桜才学園での生活   作:猫林13世

618 / 871
女性は特にでしょうけども


気になる数字

 来週は身体測定ということで、女子の間では様々な悲鳴が上がっている。例えば――

 

『来週までに絶対痩せてやるんだから!』

 

 

――とか、

 

『今年こそは大台に届いてますように!』

 

 

――などだ。ちなみに私も、できることなら背が伸びていて欲しいと願っている。

 

「スズちゃん、来週身体測定だね」

 

「そうだね」

 

「体重とウエスト、増えてたらどうしよう」

 

「そっちも心配よね」

 

 

 見た目には変わっていないかもしれないが、意外と増えていたりすることもある。ネネが心配しているのを他人事だと笑い飛ばせるほど、私は自分の体重やウエストを把握しているわけではないのだ。

 

「はぁ……増えてたらどうしよう」

 

「横島先生?」

 

 

 教師は身体測定なんて関係ないのに、何故か通りがかりの横島先生がため息を吐いた。

 

「血圧とか内臓脂肪とか……」

 

「(大人になるといろいろあるんだ……)」

 

 

 体重やウエストで頭を悩ませているのが可愛いと思えるような悩みを聞かされ、私は思わず頬を強張らせる。

 

「そんなに心配なら運動すれば良いんじゃないですか?」

 

「でも一人じゃ続けられるかどうか分からないだろ?」

 

 

 あっ、この流れは良くないな……そして翌朝。

 

「というわけで、横島先生の人間ドックに向けての運動に、我々生徒会役員も付き合うことになった」

 

「よろしく頼む!」

 

「会長! 私は生徒会役員ではありません!」

 

「コトミは生活習慣を見直す為に、タカトシが推薦したんだ」

 

「そのタカ兄は?」

 

「横島先生と我々の朝ごはんやお弁当を用意してくれている」

 

「くそっ! 優秀な兄が憎い」

 

 

 恐らくタカトシだけ走らないのはズルいとかなんとか言いたかったのだろうが、タカトシは運動しない代わりに食事管理をすることになっていると知り、コトミはその場に崩れ落ちる。

 

「コトミちゃんだって身体測定があるんだし、運動しておいた方がいいでしょ~?」

 

「別に太ってませんし。あっ、でも最近ブラがキツくなってきたような気もします」

 

「「くそぅ!」」

 

 

 思わず会長とユニゾンしてしまったが、何故コトミばかり成長しているのだろうか……

 

「コトミちゃんも? 私も最近キツくなってきたような気がするんだよね」

 

「今度一緒に買いに行きませんか?」

 

「いいよ~。じゃあシノちゃんたちも一緒に――あっ」

 

 

 何かを察したような表情を見せる七条先輩。恐らく私や会長はサイズが変わっていないから新しく買わなくてもいいということに気付いてしまったのだろう。

 

「なぁ、早いところ運動しようぜ? 何時までもだべってると後で津田に怒られそうだ」

 

「そうですね」

 

 

 意外なことに横島先生が流れを変えてくれたお陰で、とりあえず不穏な空気は何処かに流れていってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段ならまだ寝ている時間ということもあり、私は欠伸を噛み殺しながら走っている。

 

「コトミ、もう少しちゃんとできないのか?」

 

「まだ眠いんですよ……うわぁ!?」

 

 

 不真面目に走ってるところに会長から話しかけられ意識をそっちに向けた途端、私は小石に躓いてこけてしまう。

 

「大丈夫か?」

 

「なんとか……」

 

「気を付けた方が良いよ~」

 

「そうですね。前を走っているスズ先輩のズボンを下ろしてしまって、ロリの露出プレイをしてしまうかもしれませんし」

 

「ロリって言うな! というか、そんな派手に転ぶつもりなの?」

 

 

 スズ先輩は自分のズボンの紐をきつく縛りながらそう問いかけてくる。

 

「だって私はタカ兄のように運動神経が良いわけじゃないので、こけそうになったら身体を捻って空中で体勢を整えることなんてできませんから」

 

「……そんなことができるのか? というか、タカトシがこけるところなんて想像できないんだが」

 

「中学の時、私が走っててタカ兄が反対側を歩いていたんですが、ぶつかって私は吹っ飛び、タカ兄はそうやって体勢を整えて無傷でしたから」

 

「相変わらず普通の人間の範疇にいないヤツだな……」

 

 

 シノ会長以外も似たような表情を浮かべているので、三人とも同じようなことを思っているのだろう。

 

「というか、お前中学校でも廊下を走っていたのか」

 

「ギャルゲーごっこをしていただけですよ」

 

「あぁ、パンを咥えながら『遅刻遅刻!』ってやつか」

 

「はい。まさか実兄にぶつかるとは思ってませんでしたが」

 

 

 まぁタカ兄以外にぶつかっていたらもっと大事になっていただろうけども。

 

「何で私が一番真面目に走ってるんだよ!」

 

「横島先生の為の早朝ジョギングですよね?」

 

「それはそうなんだが……」

 

「先生の為に用意した青汁があるので、良かったらどうぞ」

 

 

 スズ先輩が横島先生に手渡した水筒からドロッとしたものがでてくる。あれは飲みたくないな……

 

「青汁じゃなくて○汁なら喜んで飲むんだが……」

 

「余裕ありそうですし、もう一杯いきましょうか」

 

「鬼畜っ!? だがロリっ子鬼畜プレイもなかなか……」

 

「だからロリって言うな!」

 

「はぁ……誰が収集付けるんですかね?」

 

「それは同感だが、お前が言うな」

 

 

 この面子では誰もこの場を収めることはできないだろうと思って呟いたのだが、会長にツッコまれてしまった。




相変わらず人間の範疇にいないタカトシ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。