、先輩はメカオンチだから、隠し撮りなんて出来ないか)」

 

 

 辛うじてPCは使えるようだが、さっきからレポートも手書きなのを見ると、ワードなどは使えないようだ。そんな人が、写真をPCに取り込んでネットで拡散するなんてできるはずもない。

 

「お風呂出ました」

 

「貸した服、ちょっと大きいかい?」

 

「いえ、ゆったりサイズの方が落ち着けて良いです」

 

「なら、パンツもゆったりの方が……」

 

「ノーパンで良いです」

 

「何だか七条みたいだな――っと、最近は穿いてるのか、アイツも」

 

「えぇ。以前タカトシにこっ酷く怒られましたから」

 

「前も聞いたかもしれんが、お前ら本当に津田君の先輩なのか?」

 

「アイツの方が後に入学したんですから、私たちの方が先輩でしょう……言い切れる自信がないですが」

 

 

 間違いなく私たちが先輩で、年上のはずなのに、タカトシ相手だと何故か言い切れないんだよな……




そこは言い切れよ……

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