桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシには必要ないな


嘘発見器

 生徒会メンバーの秘密を探ろうと掃除用具入れに隠れていたら、ロボ研の轟さんが飛び込んできた。

 

「生徒会のみんなー……あれ?」

 

 

 鍵は開いているが中には誰もいないので、轟さんは首を傾げる。

 

「せっかく新発明のこれで、生徒会メンバーを丸裸にしようと思ったのに」

 

「機械姦に成功したの!」

 

「畑先輩っ!?」

 

「あっ……」

 

 

 轟さんの言葉に思わず飛び出してしまったが、どうやら私が想像していたものとは別のものだった。

 

「嘘発見器?」

 

「はい。これをセットして質問をして、嘘を吐いていたらブザーが鳴る仕組みなんです」

 

「ほほぅ……面白そうですね」

 

「試してみます?」

 

「受けて立ちましょう」

 

 

 何となく挑発された気になったので、私は早速実験台になることにした。

 

「貴女はS?」

 

「いいえ」

 

 

 私の答えに、嘘発見器は反応しない。

 

「それではM?」

 

「いいえ」

 

 

 この答えでも嘘発見器は反応しない。

 

「洋服買う時はLサイズだから」

 

「独自解釈で性癖を隠してきた」

 

 

 何となく勝った気分だが、これでは本当にこの嘘発見器が本物かどうかが分からないではないか……

 

「ん? 生徒会室で何をしているんだ? というか、その機械はなんだ?」

 

「あっ、会長」

 

 

 ちょうど生徒会メンバーが戻ってきたので、この嘘発見器を使ってもらいたいが、素直に言って実験台になってくれるかどうか微妙ですね……

 

「健康器具です」

 

『ビー!』

 

 

 私の吐いた嘘に、機械が反応する。つまりこの機械は本物だということだ。

 

「何だこの音は!?」

 

「畑先輩、嘘吐いちゃダメですよ。これは私が開発した嘘発見器です」

 

「面白そうだな。タカトシ、試してみてくれ」

 

「何故俺が……」

 

 

 もっとも使ってみたい相手が会長に指名され、本人はまったく乗り気では無いが嘘発見器を装着する。

 

「貴方はA型?」

 

「いいえ」

 

「B型?」

 

「いいえ」

 

「初デートでCまで行っちゃう派か……津田君って積極的なんだね」

 

「何の話をしてるの? 血液型はOだから」

 

 

 轟さんの冗談を華麗にスルーして、津田副会長は作業に戻ってしまう。

 

「では次は七条先輩」

 

「よーし!」

 

 

 何故気合いを入れたのかは分からないが、七条さんが嘘発見器を装着する。とはいっても、七条さんは表情に出やすいので、機械が無くても嘘を吐いているかどうかは分かるのだが。

 

『ビー!』

 

「どうして分かるのー!」

 

「アリアは分かり易いからな!」

 

「それじゃあシノちゃんもやってみてよ」

 

「良いだろう」

 

 

 七条さんから会長に被験者が代わり、質問者も轟さんから私が引き継ぐ。

 

「会長は気になっている男子はいますか?」

 

「なっ!? そ、そんなのいるわけ無いだろ! 我が校は男女交際を禁止しているんだから!」

 

『ビー!』

 

 

 嘘なんか吐かなくても、会長が津田副会長のことを意識していることは全校生徒が知っているというのに……そうだ。

 

「その相手は津田副会長である」

 

「ち、違う!」

 

『………』

 

「あれ?」

 

 

 てっきり盛大にブザーが鳴ってくれると思ったのだが、嘘発見器はうんともすんとも言わない。これは会長の好きな相手は津田副会長ではないということか?

 

「あっ、電池切れだ」

 

「た、助かった……」

 

 

 せっかく慌てふためく会長を写真に収め、面白おかしく記事を書くつもりだったのに……まぁ、向こうで津田副会長が怖い顔をしているので、ここは大人しく退散しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネネの発明品で一通り遊んでいた会長たちだが、タカトシが無言の圧力を掛けたおかげで大人しく作業に集中してくれた。

 

「それにしても、轟は面白いものを発明するな」

 

「嘘発見器なんて、実際に使う機会があるとは思ってなかったよー」

 

「というか、何故畑が生徒会室にいたんだ?」

 

「そういえば……」

 

 

 あまりにも自然にいたのでツッコむのを忘れていたが、何故畑先輩がネネと一緒にいたのかしら……

 

「タカトシ、生徒会室に不審物とか無いかしら?」

 

「別に無さそうだけど? まぁ、あの人は掃除用具入れに隠れて皆さんの写真を撮ろうとしていた時に轟さんがやってきて思わず出てきてしまったんでしょう」

 

「ありそうね……」

 

 

 この間タカトシに今度屋上からロープをたらして生徒会室を覗いたら新聞部を活動停止処分にすると脅されたので、上から覗くのを止めてそのような手段にしたのだろう。

 

「それにしても、シノちゃんの気になってる人はタカトシ君じゃなかったんだね」

 

「ち、違うぞ! あっ、いや……」

 

「今更隠そうとしても無駄だって。私たちの気持ちはタカトシ君だって知ってるんだし」

 

「まぁ、あれだけあからさまなら」

 

 

 会長と七条先輩は少し恥ずかしそうにしているが、タカトシはまったくの素面だ。これだけ反応されないと会長じゃないけど面白くないと思ってしまうわね……

 

「さっきの話に戻るけど、タカトシはネネの質問の意味は分かってたの?」

 

「あまり分からなかったが、A、Bと聞かれれば普通血液型だと思うだろ」

 

「まぁ、普通はそうだな」

 

「でも轟さんは別の意味で質問してたみたいだね」

 

「そもそもタカトシがそこまでがっつくわけ無いだろうが」

 

 

 会長の意見に全面同意だが、私は別にタカトシが相手なら……って! 何を考えているんだ私は!




独自解釈が酷かった

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