桜才学園での生活   作:猫林13世

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海外の人には物珍しいんだろうか


柔道見学

 外はあいにくの天気だが、とりあえず濡れずに学校に来ることができたので、私は更衣室に寄らずに生徒会室にやって来た。すると既に私以外全員揃っており、私は一つ咳ばらいをしてから挨拶をする。

 

「おはよう、皆」

 

「シノちゃん、おはよ~」

 

「「おはようございます」」

 

「おや? 今日は横島先生も来るように言っておいたんだが……」

 

 

 私が最後だとばかり思っていたが、そういえば横島先生も招集していたんだった……普段いなくても問題ないからすっかり忘れていた。

 

「ういーす」

 

 

 私が席に腰を下ろしたタイミングで、やる気のない挨拶をしながら横島先生が生徒会室に入ってきた。

 

「先生、もう少しちゃんとした挨拶を――」

 

「さぶい……雨でぬれちゃったよ」

 

 

 先生は普段車移動のはずだから、通勤の途中で濡れたとは考え難い。そうなると駐車場から昇降口までの間であそこまで濡れたということか……まぁ、確かにこの雨なら濡れたとしても不思議ではない。

 

「先生、タオルをどうぞ」

 

「温かいお茶を淹れましたので、少しゆっくりしてください」

 

 

 先生に席を進めながら我々はタオルやらお茶やらを用意して横島先生をもてなす。この様なことをしてる場合ではないのだが、今日の話し合いには横島先生も必要なので、とりあえず落ち着いてもらわなければならないのだ。

 

「ありがとう、皆」

 

「このくらいは当然ですよ」

 

「いや、温まるよ――」

 

「少し大げさでは?」

 

「――心が」

 

「「「あぁ……」」」

 

 

 ここ最近はタカトシの目が厳しく校内で男子生徒を引っかけることもできず、それでいて外でも出会いがないようで心が寂しかったようで、私たちの優しさで心が温まったようだ。

 

「ふぅ……それで、何でこんな時間に生徒会室に呼ばれたんだ?」

 

「何も聞いてないんですか?」

 

「あぁ。昨日天草に、この時間に生徒会室に来てくれとしか言われていないからな」

 

「何で話さなかったんですか?」

 

「いや、横島先生に話したら外に情報が漏れる可能性があるから」

 

「そこまでみっともなくないぞ! 漏らすのは性的欲求くらいだ!」

 

「それもダメだろ」

 

 

 性欲駄々洩れな教師にタカトシがツッコミを入れ、それが切り替えの合図となり私たちは重要な会議を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局朝の会議だけでは話し合いが終わらなかったので、昼休みも集まることになったのだが、意外と早く終わってしまい、今はシノちゃんと遊んでいる。

 

「アリアは感情表現が豊かだよな」

 

「そんなこと無いと思うけど? シノちゃんだって十分表情豊かだよ」

 

「私はどうもお堅いと思われているらしいからな」

 

「タカトシ君が来てくれてから、私たちも変わったからね~」

 

 

 以前の私たちは平然と下ネタを言っていたし、二年生以上はそのことを知っているのでさほど緊張感無く付き合ってくれているのだけど、一年生はそのことを知らない子たちが多いのか、未だに緊張されてしまう。

 

「そういえば感情表現って美容マッサージになるらしいし、感情豊かになって一石二鳥になるかもね」

 

「よし、試しにやってみるか」

 

「任せて~」

 

 

 シノちゃんの合図に合わせて様々な感情表現をしていくが、これが意外と難しい。自分で表現する分には何も難しいものはないのだが、言われてからその表情を作るのに少し苦労してしまう。

 

「なかなか難しいね~」

 

「だがやはりアリアが笑っていると破壊力があるな……同性の私でも見惚れてしまいそうだった」

 

「ほんとー? タカトシ君はどう思う?」

 

 

 ここで何故タカトシ君に尋ねたのか、シノちゃんには邪推されていそうだけども、私は純粋にタカトシ君の感想が聞きたかっただけなのだ。

 

「アリアさんに限らず、シノさんだって笑っている顔はお綺麗だと思いますよ」

 

「ほんとー? ありがとう」

 

「ん? すみません、電話だ」

 

 

 もっと褒めてもらおうと更なる質問をしようとしたら、タカトシ君は携帯を取り出してクラスメイトからの頼み事を叶える為に出ていってしまった。

 

「残念ね」

 

「まぁ、私たちだけがタカトシを独占できるわけじゃないしな」

 

 

 シノちゃんと二人で残念がりながら、さっき褒められたことを思い出して二人でニヤニヤしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は留学生のパリィちゃんが部活の見学をしているので、私たちは何時も以上に気合いを入れて練習をしている。

 

「おりゃぁ!」

 

「くっ!」

 

 

 トッキーと組み合っているのだけども、ここ最近トッキーも実力を付けているので、なかなか簡単に組ませてもらえない。

 

「っ!」

 

「しまっ!?」

 

 

 タカトシ君も見に来ているので少し気を取られていると、その隙を突かれてトッキーに倒されてしまう。一本は避けたけども、このままでは抑え込みに入られてしまう。

 

「(逃げなきゃ)」

 

『ビリっ』

 

「あっ」

 

 

 何やら嫌な音が聞こえたし、トッキーの視線がお尻に向けられている。

 

「あーあ……破れちゃったか。予備に着替えてこなきゃ」

 

 

 とりあえず予備の道着に着替え、破れた箇所を繕ってもらおうとコトミちゃんに道着を渡したのだが、何故かタカトシ君が繕ってくれることになった。

 

「これが本場のアーマーブレイク」

 

「いや、そんな本場ないから……」

 

 

 破れた道着を見ながらパリィちゃんが目を輝かせているけども、いったい何がそんなに嬉しかったんだろう?




やっぱり何処か勘違いしてるパリィ……

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