桜才学園での生活   作:猫林13世

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腰は辛いよなぁ……


掃除の代償

 近所のドラッグストアにやってきたら、聞き覚えのある声がレジ近くから聞こえてきた。

 

「腰に効く湿布ってありますか?」

 

「ハイ」

 

 

 タカトシが腰を痛めたのかとも思ったが、アイツが自分で買いに来たわけもないし、コトミか?

 

「タカトシ」

 

「あぁ、シノさん」

 

「家族の人が腰を痛めたのか?」

 

「いや、義姉さんがちょっと痛めて、昨日からウチに泊ってるんで」

 

「えっ!?」

 

 

 どうやらカナが腰をやってしまったらしく、それでタカトシが薬局にやってきたようだ。

 

「私もお見舞いに行こう」

 

「義姉さんも喜ぶと思いますよ」

 

 

 タカトシが湿布を買って家に帰るのについていくことに。途中で何か盛り上がる話題でもあれば良かったのだが、生憎そのような話題はなかった。

 

「お邪魔します」

 

 

 玄関で一応挨拶をしてから部屋の中に入る。一直線に客間に向かうと、カナが横になって苦しそうに呻いていた。

 

「あっ、タカ君……シノっちもいらっしゃい」

 

「カナ、大丈夫か?」

 

「張り切って掃除してたら腰をやっちゃったぜ……」

 

 

 苦しそうに呻きながら事情を説明してくれるカナ。どうやら本当に痛めてしまったようで、演技ではないかと疑っていた道中の私をぶん殴りたい。

 

「土日で良かったよ……学校があったら行けないし」

 

「バイトは?」

 

「今日は休み。昨日はタカ君が代わってくれたから」

 

「むぅ……」

 

 

 義姉弟だから仕方がないが、ここ最近カナとタカトシの仲が良すぎるような気がする……ただでさえサクラという強敵がいるというのに、カナまで私の邪魔をしてきたら、ますます埋もれてしまうじゃないか。

 

「会長、ごめんなさい。ムラサメが会長の靴に粗相を。洗っておきますね」

 

「これじゃあ帰れないし、私も泊っていこう」

 

「ん?」

 

 

 靴は洗えば何とかなる程度だし、帰るまでには乾くだろうが、私はムラサメの所為にして津田家に泊まることにした。

 

「シノっち……後でアリアっちたちに怒られそうだね」

 

「カナに言われたくはない!」

 

「まぁいいか。じゃあタカ君、早速貼ってくれる?」

 

 

 そう言いながらカナは服を捲って腰を露わにする。そんなことを考えている場合ではないと分かっているのに、何となく魅力的で負けた気分だ。

 

「ビーチのオイル塗りか! 私がやるからタカトシは別のことでもやってろ!」

 

「はぁ……」

 

 

 私がキレた理由が分からなかったのか、タカトシは首を捻りながら客間から出ていく。

 

「シノっち。ビッチのオイル塗りって……腰を痛めてるので乗っかられるのはちょっと……」

 

「ユニークな聞き間違いをするな!」

 

 

 タカトシがいなくなったことで絶好調になったカナにツッコミを入れながら、私はゆっくりと湿布を貼るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急遽シノさんまで泊まることになったので、夕食は食材の都合がつく鍋にすることにした。

 

「タカ兄、何か手伝おうか?」

 

「だったら義姉さんの様子を見ておいてくれ。シノさんと二人きりだと、恐らく絶好調で腰を悪化させるかもしれない」

 

「私が加わってもあまり意味はないと思うけど」

 

「分かってるなら自重しろ。というか、お前にこっちを手伝ってもらったらえらい目を見ることは火を見るより明らかだからな」

 

「そこまで酷くないよ~。まぁ、お義姉ちゃんが無理をしてないか見てくるね」

 

 

 コトミをキッチンから追いやって、俺は具材の用意をしておく。あまり煮込む必要はないので、義姉さんがこちらに来れるようならこっちで、無理そうなら客間にガスコンロを持っていって仕上げればいい。

 

「タカ兄、お義姉ちゃんまだ無理っぽそう」

 

「分かった。それじゃあコトミは客間にこれとこれを持っていってくれ」

 

「了解!」

 

 

 何故か敬礼をしたコトミに苦笑いを浮かべる。また何かに影響されているのだろうが、家の中ならまだしも外でやってたら引かれるだろうな……

 

「(てか、高校生にもなって影響されやすいヤツ……)」

 

 

 犯罪行為に走らないだけマシだと思いながら、俺は具材を持って客間へ移動する。

 

「ゴメンね、タカ君。本当なら私が作るべきなのに」

 

「仕方ありませんよ。この前まで風邪をひいてて、それを挽回しようとして掃除を張りきったところ、腰をやってしまったんですから」

 

「なんとも情けない限りです……」

 

 

 別に義姉さんにそこまでしてもらわなくても掃除は行き届いてるし、風邪を引いたのも半分はウチのエアコンの故障が原因なので、義姉さんが気にする必要は無いんだがな……まぁ、義姉さんがやりたいと言ったのを無理に止める必要もないかと思ってやらせたのだが、こんなことになるなら止めとけばよかった。

 

「というか、私までご馳走になってすまないな」

 

「そう思うのなら、いきなり泊まるなんて言い出さないでくださいよ」

 

「悪い……」

 

「まぁムラサメが粗相したのが原因ですから、そこまで本気で怒ってるわけではないんですが」

 

 

 靴は既に乾いているが、コトミ一人に義姉さんを頼むのは少し不安だったからシノさんが居てくれて助かる部分もあるからな。

 そう夜の時点では思ったのだが――

 

「「寝違えちゃった」」

 

「何やってんだよ……」

 

 

――朝起きてきた二人は見事に首を寝違えていたのだった。




自宅でも苦労するタカトシ……

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