桜才学園での生活   作:猫林13世

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海外の人は憧れるんでしょうか


体験したかったこと

 私たちが着付けをしている間に、タカ兄が女子大生にナンパされていたと会長とスズ先輩から聞かされ、私は我が兄の人気っぷりに感心する。見た目だけならタカ兄に並ぶ男はいるかもしれないが、タカ兄が良いのは見た目だけじゃないからなぁ……

 

「(家事万能で成績優秀、運動神経抜群で類まれなる文才、周りを締めることができるカリスマ性、さらに異性相手に気遣いを自然にできる。欠点らしい欠点は無いけども、異性に消極的過ぎるのが欠点かな)」

 

 

 これだけモテているのだから、異性の一人や二人食べていても不思議ではないのだが、タカ兄はそんなことをするような人間ではない。女性から複数の内の一人でも良いと言われても、きっと受け容れない。

 

「(何となくで付き合うとかができない人だしね……恐らく、タカ兄が異性と付き合う時は、その人と一生一緒にいたいと思った時だけだろうし……だから、会長やアリア先輩、お義姉ちゃんやサクラ先輩たちからの好意を受け容れつつも答えを出していないんだろうな)」

 

 

 優柔不断ともまた違うし、タカ兄に選ばれなかったとしても誰一人として文句は言わないだろう。タカ兄が真剣に考えて選んだ相手なら、素直に祝福できると考えているのかもしれない。

 

「ねぇねぇタカトシ、タカトシはちょんまげとかしないの?」

 

「さすがにそこまでする必要は無いだろ。というかパリィ、ちゃんと前むいて歩かないと危ないぞ」

 

「ヘイキヘイキ、子供じゃないんだか――」

 

「危ない!」

 

 

 一応整備してあるとはいえ普段歩いているアスファルトの道と土の道は根本的に違う。しかも履物も靴ではなく草履なので、パリィ先輩は足を取られてこけそうになったが、タカ兄が咄嗟に腕を掴んで抱き寄せたお陰で、パリィ先輩は転ぶこと無く済んだ。

 

「だから危ないと言っただろ」

 

「ゴメンナサイ……そして、ありがとう」

 

「どういたしまして。怪我してないならそろそろ自分の足で立ってくれるか?」

 

「OH! 私、タカトシに抱きしめられてる恰好みたいね」

 

「そういうのは声に出さなくていいから」

 

 

 パリィ先輩が自分の足で立ったタイミングで、シノ会長とアリア先輩が詰め寄る。その間に私はタカ兄に江戸文化の説明をしてもらうことに。隣ではスズ先輩も一緒に説明してくれている。

 

「江戸時代のお鮨は屋台だったのよ」

 

「へー」

 

「こっちはお風呂か」

 

「江戸時代のお風呂は混浴だったのよ」

 

「へー」

 

「……お前、ちゃんと聞いてるのか?」

 

「聞いてるって! というか、こうして説明を聞きながら見てると、江戸時代の生活が目に――はっ!」

 

 

 私が急に大声を出したので、スズ先輩が驚いた表情をした。

 

「ど、どうしたの?」

 

「今、前世の記憶が目に浮かんだような」

 

「夢だろ。というか、くだらないことを考えてる暇があるなら、ここで体験したことをレポートにして提出してもらおうか? 一応課外活動扱いなんだから、それぐらいは良いよな?」

 

「ゴメンナサイ、レポートは苦手です……」

 

 

 それ以外も苦手なのだが、タカ兄が言ったら本当にレポートを書かされかねないので、私は素直に頭を下げて何とか許してもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故シノやアリアに責められたのかは分からなかったが、ワタシは江戸時代の食事を楽しんだ。

 

「美味しかったわね」

 

「思わず顔がとろけちゃったな」

 

「私なんてとろけすぎてあh――」

 

「ん?」

 

「なんでもないでーす」

 

 

 恐らくコトミはアヘ顔って言いたかったんだろうけども、タカトシに睨まれて大人しくなった。まだ付き合いは長くないけども、この中で一番力があるのはタカトシだと私でも分かる。

 

「さて、そろそろ着替えてホテルに戻るとするか」

 

「では、俺はこっちですので」

 

 

 更衣室前でタカトシと別れ、私たちはレンタル衣装から私服に着替え――ようとして、着物が脱げないことに気付いた。

 

「ぬ、脱げない……」

 

「帯をきつく締めすぎたようだな」

 

「早く脱がして~」

 

「何だか卑猥に聞こえますね~」

 

「お前は黙ってろ!」

 

「痛っ! でもこれが気持ちいい」

 

 

 スズに脛を蹴られたコトミが恍惚の笑みを浮かべている。どうやらコトミはマゾの気があるようだ。

 

「少し強めに引っ張るぞ」

 

「任せる」

 

「とりゃー!」

 

 

 シノが私の帯を強めに引っ張ると、私はその場で回転してしまった。これが所謂「帯回し」というやつなのだろう。

 

「目が回った……」

 

 

 体験してみたかったけど、実際にやると結構目が回るんだなぁ……

 

「パリィ! 見えちゃってる! 前隠して!」

 

「へ?」

 

 

 スズに言われたので、私は慌てて自分の目に手を被せて目線を入れる。

 

「そっちじゃねぇよ! というか、分かっててやってるだろ!」

 

「スズ先輩、女子更衣室なんですから、そんなに慌てる必要は無いですよね? もしかして、パリィ先輩のスタイルに嫉妬するから隠させようとしてるんですか~?」

 

「そんなんじゃないわよ! というか、あんまりおかしなこと言うと、タカトシに報告してお小遣いなしにしてもらうわよ?」

 

「それだけは平にご容赦を!」

 

 

 こんな風に帯回しも楽しめたので、私は大満足だ。企画してくれたシノたちにちゃんとお礼を言っておこう。




コトミは余計なことしか言わない

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