桜才学園での生活   作:猫林13世

628 / 871
まず間違いないですし


美味しい日本食

 足湯カフェを満喫した私たちは、次に何処に行こうか考え、パリィに決めてもらう事にした。そして英語の復習にもなるので、私がパリィと会話している。

 

「パリィ、次は何処に行きたい?」

 

「そうだな……何か美味しい日本食を食べたいんだけど」

 

「日本食か……」

 

 

 頭の中に何軒か思い浮かんだけども、私が真っ先に思い浮かんだ美味しい料理は、タカトシの手料理だった。女子として複雑な思いを懐かなくもないけども、タカトシの料理はとにかく美味しいのだ。

 

「なんなら、スズとかシノの手料理でも良いんだけど」

 

「残念だけど、この中だと一番料理上手は私でも会長でもないのよ」

 

「えっ、じゃあアリア? でもアリアってお嬢様だって聞いてるけど」

 

「それも違う。私たちの中で一番の料理上手はタカトシなの」

 

「本当に?」

 

 

 パリィがタカトシに視線を向けると、タカトシは私に視線を向けてきた。タカトシは私たちの会話内容を理解しているが、自分で料理上手だと思っていないので私に任せたのだろう。

 

「間違いないわよ。もしかしたら、学園一と言っても過言ではないくらいの腕だもの」

 

「興味が出てきたな……おーい、タカトシ」

 

 

 パリィが直接タカトシに交渉しているので、私は二人の会話を少し離れたところで聞こうとしたのだが、会長に手招きされてしまった。

 

「なんです?」

 

「パリィはタカトシと何を話してるんだ?」

 

「美味しい日本食が食べたいということで、タカトシに作ってもらえないか交渉中です」

 

「確かにタカトシの料理は絶品だが、何故パリィがそのことを知ってるんだ?」

 

「実は――」

 

 

 私はさっきまでの会話内容を会長に話す。途中で複雑な表情を浮かべたのは、恐らくさっき私が思ったことと同じことを思ったからだろう。

 

「まぁ、タカトシに対抗しようとするだけ無駄だし、タカトシの作った料理より自分の方がおいしいと言い切れる自信も無いがな……」

 

「私もです……」

 

「おーい、スズー」

 

「どうしたの?」

 

 

 会長と二人で落ち込んでいると、嬉しそうな表情のパリィが駆け寄って来た。

 

「タカトシが料理作ってくれるって。これからタカトシの家に行くことになったんだけど、スズたちも来るでしょ?」

 

「当然よ。パリィにいろいろと教えたい事があるし」

 

「じゃあ、タカトシの家に出発ー!」

 

 

 思わぬ形でタカトシの料理を食べられることになったが、これが敵を増やす結果にならなければいいのだが……パリィは金髪美少女だし、今までいなかったカテゴリーだし、タカトシがクラっといかなければ――あり得ないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故かウチで食事の用意をしなければいけなくなったが、今日コトミは義姉さんの家でお泊りだと言っていたので、都合は良かった。ここにコトミがいたらまた面倒なことになるだろうし……

 

「パリィ、食べられない物は何かある?」

 

「うーん……生ものはちょっと……」

 

「分かった。それじゃあ生もの以外で何か作る」

 

 

 冷蔵庫の中身を見て何品かメニューを決め、俺は何時も通り調理を始める事にしたのだが、背後でずっとパリィが見ているのが気になる。そんなに珍しい光景なのだろうか?

 

「パリィ、何をしてるんだ?」

 

「男の人が料理しているのを見るの珍しくて……ウチではお母さんがしてるし」

 

「普通はそうだろうな。だがタカトシは主夫だから、これが普通の光景なんだ」

 

「だから主夫じゃないと言っているじゃないですか……」

 

 

 他の人から見ればそう見えるのかもしれないが、俺はあくまでも学生だ。主夫になった覚えなどないのだ。

 

「よく話ながら料理ができるね」

 

「慣れれば誰だってできると思うが……」

 

 

 何故か感心されてしまったが、これくらい義姉さんもできるし、もちろんシノさんたちもできるだろう。だから謙遜したつもりは無かったのだが、パリィは謙遜していると勘違いしているようだ。

 

「日本人は謙遜するって聞いていたけど、これがそうなんだー」

 

「パリィ、向こうで萩村たちが待ってるから行こう」

 

「もう少し見学したい」

 

「邪魔をしたらそれだけ食べられるのが遅くなるぞ?」

 

「それは困る……じゃあタカトシ、後で」

 

「あぁ」

 

 

 別に見られているくらいで作業速度は落ちないのだが、会長が気を利かせてパリィをリビングに連れていってくれた。期待されるようなものではないが、パリィの期待に応えられるよう急いで完成させてしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノたちと談笑していたら、向こうから良い匂いが漂ってきた。これは、ミソスープの匂いだ。

 

「お待たせしました」

 

「何時もすまないな。しかも今日はこんなしっかりとした食事を」

 

「時間的にも夕食時でしたし」

 

「おいしそー」

 

 

 シノとアリアがタカトシに頭を下げているが、やはり日本人は礼儀正しいんだなぁ……

 

「土下座ックスが流行ってるって聞いてたし」

 

「日本文化を勘違いしてるよね!?」

 

 

 スズが何故か驚いているが、私は気にせずタカトシの料理を一口運んで――

 

「ッ!?」

 

 

――衝撃を受けた。

 

「タカトシ、私のお嫁さんになって」

 

「ん?」

 

「何か聞き捨てならないことを言わなかった?」

 

「パリィちゃん、ちょっとあっちでお話ししましょう?」

 

「はぁ……」

 

 

 何故かシノたちには怒られ、タカトシには呆れられてしまったが、私は何か間違えたのだろうか……




盛大に間違っていると思うんだが……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。