桜才学園での生活   作:猫林13世

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お泊り初日の夜の話になってます


ボードゲーム

 コトミちゃんの勉強を津田と森さんと一緒に見ていたら、ちょっと催してきた。

 

「あの七条先輩、お手洗いは」

 

「そこを出て突き当たりよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 津田と森さんが居れば、とりあえずコトミちゃんは逃げ出せないだろうし、今の津田から逃げ出そうものなら……身内だけに手加減しなさそうね。

 

「えっと突き当たりだから……ここね」

 

 

 リビングから少し歩いたところにお手洗いを発見した。やはりお金持ちだけあって無駄に広い間取りね……

 

「さっさと済ませて戻り……え?」

 

 

 便座の蓋をあげ、ようを済まそうとしたら、便器に書かれた落書きを発見した。その文字というのは……

 

『肉』

 

 

 何故この文字がこの場所に書かれているのだろう……最近七条先輩が書いたとか、そんなところよね……

 

「戻ったら聞きましょう」

 

 

 とりあえず使う分には問題無いのでさっさと済ませてリビングへと戻った。

 

「あの、七条先輩、あの落書きって……」

 

「ああ、あれは私が子供の頃に書いたものなの。ゴメンなさいね」

 

「それ聞いて五倍ドン引きです」

 

「「?」」

 

 

 事情を知らない津田と森さんが同時に首を傾げたが、二人共心得ているのか詳しく聞いてくる事は無かった。

 

「さてと、そろそろ終わりにするか」

 

「ホント!」

 

「ああ、ただしこのテストで七十点以上取れたらな」

 

 

 上げて落とす、さすが真性ドSと謳われている津田ね……コトミちゃんの表情が絶望に染まってるわよ。

 

「これくらいなら出来るだろ」

 

「そうですね。今日教えた箇所の復習と応用が主になってますし」

 

「どれ? 確かにこれなら簡単よね」

 

「優秀な三人と私を一緒にしないでくださいよ~……」

 

「泣き言言ってる暇があったら、見直ししたら如何だ? 問題なければ今すぐにでも始めるんだが……」

 

「待って! 後十分はほしい」

 

「三分だ」

 

「うわ~ん!」

 

 

 宣言と共に時計に目をやった津田を見て、コトミちゃんは泣きながら今日の復習を始めた。

 

「津田さんって、もしかしてかなりサドい人なんですか?」

 

「最近ストレスで胃がやられてるからね。そのお返しじゃない?」

 

「なるほど……確かに体育祭の頃と比べるとやつれた感じがありますしね」

 

 

 森さんと話していたら、背後から人の気配を感じた。

 

「何してるんだ?」

 

「コトミちゃんの最終試験です」

 

「問題はどんなです?」

 

「これだそうです」

 

 

 探検を終えた会長と魚見さんが森さんが預かっていたテスト用紙を覗き込む。

 

「これなら満点楽勝だな!」

 

「十分もあれば終わりますね」

 

「どれどれ~? ホントだ~」

 

「確かに簡単ですね」

 

 

 そこに七条先輩と五十嵐先輩も加わり、問題を見て盛り上がった。

 

「優秀な人たちが憎い! 神は何故私に才能を与えてくれなかった!」

 

「後三十秒」

 

「うわ~ん!」

 

 

 厨二発言で現実逃避をしようとしたコトミちゃんに、津田の無慈悲なる宣告が下された。結局コトミちゃんは合格点に届かなく、この後一時間追加で勉強する事になったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 散々勉強して、今日はもう頭を使いたくない。パーティーは明日だし、今日はもう寝ようかなとも思ったけど、折角これだけの人が居るんだから、遊ばなきゃ損だ!

 

「てな訳で、ゲームしましょう!」

 

「いいな! お泊りの定番って感じがするぞ!」

 

「シノッチハシャギすぎですよ! でも面白そうですね」

 

「ゲームって何するの~?」

 

「そこはご心配なく! こんな事もあろうと色々と用意してます!」

 

 

 勉強道具そっちのけで詰め込んだボードゲームたちを鞄の中から取り出す。本当は一日中やるつもりだったのに、まさかタカ兄が私の勉強道具まで持ってきてたとは……

 

「よし! それじゃあ五十嵐と萩村と森さんも参加だ!」

 

「今夜は寝かせませんよ」

 

「わ、私もですか!?」

 

「私、もう眠いんですが……」

 

「スズ先輩はお子様なんですか?」

 

「よ~し! 朝までやってやろうじゃないか!」

 

 

 私の挑発にまんまと乗ってきたスズ先輩は、眠い目を擦りながら参戦を表明した。

 

「私は遠慮したいんですが……」

 

「これは桜才VS英稜なんですよ、森さん! 文化祭の異種格闘技の借りを返す時なのです」

 

「……全然趣旨が違うじゃないですか」

 

 

 英稜の二人は何だか燃えてるけど、それでこそ徹夜で遊ぶ醍醐味だと私は思う。

 

「どうせならタカ兄の部屋でやりません?」

 

「それがいいな! 津田だけ仲間外れはかわいそうだ」

 

「津田君の部屋……」

 

「カエデちゃんは何を考えてるのかな~?」

 

「何も考えていません!!」

 

 

 きっと大人な事を考えていたんだろうなと、私たちは勝手に思った。だって五十嵐さんの顔が真っ赤に茹で上がったんだからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼にコトミの勉強を見ていたせいで、自分の宿題がまったく進んでない。だから俺は一人部屋なのを良い事にさっさと宿題を終わらせる事にしたのだ。

 

「人が居たら灯りを点けっぱなしにするのは憚られるからな」

 

 

 男が一人しか居ないのだからしょうがないんだろうが、こんな大部屋に一人ってのも申し訳無い気分になってくる。

 

「コトミは迷惑かけてないだろうな……」

 

 

 生徒会メンバーに五十嵐さん、英稜のお二人と同部屋なのは良いが、アイツが失礼を働いた場合すぐに制裁出来ないのが不安だ……

 

「まぁ皆さんしっかりしてる人だし、コトミも普段の言動のままでは無いだろうしな」

 

 

 俺は自分にそう言い聞かせ宿題を進めていく。これなら徹夜するまでもなく終わるな。そう思っていたら扉をノックする音が聞こえた。

 

「はい?」

 

 

 まだ夜更けという時間では無いが、こんな時間に誰だいったい……

 

「フッフッフ」

 

「お邪魔しますね」

 

「今夜は寝かせないからね~」

 

「さぁタカ兄! 遊びの時間だ!」

 

「「「………」」」

 

 

 

 ノリノリの会長、魚見さん、七条先輩、コトミの後ろで、五十嵐さん、萩村、森さんが申し訳無さそうに手を合わせている。どうやら暴走を止められなかったらしい……

 

「俺宿題片付けてたんですけど……」

 

「そんなの何時でも出来るじゃん! 今は遊ぼうよ!」

 

「なら今すぐコトミは終わらせる事が出来るんだな?」

 

「……タカ兄なら何時でも出来るでしょ?」

 

 

 俺の反撃に窮したコトミは、舌の根も乾かないうちに前言を撤回した……

 

「十二時までだからな」

 

 

 それ以降は萩村や森さんが可哀想だから……

 

「「「「ヤッター!」」」」

 

「ハァ……」

 

 

 部屋に七人を招きいれ、ボードゲームで遊んだ。これはこれで楽しかったけども、頼むから人が使う予定のベッドに入らないでくれませんかね……




スズが挑発に乗りやすいのは何故なんだ……

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